第8話 経験
次はもっとうまくやろうと決めてついてきたがあまりやることがない。深く考えていなかったが願いを叶えるなんて神様にしかできない。私にできることはない。今日、私は人の話を聞いただけだ。今日だけで2人のところに赴いてが、2人とも来世のお願いをしていた。来世での願いは比較的少ない寿命でも叶えやすいそうだ。その上、無理を言いすぎない限りかなりの確率で本人の思い描いた通りになるのだとか。1人目はがんで余命が一年の男性だった。その人は寿命一ヶ月分と引き換えに来世でもまた、お嫁さんに会うという契約を行った。病気に侵されるという不安な死を遂げることから来世でお嫁さんと恋仲になる運命の人オプションをつけたそうだ。神様なりの粋な計らいだ。
二人目は農家のおじいちゃんだった。80代とは思えない元気な姿で農作業していた。おじいちゃんは来世でも田舎に生まれて農家になりたいと願った。寿命は短かったが生まれる場所の指定は十分にできた。残り寿命の半分である5日分で契約を行った。あと5日しか生きられないと知ってもやめることなく農作業に励む背中は私の目には悲しく映った。だが、きっとそれは間違っているのだろう。おじいちゃんの幸せそうな顔をみて、来世の願いを聞けば人生が終わるのを悲しむ要素は見つからない。それなのに悲しく見えるのは私の問題だ。自分なら悲しいとまだ死にたくないと思うから自分の死を受け入れているおじいちゃんの気持ちが理解できないのだろう。頭ではわかっていてもこの心のひんやりとした痛みが消えない。
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