最終話 えっ、治験? ~わからせを添えて~

「…………ダメだよ、気持ち悪いから」


 詩織を寝室へと引っ張り込み、少し乱暴にひん剥いた。


 あんな間男に口説かれて浮かれて不倫しようとした詩織への怒りと、でも最後まで手を出されてなかったことに安堵したのと、単純に久々だからというのと…… 様々な要素が複雑に絡み合って…… 俺は今、天をも貫くほどヒート! している!


 ある一部を守るようにしている詩織の腕を引き剥がすように強引に掴み…… はい、ばんざーい!  


「うぅっ…… 見ないでぇ……」


「…………」


 おぉ…… これだよ、これ! ズドン、プルン、バルルン…… どの擬音が似合うかな? うーむ、悩むなぁ…… おっといけない、これを見て喜んでいるのを詩織に悟られるわけにはいかないんだ、お仕置きにならないからな。


「気持ち悪いんでしょ…… これって……」


「……ふん、どうだかな!」


 大きくて、スライムみたいで、少し地球の重力に引かれている、そんなにゅうタイプだ…… 


「さっくん…… そんなに見たら気持ち悪くなるよ?」


 たしかに輪も少し大きめで、かなり大袈裟に悪く言うとカラス避けの目玉みたいなやつに似てるな! はははっ! だが、それがまたいいんだ! ……顔に出ないようにしないと。


「うぅ…… ごめんね…… 私、さっくんが喜んでくれていると思って、いつも調子に乗ってたね……」


 詩織はいつも見せ付けてたよな…… 俺もこいつが好きすぎるあまり真心をこめて集中的に育てていたところもある。

 そして、長年の厳しい修行にも耐えて大きく成長したもん…… なっ!! 

 

「ひぁっ! ペチペチしないでぇ……」


 ……スイッチで起動! ダブルクリックして高速で特殊コマンドを入力すると、俺だけが知ってる特別なボイスが聞けるんだよ…… そうだよなぁ!!


「はぅぅっ!! さっ…… くぅぅん!」


 ふぅ…… 楽しくなってきたぜ! 更に交互ボタンを押して、レバーを引っ張って…… えい!


「くひぃっ!! やめてぇ…… 取れちゃうよぉ!」


 はぁっ? これくらいで音を上げるのか? これは詩織が別の男とフュージョンしようとした罰だぞ? ワクワクしたんだろ? 反省しろ!  猿かお前は! 月でも出てたのか!?


「そ、そんなぁ…… ごめんなさいぃぃ……」


 よし! オラァ! ……金で払えないツケを払ってもらうぜ? 覚悟しろよ? 


「うっ…… うっ…… ごめんなさい、さっくん…… 許してぇ…… あっ!!」



 …………

 …………



「ふぅ……」


 ……やれやれ、やり過ぎたかな。


 馬鹿につける薬はないと言うが、アホには注入するタイプの薬なら効くんじゃないか? という新たな研究成果を論文にしてまとめよう…… などとアホな事を考えながらベッドに腰掛けている。


 ちなみに治験にたーっぷり付き合ってくれた被験者は、ベッドの上でビクンビクンしながらアヘアヘしているが。


 最初、拒絶反応を示していたが、少し時間が経つと効果が現れ始め、最後には薬を喜んで注入されていたし、もっと治験したいと懇願するまでになった。

 これは成功と言ってもいいかもしれない。


「さっ…… くん……」


 …………


『気持ち悪い』とは言わなかったが『俺くらいしか好んでバブバブしないんだよ!』と、ありったけの怒りをかき集めてわからせてやったから、もう二度とアホな事は考えないだろう。


 可哀想だし、仕方ない…… 今回は許してやるか、今回だけだぞ?


「ごめん…… なさい……」


 昨日までアホ面だと思っていた、アホだが可愛い詩織の寝顔を見つめながら、俺もベッドに横になった。



 ◇



 あれから数ヶ月、間男の行方は未だに分からないらしい。


 そして詩織を唆し『お茶会』に誘った加藤さんの奥さんとは弁護士に相談して色々話し合った結果、示談で十万払ってもらいそれで手打ちにしてやった。


 まあ、あっちはあっちで今、大変な修羅場で離婚騒動になっているらしいが、そんなこと俺の知ったこっちゃない。


 詩織が一度参加させられたという『お茶会』という名の合コンを何度も開き、旦那以外の男を食い漁っていたんだから離婚されても仕方ないよな、知らんけど。


 そして、ついてだから最後に奥さんに会った時に、なぜ詩織を誘ったを聞いてみたんだが


『いつも惚気を聞かされてムカついたから』と言われた。

 そして、加藤さんの奥さんの不倫相手に特殊な性癖の知り合いを連れてきてもらって、詩織をめちゃくちゃにしてやろうとした……  と、半分自棄になって吐き捨てるように言っていた。

 ……クソ迷惑な女だな、人んちを巻き込むなよ。


「さっくん…… お風呂の用意出来たよ」


「ああ、じゃあ入ろうか」


「うん……」


 色々あったがすっかり懲りたんだろう、今までよりも尽くし愛してくれるようになった詩織。

 何度も『俺以外に詩織のことをこんなに愛してくれる男がいるのか?』と言い聞かせるようにわからせ『二度目はないぞ?』と念を押したので、もう二度と間違いは起こさないだろう。

 

 そんな詩織に『俺しか好んで触らない』と何度も言い聞かせた、たわわなたわわで身体をまんべんなく時間をかけて丁寧に洗ってもらい、そして……


「こんな私を可愛がってくれてありがとうございます、今日も精一杯頑張ります……」


 そう言いながら少し嬉しそうな顔をしてベッドの上で甘えてくる最愛の妻と、今日も楽しく愛を深める濃厚な治験を始めた。



 …………

 …………



「さっくん……」


「んー?」


「私がこんな事聞くなんておかしいかもしれないけど、どうしてあの期間、私と触れ合ってくれなかったの?」


 ……あっ、言うの忘れてた。


「ああ、そ、それは……」


 そしてあの時、俺の息子の身に起こった悲劇的な事件を…… 少し恥ずかしかったが説明したら……


「そんな…… さっくんが痛みで苦しんでいる時に、私はなんてことをしてしまったんだろう…… ごめんね」


「言わなかった俺も悪いしもう許したんだからいいよ、それよりも古傷が病むからよしよししてくれ」


「ほ、本当だ! 腫れてるよ?」


 いや、腫れてるというか、膨張?


「うぅ、ごめんね? いっぱいよしよしするね? ……ここで」


 うん、詩織は天然で可愛いな。


「さっくん、ありがとう…… 愛してる」


「ああ、俺も愛してるよ」


 ……まあ、色々あったが俺達はこれからも仲良くやっていけそうだ。

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