第11話 信頼 side颯翔
先輩の話を聞いて俺は驚いた。昔何かしらの事件が起きて部活停止を一時的に食らったのは知っていたが、そんな理由だったとは。
ただただ静かに聞くことしか出来ない程に…。
「先輩、俺は当事者じゃないし、そんなにすごい様な人じゃないです。それでももし、俺に憧れ自分を捨ててまで何かを成そうとするのなら許しません。」
「っ…」
そうだ。俺に憧れて…俺みたいにって言ったやつの末路は痛いほどに知っている。だから、先輩にはあいつと同じ思いをして欲しくない。
「先輩、俺を参考にするのはやめた方がいいです。それよりも、先輩にとって大切な卒業生の先輩方2人を見習った方がきっと身のためになります。」
「それはそうなのだが…ボクは…わた…しは。」
「先輩!今あなたの周りには誰がいますか?俺も、泡沫も、新入生達もいます。責任感にかられるのは分かりますが、貴方は俺らをまとめ上げ、指揮る立場なのですから、こんなところで弱音を言ってる暇は無い!」
「な、なら…私が辛い時誰を頼ればいんだい?」
そう言った先輩の目からは大粒の涙が落ちる。恐らく今まで我慢していたものが外れ、感情の爆発が起きている。だから、俺がすることは。
「なら、俺や泡沫を頼ってください!そのための1年経験した後輩という立場。いつだって力になります。もちろん泡沫は先輩Loveな人だから瞬間OKがはいりますが。」
先輩がキョトンとした顔をするが、すぐ様表情を崩し、笑い出す。
「そっか…そうだよね。うん、ありがとう佐城くん。ボク頑張るよ!本当に感謝している。」
「はい!先輩が元気になったようで何よりです。それでは俺はこの辺でお暇しようかと…。」
俺は帰りの支度をする。この状態の先輩なら問題無いだろう。
「あ、あぁ。夜遅いから気をつけて。」
「はい、大丈夫ですよ。俺がそれなりに力あるのは先輩がよく知ってるでしょ?」
先輩は笑顔で頷いた。俺は玄関のドアに手をかけ、外に出ようとする。
そして先輩の方を振り向いたとき…ふと頬に何か柔らかいものが触れた。すると直ぐに何かが離れていく。
いやもう何かと隠すの表現は良くないか。
だってほら、先輩の赤くなった顔をみたら分かる。
先輩は恥ずかしそうにしながらも手を振って俺を見送った。外に出てからもよく分からないこの熱は覚めなかった。
先輩のキスはあまりにも今の俺にはかなりの弱点であった。
自然と思い出すことに抗うため家まで全力で走った。顔が熱いし恥ずかしさが溢れ出る。
だけど…。俺は信号前で一旦立ち止まる。そして上を向きながら思う。
「これで良かったんですかね、青崎先輩、紅葉先輩…。」
俺は2人の先輩を思い浮かべながら夜空に手を伸ばす。
あぁ今日の雲一つ無き夜空には手を伸ばした先にある一等星の輝きが青白く、瞬くのだった。
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