第一章 旅立ち
第5話 武器召喚士サモン
表の世界。
魔王が現れ、世界を征服しようとした。
しかし、勇者ホープ一行により、魔王は討伐され世界中は喜び、盛大に祝った。
こうして、世界は再び平和が訪れた。
裏の世界。
魔界。
魔王の敗北知らされる魔界ニュースが臨時で放送され、魔界に住む全ての人は、悲しみに覆われていたかというと、それは違った。
魔王の敗北。
それは、新たな魔王を作り出す事の始まり。
人間に敗れた魔王の事など、誰も興味が無くなっていた。
魔界の住人は、すぐに準備を始める、新たな魔王になる為の戦い備えて。
ーー。
魔界の第一層、魔界で最も力の無いとされる種族が集まるエリアで、
一人、森の奥深くにある泉の前で座り込み、鉛筆を立て、距離を測った後、手に持っているスケッチブックに鉛筆を滑らせている男がいた。
茶色いテンガロンハットを被り、黙々と絵を描いているのは、
【サモン】という名の男だ。
サモンは持っていたスケッチブックを仕舞い、バックに詰め込むと立ち上がった。
「さて、帰るか」
区切りの良い所で絵を描くのを辞め、村に帰るサモン。
彼は、絵を描くのが趣味である。
主に風景画をだ。
来た道を戻り歩いて行く。
途中にある、草木をかき分け進んでいくと、大通りに出た。
辺りは平原となっている。
整備された雑草が綺麗に並び、風に揺られながら気持ちよさそうに揺れていた。
サモンは帽子が風に飛ばされぬよう頭を押さえ再び歩き出そうとした時、なにやら騒がしい声が聞こえてきた。
「だ、誰か。助けてくださーい」
情けない声を上げながら、何かから逃げるように走っている、白のローブを着ている、男性とも女性とも言える中性的な顔をしたエルフが走っていた。
エルフはサモンを見つけると、サモンの背中に隠れるようにし、身を屈めている。
そのエルフを追うように、一体のスライムがサモンの前に現れた。
「おい、そこのお前。痛い目会いたくなかったらそこのエルフを大人しくよこせ」
サモンはスライムのくせに、生意気な奴だなと思いながら、エルフの方を見た。
「お前、なにやったの?」
「ななな、なにもやってないですよ。道でぶつかったら、いきなり怒鳴ってきて、二万ゴールド寄越せって…」
「てめーのおかげで俺は、腕を骨折したんだ慰謝料払って貰うぜ」
「骨折って、あなた、腕なんか生えてないじゃないですか!!」
目の前のスライムはうねうねと動いているだけで、腕など生えてはいない。骨折というのは嘘であるのは間違いないのだが、それよりもサモンはなぜスライムがこんなにも、強気で入られるのか不思議であった。
魔界でのスライムの地位は低い。
知名度こそあれど、強さで言えば、圧倒的に下位の存在だ。
まともに戦えば後ろに隠れているエルフの方が格上のはず。
エルフは魔法に特価している種族。一つの魔法を極めそれを武器にして戦うのが基本となっている。
「お前戦えば、あんな雑魚倒せるんじゃ…」
「ボ、ボクが戦う?無理、無理ですよ!!殺されちゃう!!」
随分と弱気なエルフだな…
「おい、お前。今俺の事雑魚って言ったな?」
「言ったけど」
「今なら謝れば許してやる。今の言葉を訂正しろ」
「いや、スライムじゃん…」
スライムからビキィっと何かがキレる音がする。
「てめーーー!!もう許さん!!そっちのエルフの前にまずはお前からぶっ殺してやる」
「えっ。なんで怒ってんの?」
「うるせぇ!!死んで後悔しやがれ」
スライムは『ハァ!!』と声を上げると、魔力がスライムを覆う。
「俺をそこら辺のスライム達とは違うぜ」
魔力で全身を覆い、よく見るスライムよりは遙かに強い様に見える。
「スライムの癖に随分と高い魔力だな…確かに他のスライムとは違うな。本来スライムなんて、魔力の使い方が下手だし」
スライムを観察しているサモンを後ろから見ているエルフは、心配そうにサモンに話し掛けてきた。
