3
お昼休みに固いパンを食べる。もくもくと食べる。(とりあえずお腹いっぱいにする)
固くて不味いが量は山ほどある。(嬉しい)
冷めたコーヒー(のようなもの)でごくごくと胃の中に流し込む。そんなことを静かな古くて広い薄暗い食堂でホラーは山盛りのパンを前に繰り返している。
「お肉が食べたい」
「贅沢言わないの。ご飯がお腹いっぱい食べられるだけでも幸せなことなんだよ」
メロディはそれだけ言うと笑ってまた読んでいた漫画の続きを読み始める。
「ここは地獄だ」
「天国に行きたいの?」顔をあげてメロディが言った。
「私は別に贅沢を言っているわけじゃない。大金持ちになりたいわけじゃないし、ずっと遊んでいたいわけじゃないし、仕事をしたくないわけじゃない。ただ太陽を見たり、虹を見たり、青色の空を見たりしたいだけなんだ。緑の大地の中で気持ちのいい風を感じて笑っていたいだけなんだ」
「冷静になってよく考えてみなよ。仕事をやめてどうするの? なにかやりたいことでもあるの?」メロディはにやにやしている。
「そう言うわけじゃないけど、ここの労働環境は良くない」怒った顔をホラーはしている。(白い頬が膨らんでいる)
「まだホラーは明るい地上に憧れているの?」
メロディに本音を言われてホラーは黙ってしまった。(その通りだったからだ)
「地上に行けば幸せになれるの? 一度も行ったことがない場所に? 物語でしかみたことがないのに? 噂でしか知らない場所なのに?」
「穴掘りはもうしたくない」ホラーは言う。
ホラーは食堂からの帰り道でお財布を出して中を見てみる。(黒いがま口の小さなお気に入りのお財布だった)
ちゃらちゃら音がする。少なくともからっぽではない。逆さまにして中身を手のひらの上に出してみると、古いコインが五枚出てきた。(これが今のホラーの全財産だった)
ホラーは紫色に光る水晶の光を頼りに歩き慣れた道を歩いて、自分のお家に帰っていく。
歩きながらホラーは(笑顔で)歌を歌ってる。
遠くに見慣れた自分の小さな家が見える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます