第11話 降臨
バスを乗り継ぎ約8時間の長旅を終えて、出雲大社についた。
ついた時には夕日が沈むころ合いで出雲大社の営業も終了の時間が近づいていた。
営業時間は人間が決めたものだから神様にとっては関係のないことだろうが私が神様の御前に行けるかどうかという問題にはとても重要なことだ。
少し小走りでそれでも神様の気に障らないように慎重に一歩一歩を踏みしめて参拝していく。いくつかの鳥居をくぐり皇大神宮の正宮までたどりついた。
そこで呼吸を整えてゆっくりと目を閉じて胸の前で手を合わせ心の中で願いを唱えた。
目を開けるとそこはなにも変わらない普通の景色でこれが現実なのだと思い知った。神様にあったことで自分が特別な何かなのだと思いあがっていた。会えるはずない神様にもライトにも。日も暮れて閉園時間を迎えた出雲大社を後にして電車やバスを乗り継いで次の日の早朝、家に帰ってきた。
移動中ずっと考えていた。これからのこと。これから1人で生きていくのか。一度は諦めて捨てようとした命だがこの数日の出来事がもう一度自殺をしようとは思わせなかった。お金はお母さんが残してくれた遺産と祖父母の支援でなんとか大丈夫だろう。そういう物理的なものではなくもっと精神的なものが大丈夫じゃないのだ。高校生1人でどこまでのことができるのかわからない。怖い。ただただ未来が怖い。それからしばらく考えて、考えるのに疲れて、なんとなくお母さんの入院していた病院に来ていた。そこの屋上、私が自殺をしようとした場所。そしてライトと出会った場所。ここならライトに会えるような気がした。屋上の柵を越え、その場所にたった。怖い。こんなところからよく飛び降りようと思ったものだ。
「ライト…」
そう呟いたその時、神々しい光と共になにかが上から降ってきた。それはこの世のものとは思えないほど綺麗で美しい女性であった。
「神様?」
ふと声が出ていた。そこにいたのは神様なのだと一目で分かった。彼女はそう思わせるだけの迫力と神々しさを持っていた。
「そうだよ。我こそ日本で一番偉い神様なのだ。きみは本当にダメな子だね。親不孝もいいとこだよ。見てられなくて降りてきちゃったじゃないか!」
「…」
ダメな子だの親不孝だの言われすぎな気もしたが自殺しようとしてた愚行を思い返せばぐうの音出ない。
「そうやって黙ってたらいいと思って。きみはまた性懲りも無く自殺しようとしてダメだよ。きみの命はきみだけのものじゃないんだから。あの子も忠告を破って力使いすぎちゃうし。余剰分は自分のを削ってるっていううのに。」
「どういうこと?」
「きみ、あの子からなにも聞いてないのかい?まったくあの子もあの子だよ。そうだ君にはご褒美をあげないといけないんだ。あの子の手伝いをしてくれたお礼さ。きみはあの子にもう一度会いたいんだろ?」
「あの子ってライトのこと?」
「ライト?あぁ、きみはそう呼んでいるんだったね。そうそう。ライトのことだよ」
「なんで知ってるの?」
「きみが私のところにお願いに来たじゃないか」
あぁ、この人が天照大御神様なのか。
「ありがとうございます。ライトに会わせていただけるのですね」
「どうしたの?急に改まって。きみって敬語とか使えたんだね。まぁいいや。今はまだ会わせないよ。会う前にきみはもう少し知るべきだ。自分の生い立ちをね。」
生い立ち?どうすればいいのだろう。でも、ライトにもう一度会えるならなんだってしよう。それだけの覚悟はある。
「私は何をすればいいのですか?」
「よろしい。では、あなたはこれから祖父母の家に行きなさい。そして、両親のことを知りなさい。その上でもう一度ここに来なさい。さすればきみの願いは叶えましょう。」
そう言い残して神様は去っていった。
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