第17話 おっさん、若く見られる③
「うん? オレの名前がどうかした?」
突然自分の名前を聞き返され、ヨルダは居心地悪そうにした。
「つかぬことをお伺いします。ご実家とは、ヒュージモーデン家ですか?」
「え、なんで知ってんの?」
「有名なのか?」
「この貴族街で行方不明者の届出が我々騎士団に回ってきていたんです。そこでお生を伺っておりまして」
「あちゃー、親父の差金か」
ヨルダは居心地悪そうに、まだ張り紙あるかな? と尋ねる。
何故かアトハはダラダラと汗をかきはじめた。
「どうしたんだ、アトハさん?」
「あー、えーっと」
アトハはなんと言って切り抜けようかと迷ったが「実は……」と自分が何をしでかしたのかを暴露する。
「え、偽物を送り込んだ?」
「顔立ちがそっくりで、金髪。これ以上ない代替え品はいないと思い、つい」
「それ、バレたら親父に首を刎ねられても文句は言えないぜ?」
「だが、事実その偽物はうまいことやっていたようで」
だからと言ってそれでOKということはない。
「しっかしオレの偽物ねー。どんな人?」
「さぁ?」
無責任なもんだな、と思う洋一。
代役を立てたら後の責任は自分たちにはないと言いたげだ。
「何せ無銭飲食の一斉摘発で保護した浮浪者でして」
「そんなやつをよく送り込もうと思ったよな」
「でも、バレてないどころか活躍しちゃいましてね」
「えっ」
「ご活躍しすぎて王太子の護衛に抜擢されたようですよ? 今年から学園生として参戦してます」
「オレ、13なんだけど」
学園に入学できるのは15歳からである。
入学するには2歳足りないとヨルダは打ち明ける。
「えっ?」
「えっ」
アトハとヨルダが気まずい空気の醸し出している中、洋一はとある共通点を見出して質問する。
「アトハさん、その浮浪者の特徴をもう少し詳しく教えてもらえませんか?」
「どうしたの、師匠? なんかあった?」
「もしかしたらその偽物、俺の知り合いかもしれないんだ。探してる相棒は魔法に長けているんだ。魔法はイメージだと俺に教えてくれたのはその人でな。どんな経緯で貴族になんか間違われたかはわからないが、魔法のプロフェッショナルとなれば可能性は上がる」
「なるほど、でもオレに間違われるって相当だぞ?」
髪色だけで判別できたとしても身長などは相当な低さ。
洋一の胸あたりの身長しかないヨルダ。
確かに洋一の目算では藤本要の身長そこまで低くない。
だとすれば、
「なんらかの方法で縮んだ?」
「その人がどれくらいの魔力を持ってるか次第なんだよな」
「魔力量で年齢を誤魔化せるのか?」
「若さは保てるよ。この世界の貴族がいつまでも若い理由はそこ」
洋一はティルネを見る。
そこには老けた年寄りの姿が見えるばかりだ。
「おっちゃんみたいにこの年齢まで育っちゃったら、無理だろうけど」
「ハハハ、これは手厳しい。ワシの場合は心労がほとんどの原因ですがな」
「ヨルダはまだ取り返しがつくと?」
「望めば?」
「なるほど、魔力が多くて本人が望めばその姿になるのか」
「うん。魔法大国の人々が若い理由はそこかな?」
「ヨルダも成長しようと思えばできるってことか?」
「やだ」
ちょっと拗ねた顔。
どうやら成長する気はないようだ。
の状態を保ちたい理由はわからないが、聞いても教えてくれそうにない。
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