第17話 おっさん、若く見られる②
門を潜り抜ければ、分厚いレンガのトンネルを潜る。
通り抜けた後、それが城壁だと知ったのは高台に登って街の案内を受けた時だったか。
この街は王都の一部にあたる。
分厚い城壁は、区画ごとに分かれており。
王城を中央に置き、北を貴族街。南を商業区。
東を騎士や冒険者達の武具の店が並び、西をあらゆる市場が立ち並ぶ商業区となっている。
その中で洋一達は貴族街を選んで歩いていた。
実際に貴族がいるのなら、自分の案内は不要かとアトハは後を歩いている。
ここにティルネの研究所があり、ネタキリーの詰所があるためだ。
「ここら辺は貴族のための街だから、平民の旅行者は本来出入り禁止なんだけどさ」
「その割に、茶髪が多く見えるが?」
貴族の髪色は淡くとも濃くとも金髪で統一されている。
出会った当初は淡い髪色だったヨルダにティルネ。
しかし洋一と一緒に暮らすうち、すっかりハニーブロンドになっている。
本人達は気にも止めてないが、通りすがりの貴族の髪色がそこまで濃くもないのを見て、いろいろいるんだなぁと感じていた。
そして貴族ではない髪色も混じっていることを指摘する。
「お店の店員は流石に貴族じゃないんだよ。でも貴族と懇意にしてるからここでお店を出せるんだ」
「貴族御用達ってやつか」
洋一の例えに、ヨルダが頷いた。
「つまり、平民である以上街にいるにはそれなりの仕事を探さなければいけないと言うことです」
「すごく居心地悪い理由はそれか」
周囲からの視線はもろにそれだ。
なんで仕事を持たない平民がこんなところにいるのか? と言う顔を周囲から受け止めている。今はヨルダやティルネがそばにいてくれるから、指摘されずにいるが、別行動したら咎められかねない嫉妬や蔑みの視線を感じていた。
「そこら辺はワシにツテがあります。恩師殿に相応しい働き口が」
「料理関係なら嬉しいな」
「ええ、うってつけの酒場があります。基本恩師殿は裏方で、配膳などは知り合いに任せりゃええんです」
「まぁ、そう言うのだったら」
「じゃ、オレはその間実家の様子を見に行ってくるよ。子供連れて酒場はいけないだろ?」
「子供の自覚があったんだな、お前」
「師匠はオレのことなんだと思ってるの?」
頬を膨らませて抗議するヨルダになんて答えたものかと洋一は言葉を濁す。
「出来のいい弟子かな?」
「なんだよ、それー」
頭を撫でると嫌がらずに受け止めるヨルダ。
それを見ながらアトハは洋一って一体どんな存在なのかと疑問視する。
何せ普通、平民が貴族にそんなことをすれば拷問からの死罪は免れないからだ。
「随分と仲がよろしいのですね」
「まぁ、オレの命の恩人だしな」
「ああ、ヨルダは俺の最高の弟子だ」
「ヨルダ?」
アトハが何かに気がついた。
数ヶ月前、迷子の浮浪者をとある貴族の家に送り込んだ記憶が蘇る。
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