「ただいま」

 メロディと二人で住んでいる家に帰るとホラーは言った。

「おかえり」

 メロディが言う。

 ろうそくに火を灯して家の中をほんの少しだけ明るくする。仕事道具のスコップを玄関にあるスコップ置き場に置く。背伸びをして冷蔵庫をあけて中に入っている冷たい牛乳を飲んだ。相変わらず、すごく美味しい。(贅沢だけど牛乳はよく買った。栄養もあるし、美味しいから)

「今度のお給料で新しいリボンが買いたい」

 大きな鏡の前で髪を解く。(鏡の中の自分の顔は無表情)

「ろうそく代は?」

「それくらいなんとかなるよ。……きっと」長い黒色の髪を頭の上でまとめて、ベットまで移動する。

 ホラーの部屋には憧れのアイドルの大きなポスターが貼ってあった。そのポスターにそっとホラーはおやすみのキスをする。

 お風呂場で服を脱いで冷たい水のお風呂に入る。(小さい胸が少し気になる)

「気持ちいい。生き返る」窓の外は真っ暗でなにも見えない。(遠くて獣が鳴いている声だけが時折聞こえた。きっと、食べものをめぐって喧嘩でもしているのだろう)

 ホラーがお風呂にはいっている間にメロディが洗いものをしてくれている。お家での役割は当番制で今日はメロディが家事をやってくれる日だった。

「洗濯物ほかにある?」

「ない」

 元気な声で扉の外にいるメロディにホラーは言った。(白い陶器の湯船の中で、足を伸ばして、代わりに家事をやってもらって、まるで王様にでもなったような気分だった)

「なんだか眠れない」

 ホラーは白いベットの中にいる。固いベットに薄い毛布。(柔らかいベットの上で、ふかふかの洗い立ての毛布にくるまって眠りたいなと思う)

「なにかお話でもする?」

 隣のベットの中にいるメロディが言った。

「する」

 寝返りを打ってメロディを見てホラーは言う。

「どんなお話をする?」

「地上のお話」

「そう言うと思った」

 メロディは笑う。(ホラーはむっとする)

 ホラーは真っ白な少し大きめの寝巻きを着ている。フリルのついた(お気に入りの)可愛らしい寝巻きだ。(お給料をふんぱつして買った)

「寒い」

「いつものことじゃん」

「今日は本当に寒いの」

 メロディはホラーのひたいに手をあてる。

「少し熱があるかな?」

 メロディは自分のひたいにも手をあてて体温を確かめる。

「ホラー最近ずっと働いてるもんね。久しぶりにさ、お仕事はお休みして、明日はベットの中でこのままずっと眠る?」

「大丈夫。寝ればなんとかなる」上目遣いで毛布から顔を上半分だけ出してホラーは言った。

「ホラー。あなたはよく頑張ってる」優しい声でメロディは言う。

「……ありがとう」

 泣きながらホラーは言った。

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