第7話 催眠解除!
「あなたはだんだん眠くな〜る」
「古典的すぎてツッコむ余地もないわ」
糸で吊るした五円玉を揺らしながら、友人は如何にこのシステムが洗練されているかを説きはじめた。
「この五円というのは誰もが価値を知っていながら、手に入れやすくて穴が空いているという、素晴らしく都合の良い物なんだ」
なんだか早口になってきたな。そんなに語りたかったのか。
「そしてお金というのは人から人へと渡り、色んな念を集めるんだ。この五円は廃神社の賽銭箱から失敬してきた由緒ある代物で、糸も注連縄からバラして作った最高の物だ」
雲行きが怪しくなってきたぞ。
「邪念の籠もった五円は不吉な気配をバラ撒き、その存在自体を警戒という形で注目させることができる。本能が五円を見させるんだ。その先に、何があるか分かるかな?」
五円玉の先、空間を超越した向こうから何かが覗き返してくるような気がする。
「人に忘れられた神と、注目して貰うための振り子の相性は最高だぞ!目が引き付けられ、もはや催眠に掛かるか死ぬかしか無いんだ!」
気付けば、瞬きも忘れて五円玉を注視している自分が居た。
「よし、ではいくぞ!あなたはだんだん眠く……」
ここで映像は途切れている。
「で、気付いたら友人が死んでいたと」
「はい。警察が言うには、雑巾でも絞ったような状態だったと」
「恐らくその友人は最初からコントロールなんて出来てなかったんだろうね。よくある話だ」
「あの、この五円玉を処分して貰えませんか?」
そう言って袋に入れられた五円玉を差し出してくるが、受け取る訳にはいかない。
「ごめんね、対象外なんだ」
「何故ですか?」
「貨幣損傷等取締法で硬貨の処分はできないから、銀行にでも預けると良い」
海に水を流すように、硬貨の海に流れた五円玉は、日本国民の意志によって希釈されることだろう。
そして、催眠術というテクニックに、何故呪いというオカルトを混ぜようだなんて思ってしまったのか。もしかすると、最初から催眠術ができるなんて信じてなかった故の行動かも知れない。
呪いは信じてたというのにね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます