アナザーワールド!?

 ◇


 んっ…… 何だこの真っ白な空間は……


『ようやく目覚めましたか……』


 だ、誰だ!


『私はあなたの世界とは違う世界の神…… あなたはデロ…… ではなく、とある車に轢かれて、ゴー・トゥ・ザ・アナザーワールドしました』


 はっ? ちょっと何言ってるか分からないんですけど…… って、よく見たら…… ウヒョッ! 良い女じゃねーか!

 ちんちくりんのつるぺたーん、まるで本物の女神様だぜ!


『はい、神です…… そしてあなたは死にましたが、素質があったので魂だけは私が救いました』


 あぁ…… 俺は死んじまったのか…… まあ、あんな気持ち悪い、デカいだけの肉の塊を間近で見てしまったら死んだも同然だったけどな! あの女の見た目に騙された…… 着痩せ…… いや、着ロリするタイプの女と見抜けなかった俺が悪いか。

 童顔で身長が低いのに、あんなグロテスクなゲテモノを押さえ付けて隠していたとは…… 思い出しただけで吐き気がするぜ!


 それより素質ってなんだ? 


『私の世界を救う、強い力を手に入れる素質があるのです! お願いします、あなたの力を貸してくれるのなら、特別な『スキル』を与えて転生させますので……』


 うぉぉっ! 聞いたことあるぞ! アニメとかそういうのでやってる…… 『異世界転生』ってやつやん! 素敵やん!


 いいぞ、俺はやってやるぜ! 


『ありがとうございます…… それでは早速転生させますね、我が世界『ロリン星』に……』


 ロリン星!? ……へへっ、良い響きじゃねーか! 待ってろよ…… 俺が世界を……



 …………



「ここは……」


 ヨーロッパ風の建物がポツポツとあるが、どう見ても田舎の街だ…… ここが異世界ってやつか?


 とりあえずこういう場合、最初にやる事は決まってるんだよな!


「ステータスオープン!」


 …………


「ステータスオープン!」


 …………


「ステータス……」


「そこのお兄さん、さっきから何を叫んどるのじゃ?」


 ……のじゃ? ……って!! おいおい、マジかよ!!


「若いもんがワシのようなばあさんをそんな目で見つめて…… ところで見ない顔じゃなぁ、旅の者か?」


 ばあさん!? いや、どう見てもロリじゃん! のじゃ…… ロリ…… のじゃロリ!!

 

「な、なんじゃ! いきなり小躍りをして…… 不思議なやつじゃな……」


「なぁ! 俺は初めてここに来るんだが、一体ここはどこなんだ?」


「そうなんじゃな…… ここは『リィロ村』じゃ、最近は近く魔物が暴れていて、若い男は戦いに出ていないんじゃが、賑やかな村だったんじゃよ」


 ふーん…… まあ、そんな事はどうでもいい、とりあえず……


「自分のステータスとか見られたりしないのか? ほら、不思議な力で」


「ステータス? そんなの『スマホ』でいつでも見られるじゃろ、この世界では常識じゃぞ」


 スマホがあるのか! ……えっ? どこにもないぞ? おい、ロリ女神! 転生したのにスマホ持ってないじゃないか! 出てこい! 愛でてやるから!


「何をブツブツ言っとるんじゃ?」


「スマホがないんだよ」


「何を言っとる…… 手に持ってるじゃろ」


 えっ? ……この小さくて薄っぺらいメモ帳みたいなやつか?


「そうじゃ、それが何でもすぐに調べられる、誰もが持ってるスキル『スマートな本』略して『スマホ』じゃ! ……さてはお主、記憶喪失というやつじゃな? 最近多いんじゃよ」


 スマートな本!? ダジャレか? ……まあ面倒だから記憶喪失でいいか。


「で? どうやってステータスを調べるんだよ」


「『す』の欄を開けばあるじゃろ」


 『す』? ……えっ、辞書みたいにわざわざ開かなきゃいけないの? 面倒くさっ。


 す…… す…… 『す』の欄があった、あとは『ステータス』…… うーん…… あった! やっと見つけられた……


「それで? どうすればいいんだ?」


「……文字を指でなぞれは頭の中に情報が流れてくるんじゃよ」


 なぞる…… う、うわぁぁっ!! あ、頭の中にぃぃぃっ!!


 …………へっ? 氏名と生年月日だけ? スキルとかは?


「スキルはスキルで調べないとダメじゃぞ? まったく…… どこまで記憶を喪失しとるんじゃ?」


 め、面倒くせー!! スキル…… スキル…… あった! あとは指でなぞって……


 おっ! 俺のスキルは……


  『不能』

 一定時間、触れるもののすべてを不能に出来る。


 何、このスキル……


 よく分からんから…… 触れたらいいんだよな、えい!


「な、何をするん…… じゃあ…… か、身体に…… 力が、入らない……」


 おお! 力が入らなくなる? ……きっと『行動不能』にしたんだ! すげぇぇっ!!


「ばあさん…… なのかは分からないが大丈夫か!?」


「あっ…… あぁ……」


 こんな所に倒れたままでいられるのもマズいから…… 仕方ない。


「家はどこだ? 連れて帰ってやるから」


「あっ…… あっち、じゃ……」


 そして俺はロリ…… じゃなくてのじゃロリばあさんを抱き抱えて家まで運び……


 …………


「や、やめるんじゃ! こんなばあさんに何をする……」


「ばあさんなんかじゃないぜ、俺からしたらゴキゲンでデンジャラスなレディさ……」


「な、何を口説いてるんじゃ…… ダメじゃ! ……ダメ、じゃよ? あぁ、ダメじゃって!」


 やべぇ! これ合法だぜ! ……もうたまらん! ……って、あれ? おい! 大丈夫か! しっかりしろー!!


「久しぶりじゃから…… その…… 優しくして欲しいんじゃが…… んんっ?」


 何をしている! 立て…… 立つんだ!! マイブラザー!!


「一人で何を…… はっ! お主、もしや…… 『不能』か?」


 ふっ『不能』!? う、嘘だろ? こんな、目の前にとびきりのごちそうがあるのに…… 


 はっ!! スキル…… 『不能』!!


 なっ、あっ…… クソぉぉぉぉっ!! どうしてだよぉぉぉぉぉっ!!


「ふん…… だっさ、最低じゃな、ざーこ! ざーこ!」


 うっ、うぅぅっ……


 この世界…… 見渡す限りロリロリしてるのに……

 この楽園で、俺はずっと…… 


 恨むぞ!! ロリ女神ぃぃぃぃっ!!

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