第8話 ボフマン王国のカーン(統治者)

魔法のほこらにあった、魔法のゲートをくぐると其処はグオアフ大陸のボフマン帝国の近くの祠に飛ばされていた。


ボフマン帝国は、軍事国家として知られており魔王軍と戦う人類防衛の要の一つの国であった。


俺は、トルキア王からもらった援助の依頼が書かれた紹介状を持ってボフマン帝国の王宮へ向かう。


王宮では、屈強な軍人達が剣を振り軍事訓練をしている。


この国は、現在魔王軍四天王の一人、火の魔人ビフロスト率いる魔王軍の攻略対象になっている。


王との謁見の間に通された俺を待っていたのは、国王サンバルカーン6世とその5人の息子達であった。


王座と反対方向には、この国の開祖サンバルカーン1世の大きな像が王座と向き合う様に置いてある。


高さ3m、いや、4mはあるだろうか・・・。その像は王の権力を示すかの様に威風堂々と謁見の間全体を見渡している様であった。


『お主がトルキアから遣わされた勇者アルフという者か?。』


『ハッ!勇者プロティンの息子アレフと申します。』


『ワシは、この国の王、サンバルカーン6世。』

『こちらから、第一王子から第5王子までの子供達じゃ。』


『第一王子 マージャンカーン!』


『第二王子 ドラムカーン!』


『第三王子 キラーカーン!』


『第四皇子 サバカーン』


『第五王子 カンカンです。』と、5人の王子達がそれぞれ威厳のある声で名のりをあげる。



(あれ?第5王子の人、一人だけ何かおかしくない。カンカンなの?、カンカンといえば、パンダだよね。流れ的には、カーンカーンだよなあ、それともカンカンデス?。)


(俺らの世代なら、ハンマハンマとかいうロボットを知ってるから、名前が少し変わってるな、でうけいれれるけど、もう、若い世代だったら、カンカンですよ。なんちゃって・・・。)


俺がそんな事を考えて内心密かにニヤニヤしていると、王様は俺に話しかけてきた。


『勇者の息子が、勇者というのもおかしいのう、そうじゃ、ワシの自慢の息子達がお主の実力を試してやろう!。』


(この王様のいう事は正しい。だが、王様の子が当然王位の継承者になる事が良くて、勇者が駄目という論理がわからない・・・。コイツは知らないのだろうか?日本という国には、多くの2代目社長がおり、その多くが努力し会社を継いでいるという事を。王様、社長、勇者も又職業の一つなのだ。)


『ハッ、望むところです。宜しくお願い致します。』


俺は、ちょっとムッとする自分を自覚しながら、自分を抑え無難に言葉を選らび、王が座る王座から20歩以上下がり、剣を持ち立ち止まる。


『ほう、好い心構えじゃ。』


『息子達よ、トルキアの勇者と手合わせする者はいないか?。』


『ハッ、我こそは第一王子、マージャンカーン。ボフマン帝国一の魔法使い!。』


一番年長の風貌の顎髭の男が名乗りを上げる。


手には、高級そうな杖を携えている。


『待て待て、マージャンよ。お主はレベル25の魔法使い。15の若者を相手に勝ったとしても、大人気ないと評判を落とす可能性がある。トルキアの勇者殿が可哀そうだから、辞退してやれ。』


まるで、やる前から勝敗は決まっておるという、俺を見下す様にいう、サンバルカン一世は言う。

あ、間違い、サンバルカーン一世。


『いや、私は構いませんよ。』


『ちょっと、準備運動を兼ねて、魔法の試し打ちをしてよろしいですか?。』


俺は持っていた銅の剣をソッと床に横にしておく。


『・・・試し打ち。いいじゃろ。其処にある開祖サンバルカーン1世の像には耐魔法の呪文をかけておる、並みの攻撃ではカスリ傷一つもつかんじゃろう、それをまとにしてやる事を許す。』


『は、有難き幸せ!。それでは・・。』


俺は、1日前に見た美人なオネエサンが放った氷の魔法を真似して、呪文を放った。


『オーロラ ギャラクシア バンダムゥ!!』と取ってつけた掛け声と同時に俺が両手を上げると、俺の両手から凄まじい冷気が巨人像めがけて放たれる。


一瞬にして、巨人像が白い氷で覆われる。


俺は、すぐさま床に置いていた銅の剣を像に投げつける。放たれた銅の剣が勢いよく、巨人像へ刺さったと思うと、刺さったところから、氷が割れ、巨人像が四散していく。


ボロボロと崩壊する巨人像の音は激しく、まるで雪崩れの様であった。


(やっぱり、一回みただけじゃ、完璧にコピーできないなぁ。オネエサンの魔法の様に綺麗に跡形も無く四散する様にはできなかったなあ・・・。)


『王様、準備運動OKです!。試合何時でも始めれます。』と、俺が言う。


『・・・・。』、誰もしゃべらず、数分の沈黙が走る。


『父上、仕方がありませんので、彼の対戦相手は弟たちに譲りますね。』と第一王子マージャンカーンが静かに言うと、『急に腹が・・・。』とドラムカーン王子。


『そういえば、俺今日歯医者だった・・。』とサバカーン王子、『今日は、殺生は禁じられている日でした・・。』とキラーカン王子が次々と辞退する弁を述べた。


最後に、『カンカン、負けを認めます。』と第五王子が降参したのであった。


そして俺は、6人に実力を認められ国賓待遇でボフマン王国に滞在する事になったのである。


実力を認められたのも嬉しかったが、第五王子の名前が確認できた事も嬉しかった俺である。


彼らから俺に依頼してきた事は、ボフマン帝国に攻撃を仕掛けてきている魔王軍四天王のロストビフの討伐であった。

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転生先は失踪した勇者の息子でした。王様に呼び出されて、最初に言われたのは『父親の借金返せ!』でした。借金のカタに無理矢理冒険に旅立たせようとしてます。王様、支度金100Gでは銅の剣も買えませんよ。 野松 彦秋 @koneri

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