第8話 私は伝えたい side莉花

佐城くんを思わず引き止めてしまった。私は何故か分からないが気づいたら体が動いていた。自分でも驚く程に体が震えている。不安が押し寄せてきているのだ。誰でもいい、誰かに今の自分の気持ちを伝えたい。

多分こう思えるようになったのも、彼のおかげなのかもしれない。

「佐城くん。直球に聞くけど大丈夫かい?」

「は、はい。」

そんなに身構える必要な無いと思うけどな…。深呼吸をして私は心を落ち着かせる。

「私はちゃんとやれているだろうか?」

「え…」

あぁ困ってる。急にこんなこと言われても困るよね。分かる。

「私は先輩として、部長としてこの部活を指揮れているだろうかなと度々思うんだ。もしかしたら。ウザがられてるんじゃないかって。」

難しいことだよね。だけどそれぐらいに不安が押し寄せて来る。

そう、ただ私は。

『怖いんだ。』

「ッ!!」

ぁ、驚いてる。こんな先輩だと思わなかったんだろうね。なんせこの1年1度も見せたこと無かったし、弱音なんて吐いたことも無い。

すまない…こんな私で。ごめんなさ…。

「先輩は今楽しいですか?」

たの…しい?

ッ!そっか…。私は今…。

「きっと今先輩は後輩が増えて、たった1人しか同年代がいないから後輩に迷惑をかけられず、頼れないと思って、責任感に駆られてるんです。違いますか?」

あ…そうなのか。私は責任を…。

「確かにそうかもね。キミの言うとうり責任感に圧迫されていたのかもしれない。だからとて、この不安が消えるかと言うとそうでも無いみたいなんだ…。」

私は自分の手を見て答えた。震えは収まるどころか酷くなる。怖いけど、その真実を伝えるのも怖い。キミの理想の私はなんなのか分からないけど、幻滅されて離れられると寂しい。私にとってキミは特別なんだ。キミの代わりは他にいない。だから…。

「先輩、あなたをそうさせたのは何故なんですか?それをまず教えて欲しいです。」

「ぇ?」

私をそうさせたきっかけ?…。それは…でもそれを伝えてキミは私から離れたりするのではないか?怖い…怖いよ…。

「先輩、大丈夫です。」

「っ!?」

佐城くんは震える私の手を取り、真っ直ぐ私の目を見て言う。

「何があっても俺はあなたの味方です。助けられたあの時から俺はあんたを信じている。恩は必ず返すつもりだ。だから、話して欲しいです。無理なら大丈夫ですが…」

そうね…。覚悟を決めないと。私は、私は!

「ありがとう佐城くん。話すよ、私の過去を。そしてキミに出逢えたあの日までのことを…。だから…その代わり。」

「その代わり?」

私は再び深呼吸をする。今度は落ち着かせるためではなく、気持ちを切替えるためだ。

「例え幻滅したとしても、私から離れないでほしい。」

「ッ!!。わかりました。」

…。ありがとう佐城くん。

私は………。

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