第10話 消失

次の日は漫画を読む予定であったが、そんな気分にはなれずお昼までベットでふさぎ込んでいた。昨日のあの情景が頭にこびりついて消えてくれない。彼女の叫びがいまだに処理しきれていない。それでもおなかはすくので重たい体を起こして台所に向かって階段を下りた。なぜか妙に静かだった。そこで気づいた。いつもならソファーでダラダラしているはずの神様がいない。

「らいとー」

呼んでみても返事がない。家のあちこちを探してみたがどこにもいない。どこか出かけたのかなと思って待っていたのだが、それから3日間帰ってくることはなかった。

なんとなく妄信していた。神様はいつも一緒にいてくれると。たった数日一緒にいただけだけど自分の心を救ってくれた彼にお母さんと同じくらいの信頼を置いていたのだと知った。

探す当てはない。私は彼のことを何も知らない。それでも彼に会いたい気持ちがあふれてくる。だから、いつか神様に聞いたすべての願いを聞き届けてくれる神様に会いに行こうと思う。そこでもう一度ライトに会わせてと願おう。そして彼に会うことができたらお礼を言おう。そう心に決めて荷造りを始めた。

次の日の朝バスに乗って伊勢神宮に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る