第7話 金属生成と隠し場所
土魔法でガレキを作り始めて数週間。
「また増えたな……」
「そうですね……」
今日は、ボリスパパンとセレイナママンが、二人揃って私の様子を見に来ていた。
毎日、どちらか一人は顔を出しに来るのだけど、二人揃ってというのは月に1回あるかどうかの頻度なので珍しい。
二人は、部屋中に飾られている私のロボットのガレージキットコレクションを興味深そうに眺めて、少し呆れ顔をしてる。
土魔法の楽しさに夢中になり作りまくってしまったけど、さすがに作りすぎたか?
飾る場所も手狭になり、ルインが棚を新調して増やしてくれたばかりだけど、それももう埋まりつつある。
そろそろコレクション部屋が欲しいとこよね。
「どれも精巧に出来ているが……ティアルの作り出しているこれは、騎士の姿を真似た土人形であろう? どこで見たのだ?」
「窓から見えた兵の姿を真似たのかしら? にしても、鎧や武器の意匠が違う気がするけれど……これも子供の持つ自由な発想からなのかしらねぇ」
あー……たしかに、アニメのロボットって全身鎧を身に着けた騎士に似てる物が多いかも?
実際に騎士や武士の鎧をモチーフにしてデザインした物もあるって聞くし。
「しかし、魔法を使い始めたと聞いた時はリカルドの時の様な事が起きるのでは心配したが、この様子なら杞憂であったか」
「あの時は城の一部が崩壊して大変だったわねぇ」
リカルドとは私の兄らしいのだが、まだ会った事はない。
城の一部を崩壊って、お兄さん、何をやらかしたん?
「同じ轍を踏まぬよう、姫様の前での魔法使用は控えてたのですが。私が不在の時に部屋付きの者が見せてしまい、申し訳ございませんでした」
「いや、あれは不慮の事故の様な物だ。責めはせぬ。時期が悪かったとは言え、お主と近衛に色々と負担させすぎたのが遠因であろうしな」
「逆に上手く行った一例として、今後に役立つはずよ。ルイン、後でティアルが魔法を発動した状況の前後を記して報告を頼めるかしら?」
「かしこまりました」
ルインがそう言うと、ボリスパパンとセレイナママンは私の元気な姿に満足したのか帰って行った。
どうにも、私に魔法を見せるのは不味かったらしく、先日、魔法を見せてくれた青髪のメイドさんも、ルインが戻ってきた時にこっぴどく叱られていた。
生まれながらに魔力が高い子供が、自我が希薄な内に魔法を発動させると、事故が起こる事があるとかで、私の場合もその危険性が高かったとか。
たしかに、何も考えない子供が火魔法なんて使ったら火事とかになりかねないし、日本でも幼児がライターを弄って火事が起きたとかで、そういった雑貨の構造が見直されてたりしてたわね。
魔法がある世界は、魔法がある世界なりに、別の問題が色々とあるらしい。
そんな事より、ここはどうしたものかしら……
最近は動かして遊べる物の作成に勤しんでいるのだが、どうにも上手く行かない。
さすがに素材が石とはいえ、細かなパーツの耐久度が悪い。
特に、可動部分が。
プラスチックやレジンより頑丈かと思ってたけど、逆に素材が固すぎるというか、粘りが無い所為か、簡単にポキッといってしまう。
ガレージキットの様な動かさずに飾るだけの物なら問題無かったけど、プラモみたいな動かして遊べる物の素材には適してないのよねぇ……
土魔法で簡単に修理できるとは言え、遊んでる最中に壊れるのは気分が凹むし。
全体的に大きく作れば大丈夫かもしれないけど、この小さなお手々で遊ぶには不向きになるし……
せめて、金属パーツで作れれば――作れないのかしら?
考えてみれば試したこと無かったわ。
物は試しと、金属が生み出せないか試してみると、思ったより簡単に鉄らしき金属が生成できた。
土や石より生み出すのに必要な魔力量が倍増するし、生成後の成形段階でも多めに魔力を消費するけど、それ以外はそれほど難しくはなかった。
ふーむ……?
