第5話 資金調達の終了と出発の日

それから更に日々は過ぎ、相変わらず競馬場で副業に明け暮れる日々の俺だったが、そんなある日の事、家に帰ると部屋に隠していた貯金箱(大きい旅行カバン)が開けられていた。


母である。


『アルフ、怒らないから、お母さんと一緒に警備隊(警察の様な機関)に自首しましょう。』


『どんな悪さをしたの、盗み?、強盗??、ドロボウ??』


『母さん、それ、全部同じ意味だから・・・。』と俺は、おちついたまま冷静に突っ込む。

(あ、ヤバいな、やっぱりバレたか・・・。まあ、仕方が無い、母さんには正直に言って謝ろう・・。)


『まさか、6,000ゴールドなんて大金。』


『何、私は亭主に逃げられた妻で、息子はドロボウ。・・・私に何か問題があったのかしら・・。』


『私の教育が悪かったのかしら、女手一つで、あんなに頑張ったのに ウゥッ。』と母はその場で泣き崩れる。


(母さん、お城から毎月親父への報酬として結構な給金が届いていたし、苦労という苦労は・・。)と俺は思ったが、泣き崩れる母の前では、面倒くさいので言わない事にした。


『そう、あの日、高い場所から落としてしまった時、頭を強打させたのがいけなかったのかも・・。アルフが生まれた日、病院が家事になって、逃げる際に取り違えた、まさか・・。』


『誕生日が、6月6日、キャァ、悪魔の生まれる日じゃない。天に召します。我らの神よ・・。』


『母さん、俺の誕生日は、6月18日だよ。あと、その設定って、この世界でも有効なの・・、俺の事自宅で出産した筈だよね。』と俺は母に質問したが、母は、怖い顔をしながら、ひたすら言葉を繰り返す。


『悪魔よ去れ、悪魔よ去れ。』


(こりゃ、ダメだな・・。)


母の想像がどんどん、膨らんでいくので、俺はその場で、土下座をして母に謝る事にした。


『母さん、ストップ、ストップ。ごめん、今から説明するよ。』


『実はその金、副業で、競馬場で稼いだお金なんだ。』


俺は、自分の能力を上手く隠し、お金を稼げた事実だけは真実を話した。


『つまり、アルフには馬の調子、実力が分かるって事ね。法律も犯していない。何だぁ、早く言いなさいよ。それなら・・・。流石、アルフ私の自慢の息子ね。お前が生まれる前の日にね、私はね、馬肉を食べる夢を見たの。やっぱりそれは、神様のお告げだったのかしら・・。』


『母さん、それは馬肉が食べたかっただけじゃない。それってお告げじゃないよね、あとその肉って焼いた肉だよね。馬刺しじゃないよね。』


『もちろん、焼いた肉よ。馬刺しって何よ。生肉、エェ、気持ち悪い』


何か、いつの間にか最後は何時もの雑談になってしまったが、結果、タンス貯金していた6,000ゴールドとその日まで、別に自分が稼いだ1,000ゴールドと合わせて7,000ゴールドを冒険者ギルドにある預り所という預金できる銀行機能のある場所に預ける事で了解してもらった。


母の名前と俺の名前の口座を作り、母の口座に4,000ゴールド、俺の口座に3,000ゴールド入れた。


いや、入れる予定であった。預り所についた母が、突然自分の口座に入れる予定であった1,000ゴールドを抜き、3,000ゴールドだけ入金する決断をした。


『アルフ、この1,000ゴールド持って、私これから競馬場へは行くわ!貴方も来るのよ!!私の隣で馬の絵でも描いてなさい。』と冒険者ギルドを出るなり、母は俺に宣言をした。


それから、数日間、俺は母の隣で、画板に挟んだ画用紙にむけ筆を走らせ続けたのは言うまでもない。


当然、書いていたのは馬の絵ではなく、勝つ馬の番号だった。


気がつけば、母と俺の手元には、預かり所に預けた金以外に親父が持って逃げた1万ゴールド以上の金が出来ていた。


数日後、母が朝食を食べながら言う。


『アルフ、このお金で、買いたい物総て買ったら、冒険の旅へ出かけなさい。』


『貴方が戻る迄、私はこのお金があれば大丈夫。貴方と貴方のお嫁さんが帰って来る迄、元気でいるわ。結婚式費用ぐらいは、残しておくから、心配しないで行ってらっしゃい。』


其処には何時もの調子のいい母はおらず、しっかり者の母がいた。


そして、二日後、俺は冒険の旅に出た。


・・・4日後、俺の家に国税局が入ったと知ったのは、1ヶ月後の母からの手紙であった。

国税局は、俺が国外に逃亡したと勘違いし、舌打ちをしていたとの事。


母の手紙の最後には、ホトボリが冷めたら、又里帰りして来てください。又、絵を書きにいきましょうと書かれていた。


(何時から、監視されていたのだろうか・・まあ、あれだけ豪快に当てれば・・・しょうがないか。)

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