森鷗外

 卯羅ちゃんと太宰くんだろ? 聞いたよ。聞いた、というか、検死をしたのは私だよ。坂口くんに頼まれてね。

 表社会を介入させず、裏社会の中で凡てを完結させる。そうすれば、彼らの存在は永遠に闇に葬られる。

 そんな人物が居たかもしれない。

 それで終わる。それが最適だよ。

 マフィア最年少幹部と、その介添人。

 最大の貢献者たる太宰くんが死んだ。最大の敵が居なくなったと云っても善いだろう。けれどね、無論寂しい気持ちもあるよ? 彼は私の右腕だったからね。

 卯羅ちゃんは、太宰くんの判断には、必ず従うからね。何も疑問には思わない。ただ、この後、紅葉くんがどうなるかが気掛かりだね。素敵な贈り物を寄越してくれたからね。あの犬のぬいぐるみだよ。あれに手紙を添えて、紅葉くんに贈ってきた。

 二人の死因かい? 失血性のショックだよ。卯羅ちゃんは背後から心臓へ一発。冠動脈を見事に裂いていたから、相変わらず太宰くんの手際には、畏れ入るよ。彼自身は直ぐに逝った訳では無さそうだけどね。卯羅ちゃんの口唇に付着していた血液は、太宰くんの物だった。彼女を自分の紅で飾り、それを慈しむ時間はあった。しぶとい男だよ。

 太宰くんの奔放さに、最期まで手を焼くことになるとはね。あと、そうだな。太宰くんはとても善い友人を持ったようだね。探偵社の国木田という男。最後まで彼らの軌跡を遺しておいてくれと、頭を下げていたよ。だが、それは出来ない。特に太宰くんの死は、この裏社会に何かしらの影響を及ぼしかねない。卯羅ちゃんだってそうだ。二人は知られすぎている。

 結局、どちらが華で、どちらが道化か、最期まで解らず終いだったね。

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