第4話 初仕事
次の日、私の神様の眷属として初めての仕事に出た。
『最初は軽めのものにするよ』と神様は言っていたけどどんなだろう少し不安だ。
「さあ、今日はとわの初仕事だ。張り切っていこう!」
「張り切るような仕事なの?」
死神と呼ばれるような仕事だ。きっと悲しい仕事なのだろう。
「それはやってみてのお楽しみさ。では早速行こうか」
それから、私は神様と一緒に空を飛んでいる。風も浮遊感もほとんど感じない。
すごく不思議な飛行旅行だ。
「ついたよ、じゃあ入ろうか」
そこは田んぼで囲まれた見るからに田舎という雰囲気の漂う民家だった。
かなりの距離を移動したようだが、ほとんど移動した感じがしない。不思議だ。
「ごめんください」
玄関の前に一言声をかけたが、返事がなかった。
「誰もいないみたいだよ」
「いやいるよ、大丈夫だから入ってみようか」
そういって神様は玄関の戸を開けた。
田舎は鍵をかけない習慣があると聞いたことがあるが本当だったんだ。不用心。
「おじゃまします。」
その家の廊下を進み、最奥の部屋。床に伏しているおばあちゃんがいた。
「あら、今日はガールフレンドと来たのかい。」
こちらをにこやかな顔で見つめていた。
「ちがうよ、僕は神様だって言ったでしょ。この子は僕の眷属さ。」
「そうだったね。その見た目だからわからなくなるな。はじめまして、お嬢さん」
おばあちゃんは私に目を向けて優しく声をかけた。
「はじめまして。」
すこし思想がない返事をしてしまっただろうか。不自分の一挙手一投足が不安になった。
「ごめんなさいね、この子不愛想で。いい子なんですけどね。」
やっぱりそう見えていた。どうにか取り返したい気持ちになったがどんな顔でどんな言葉を吐けばいいのか、人付き合いの少ない私にはわからず、うつむいて黙り込むしかなかった。
「そんなことないよ。神様の後ろで不安そうにしている姿がうちの孫にそっくりですっごくかわいいよ。もう少しこっちに来て顔を見せておくれ。」
そう言われて、おばあちゃんの寝るベットの横に近づいて座った。
「すごいべっぴんさんね。高校生くらいかな?学校ではさぞ人気者でしょう」
「高校一年生でした。学校には最近行ってません。」
お母さんが死んだ7月の初めから学校に行っていない。
「そうなの、でもきっと大丈夫よ。人生は長い。何回転んでも何回だって立ち上げればいいんだから生きてる限り可能性はついえないわよ。」
あぁ、私は今転んでいるんのか。でもそう簡単に立ちあがれない。
「そうですか・・・」
「人生について考えるのは若い子の特権。存分に行使しなさいな。」
「わかりました。ありがとうございます。」
それから、おばあちゃんは神様に顔をむけて少しを起き上がり、頭を下げた。
「ありがとうございます。神様、私は幸せでした。」
「そうかい、それはよかった。じゃあ、これくらいでお暇させてもらうよ。
次はちゃんと見守ってるからね。」
「今日は来てくれてありがとう。お嬢さん名前は・・・」
「とわです。」
「とわちゃん、あなたも幸せになってね」
その言葉の真意はわからない。でも、自殺しようとしてた自分をとがめられたような感じがした。
「約束します。」
その言葉を聞いてニコッと笑ったおばあちゃんはそれからすぐに寝てしまった。
それで私の初仕事は終わった。
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