もしかして他の金属類も行ける?
銅は……鉄と大差ない。
銀は……銀っぽいのが出来たけど、鉄や銅の倍近くの魔力が必要みたいだ。
さらに魔力が必要だけど、金っぽいのも作れちゃった……
……この世界の貴金属相場は崩壊してそうね。
銀や金くらいまでになると消費魔力が多いけど、それでもこんなに簡単に作れちゃうんじゃ無価値にも等しい気がする。
まあ、これが本当に金や銀ならだけど。
見た目や重さ、質感ともに、それっぽい感じはするけど、科学的に調べる方法でもないと判別は難しいか。
でも、これで、可動部や関節の問題だけでなく、サフ状態だったガレキに、少し彩も付けられるわ!
さすがに幼児が塗装用の塗料を欲しがるのはおかしいかと我慢してたけど、今まで塗装が出来ないのが不満だったのだ。
トリコロールとまではいかないけど、金色の装甲を持つ機体や、可動部から覗くシリンダーやらをメタリックに仕上げられる!
「おぉー!!」
「あら? これは……サイコロ? では無いみたいだけれど、誰が持ち込んだのかしら?」
私が喜んでいたら、後ろからルインが覗き込んできて、脇に置いておいた鉄のキューブを摘まみ上げた。
そして、首をかしげてから部屋の外の小部屋に向かい、他のメイドさん達の所へと行った。
「誰か、これを姫様の部屋に落としましたか?」
「いいえ? 私は知りませんが、あなたは?」
「私も……何ですかそれ? サイコロですか?」
などと、小部屋からの会話が聞こえて来る。
おんや……?
この反応はマズイ……か?
私が生成した物だと気がついてない?
金銀銅のは私が手に握りしめていたからバレてないけど……
もしかして魔法での金属生成は一般的ではない?
「まったく、こんな姫様が口に入れたら危ない物を誰が……姫様の作った物だけでも気を付けないといけないのに」
私が魔法で色々作り始めた頃から、頻繁に部屋の掃除とか整理をしてくれているのは、そういう理由があったのか。
でも、どうしよう?
目の前で生成して見せてみたい気もするけど、これは暫くは隠した方が良いかな?
ただでさえ色々と気を使わせてるみたいだし……
となると、この金銀銅のを何処かに隠さないと。
うーん……
あの神様に異次元収納ってのも強請っておけばよかったわねぇ……
いや、でも……異次元収納『魔法』ってパンフには書いてあった気がするし、もしかして魔法で再現できるのかしら?
今までの経験で、イメージと使用する魔力量が釣り合えば、魔法で思い描く物は再現できる事は実感している。
収納魔法を試すにしても、問題はイメージの方よね。
異次元ねぇ……
頭に浮かぶのは魔法陣から出し入れしてたり、お腹のポケットとかのだけど、出入り口と収納先の空間はどうしたものか。
とりあえず、4次元フレームキューブの様に、空間を内側に巻き込む様に折り畳む感じでイメージしてみるか。
お……?
思ったより、簡単に出来そう……?
出来そうだけど、これは……
魔力感知の方で見ると収納魔法の入り口がはっきりと見えるけど、肉眼の方で見ると何もない様に見える。
試しに、作った銅の欠片を入れてみる。
すると、消える様に内部に入っていった。
そこまでは良いのだけれど、金と銀の欠片も入れてみると、入れた分だけ収納魔法の消費魔力が微増している。
しかも、中に物を入れている間は、ずっと魔力を消費している感じがする。
うーん。
使い勝手は良いけど、収納している物が多くなればなるほど消費魔力も多くなって、維持管理も大変になりそうだ。
それに、まだなった事は無いけど、私が魔力切れを起こした時にどうなるのか?
中身を全てぶちまけるか、収納している空間が消滅して、入れてあった物も消えるのか、その辺りも分からない。
まあ、それは追々試していけば良いか。
そんな事より、今は金属パーツで関節や細かな可動部を補強するのが先よね!
ルイン達にバレない様に、先ずは外側からは見えない関節部の補強からやっていこっと!
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