「あ、あの、大丈夫ですか?あのスライム、中々の魔力ですよ…」
「んー。まあそうだな」
「もしかして、あれが【魔力解放】では」
「いや、違うだろ」
「てめーら、さっきからボソボソと喋りやがって」
「ああ、ごめん。お前の魔力が中々なもんだからついね」
「あん?そうだろそうだろ」
スライムは魔力を褒められた事により、少しだけ機嫌がよくなった。
「人間に魔王が負けて、魔界では、次の魔王になる為の戦いが始まっているだろ。俺はな、次の魔王になる為に修行したんだ。俺達スライム一族は常に弱者の扱いを受け、人間界に行けても、そこら辺に野放しにされるだけだ。一族の奴らもそれが当たり前だと受け入れて、なにもしない。中には人間と仲良くなる奴まで現れる。情けないぜ…俺は一族に失望した。だから、俺は他の奴らとは違い、魔王になり、俺達スライム一族が弱者でない事を証明するんだ」
スライムの熱意を受け、サモンは関心する。
「立派だな。じゃあ頑張ってくれ、俺達に構ってる暇ないだろ」
「そうは行かない。お前達を半殺しにして、俺に従わせる。悪いなこれも魔王になる為だ。死んでくれ」
「半殺しなのか、殺すのかハッキリしろよ」
「うるせぇ!!」
スライムは、ダッと、勢い良く飛び跳ね、サモンに向かって来た。
「魔力で覆っている俺の体当たりを喰らえば、致命傷だ。死ねぇ!!」
スライムの素早い、体当たりをサモンはあっさり、避ける。
「なに!?バカな!!俺の体当たりを避けただと!!」
「うん。他のスライムに比べたら早いね」
「そうだ。俺は一族に失望し、修行をした。そして、俺は超えたんだスライムの壁って奴を。震えたぜ。壁を越えて、この魔力を手に入れた瞬間は」
スライムは全身をギュウっと、地面に接地させ、バネの様にサモンに飛びかかった。
「だから、お前は俺の一撃を喰らい、死ぬべきなんだぁ!!」
再び突っ込んでくるスライムに、サモンは自身が持っている、バッグからスケッチブックと鉛筆を取り出し、サラサラと何かを描き始める。
腕を止め、描き終えたサモンは、スケッチブックにそっと手を置くとスケッチブックは光だし、中からハンドガンが取り出される。
「え、なにが…?」
突如サモンの前にハンドガンは現れた事にエルフは驚いている。
「ああ、俺さ。召喚一族なんだ。俺はその中でも武器召喚士だ。スケッチブックに描いた武器に魔力を込め、実物として召喚する事が出来る」
サモンはチャキッと銃を構え、向かってくるスライムに向かって撃ちはじめた。
バンッバンッ。
サモンの放った銃により、スライムの身体を貫通し、スライムはその場でジタバタとし始める。
そんなスライムにサモンは近づき、声を掛けた。
「いくら、スライムの壁を越えたと言ってもしょせんはスライムだよ。まあ、スライムの中では強いと思うし、これからも頑張ってくれよ。じゃあな」
サモンは振り返り、自身の住む村へと歩き出した。
エルフはその後を追うように付いていく。
コソコソとではなく堂々と満面な笑みを浮かべながら付いてくるエルフを鬱陶しく思ったサモンは、エルフに話し掛けた。
「スライムから救ったけど、まだ何か?」
「はい。まずはありがとうございました」
「どういたしまして。それじゃあな。お前ここら辺出身じゃないだろ?第一層だし、そこまで危険な奴はいないと思うけど気をつけて帰れよ」
「ちょ、ちょっと待ってください。
あ、あの…その…」
恥ずかしそうにもじもじとするエルフを見て軽くため息を吐く。
「なんだ、はっきりしろよ」
「じ、実は…お腹が空いていて…」
空腹な自分に食料を恵んで欲しい。
そういう事かと理解したサモンは、自分の村にエルフを連れて行く事にした。
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