第18話 おっさん、本領を発揮する④

 一度食べ始めた冒険者たちは金を払うからもっと食べさせてくれと声を上げた。

 その言葉を待っていたかのように、洋一は声をあげる。


「俺たちは今晩から裏通りの『ゴールデンロード』に短期スタッフとして働きます。もしよろしければ、そちらにてご堪能いただければ幸いです」


「ゴールデンロードか。少し高いが、これが食えるってんなら、迷うなぁ」


「新人は味わって食っとけよ? これは多分タダで貰っちゃいけない奴だ。兄さん、あんたも人が悪いぜ?」


「俺だってこんなに集まってくるだなんて思っちゃいなかったのさ。ただ、信用のないGランク。パフォーマンスでもなんでもして見せて、勝ち取れたら儲けもんだろ? 実際肉がない時点でお開きだよ」


「そりゃそうだ。肉の持ち込みをすれば料金割引をしてくれたりは?」


「そこはオーナー次第かなぁ? 俺がオーナーなら席料ぐらいは頂くが、それじゃあ店は回せないからな」


 洋一は自分が店を回せる人間ではないと理解している。

 だからこそ、安請け合いはしないのだ。


「ごもっともだ。でも、短期スタッフなんだろ? この都市にはどれだけいるつもりだ? できればパーティに誘いたいんだが」


「その誘いは嬉しいが、こっちも目的のある旅の最中だ。料理人なら他を探して欲しいな」


「振られちまったか。俺はAランクのゼスター。パーティ『エメラルドスプラッシュ』を率いてる。もし気持ちが変わったらいつでも声掛けしてくれ。そっちの子もまとめて面倒見るぜ?」


「俺は洋一、とこっちはヨルダだ。その時はぜひ頼むよ」


 固い握手をする洋一とゼスター。

 早速株を上げることに成功した。

 洋一達はその足で依頼先であるワイルダーの店に向かう。

 そろそろ開店時間だ。


 それを遠くに見据えながら、ギルドマスターは受付嬢に注意勧告する。


「セセリア、あの新人をマークしとけ。多分、今後大物になる」


「ゼスターさんが気にいるほどですもんね」


「それ以上に引っかかる点が多すぎるが、気のせいかもしれないからな」


「まだ何か?」


「テイムモンスターの種族を調べておけ、もし俺が思ってる存在だったら何が何でも国内にとどめておかなきゃならん存在になる」


「ベア吉君ですか?」


「アレをそんなに愛らしい名前で呼ぶか」


「さっきから変ですよ、ギルドマスター?」


「気のせいであって欲しいもんだが……」

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