第9話 忘れられない過去 side莉花
1年生の春、私はこの高校に入学した。部活に正直興味はなくて、自分のしたいことを優先しようと思っていた。
周りからは優秀だとか、かっこいいだとか言われてきたが別に私がそう言われたくてやってる訳じゃない。案の定部活の勧誘は激しかった。運動部はもちろん、文学系も。しかし、どこも私という人間ではなくただ、使えそうだし人数集めにもなるなど。結局は部のためではなく、自己満足のために利用したいだけなのだ。
見え見えの勧誘に私は断り続けた。もちろんストーカーする人も度々。疲れ果てた私は気づくと中で異様な光を放っている教室の前にいた。壁には…『天文部』。私は気になったが、どうせこの部活も同じだと思った。でも少し覗こうかと思ったけど手を伸ばすことは出来なかった。諦めてその場を去ろうとした時、大きくとドアが開いた。
「ゆっちゃん、ゆっちゃん!!早く行かないとおとめ座流星群見れないよ!!」
「はぁ…あんたは本当に落ち着きがないわね…。ん?」
中から元気に出てきたのは背の小さいツインテールの女の子と後ろからやれやれしながら出てきた背の高いポニーテールの女の子の2人。なんか…ある意味バランス取れてる。
「あ、えと…あのすいません。怪しい者ではないので!失礼します!!」
私はお辞儀をして急いでその場を去ろうとしたが…。
「ちょっと待ったぁぁぁ!逃がさないよ!」
ツインテの子が私の前へ立ちはだかる。
「あ、あの私は…。」
「何も無いならこんなところ来ないと思うよ!偶然にしろ、あなたはここに少しでも長くいなかった?」
な、なんで分かるの。この子なかなかには人の心読むのが上手い。
「ふふ。ビンゴ!ねね、これから私とゆっちゃんが学校の屋上でおとめ座流星群を見るんだけど一緒にどう?」
「ちょっ、少しは彼女の事情をくめ。それにお互い初対面なんだから。」
すごいな…。私を見ても変わらないテンションで話してる。普通ならもっとグイグイきて、勧誘しに来るのにこの人たちは控えめでただただ一緒に星を見ようって誘ってるだけ。
「はい!私見たいです!」
勇気をだして言ってみた。すると2人の反応は笑顔で頷いた。
「よーし!屋上までかけっこだー!」
「もぉ…ま、仕方ないわね!」
「は、はい!」
これが私の天文部との出会いだ。
それから私たちは流星群を見て、色々なお話をし天文部に入ることになった。
それからは忙しい時もあれば暇な時もありと楽しくやっていた。
だけど…事件は起こった。
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そう、寒い寒い冬の時期にだ。私たち天文部は冬の大三角形を見るためにスキーをしに来ていた。全く関係ないだろうけど楽しみながら星を見るのはいいことでしょとのこと。最初は普通にスキーを楽しみ、冬の大三角形を堪能していた。だが、2日目の夜に男子達が襲ってきたのだ。私たちは最初男子たちが来てることに気づかず、されるがままに押し倒しされた。怖くて怖くて。でも口元が抑えられて。次々に服を脱がされてあられもない姿になった。恐怖で私たちは体に力が入らず、もうダメだと思い心を捨てかけた。
その時だった。
「失礼します。って言ってもこの時間帯はみんな食事だし誰もいないよなー。ん?」
幸いなことに宿のスタッフさんが部屋のチェックをしに来たらしい。
私は口元を押さえつけていた男子の手を噛み、急いで訴える。
「助けて!!」
必死になっていたせいかこの言葉しか出なかった。すると、彼は動じずそれどころかスマホを取り出しカメラを作動したのかシャッター音が部屋に響いた。
「よし、なんかよく分からないけど保存しとこー。」
こ、この男。最低…。結局こいつらと同じ男ってわけね…。どうして私たちがこんな…こんなことに…いやだ…やだやだやだやだ。助けて…誰か…。
「チッ邪魔が入ったがいい。こんなやつ放っておいて続きを始めんぞ!」
私の上にいる男が言い放ち、他の奴らも行動し始める。最悪…なんで…。
「あのさ、何無視してんの?」
「ぁ?何言って…ぐはぁ!?」
ッ!!。男の髪を掴んで立ち上がったところに一瞬で体を入れ背負い投げした!?。
「てめーー!」
他の男たちも彼に襲いかかるが、全て受け流しノックアウト。すごい。
「大丈夫ですか?お客様方。」
そう言い私たちに掛け布団をかけてくれた。そして彼は大女将さんを連れてきて状況説明し、私たちを安全な場所まで案内してくれた。
その時私は彼の方をもう一度見た。その横顔はとてもかっこよくて輝いていた。
その後男子はみんな警察にお世話になったらしい。私たちは残りの1日の予定をキャンセルし、帰宅した。
去り際に彼をもう一度見たいと思ったけどいなかった。だけど、女将さんに呼ばれているのは分かった。その時に名前を知った。
彼の名前は…『はやと』。
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