第3話 ヤバい箱
呪物の調査中に複数の異常が発生したことで、緊急招集がかけられた。
対象は15センチ四方ほどの寄木細工の箱。経験上、木箱の類は中身も呪いもおぞましい物が多く、危険性が高い物がほとんどのため、緊張が走る。
「磁場の歪みと可聴域外の音を検知」
「推定髪の毛で作られた腕で檻を開けようとしています!」
「室内に異常無し、物理干渉を抑えれば良さそうだ」
防護服に身を包み、二液性硬化樹脂と圧縮空気のタンクを背負った職員が室内に突入し、ファラデーケージごと呪物を固める。
がり、がり、がり。引っ掻く音が響くが、封じ込めには成功したようだ。
焼却時、脱走の恐れがある呪物を燃やす場合、強固な燃焼室と、二次燃焼、三次燃焼が可能な排気設備を備えた特別焼却炉を用いる。
燃焼時にはプロパンガスに加え、酸素アセチレンバーナーを用いて、ピンポイントで燃焼を加速させる。
しかし、それだけしても往生際が悪い呪物は多い。
3000度の炎を当てているにも関わらず、焼却炉の扉をドスン、ドスンと叩く音が鳴る。排気管に共鳴する、地獄の底から響いて来るような叫び声。
その後、6時間掛けて焼却を続け、無事に呪物を灰にすることが出来た。しかし、念には念を入れて、清めの塩と混ぜられた灰は鉄の箱に入れた後、溶接で密封して寺に納められる。
呪いは目で見る事が出来ない。だが、職員の情報を遮断し、職員から呪物への認識を一部遮断する事で不要な事故を防ぐ事が出来る。
直接関わる職員は、偏光と可視外光カットのメガネとノイズキャンセルイヤホン、マスク、手袋、ヘアキャップが必須装備である。
その他の職員は、カメラの映像越しにしか呪物を確認することが許されていない。
ここまでしてようやく平均的な呪物を扱える。
あとは、経験から導き出される対応と、各種オカルトによって身を護る事しか出来ないのである。
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