第3話 さあ、冒険(競馬場)へ出かけよう!

母と一緒に家に戻った俺は、母に状況の確認をした。


『母さん、王様が親父が支度金目当てで冒険の旅に出たような事、言われたんだけど?。』


『そんな事無いよね・・・。』


俺の問いに母は、困った顔をしながらも、ゆっくりと彼女の考えを答えてくれた。


『アルフ、お父さんが支度金を1万ゴールドもらっていたなんて、私も知らなかったのよ。それが分かってから何かね私も、何かお父さんの事、信じられなくなってね。』


『正直、信じてあげたいけど、隠し事をされていたとわかると、・・・ね。』


『こんな事言うのも、何なんだけど、貴方のお父さん、お酒を飲むのが好きで、賭け事をするのも大好きで、そして何より大の女好き、ホラ、昔から聞くでしょ、~の三冠馬。』


『・・・・母さん、それを言うなら、三冠王ね。』


『15歳のお前に、言うのもなんだけど、お前が生まれる前の事だけど、外に恋人がいた事もあったのよ・・・、キィー、思い出しただけども腹が立つ。私が居ながら、あんなブスと・・・。』


母の中で溜まりに溜まった父への恨みが、言えばいう程、どんどん出て来る。


成す術なく、少し聞いていたが、徐々にヒートアップする母に疲れ、タイミングを見て、俺は離脱(逃亡)を試みる。


『分った、分かったよ。・・・帰ったら、又聞くね。』

(どうやら、俺はとんでもない男の遺伝子を継いでいるらしい。前世の俺の様な仕事一本の真面目な男が結婚できず、チャランポランな親父プロティンの様な男が女性にモテる。世の中、何が正しいのか・・・。)


『俺、冒険の旅に出る買い物の下見に行ってくるね・・。』と俺は母に伝え、逃げる様に外に出た。


家の中から、未だ終わっていないと、母の声が聞こえる。


(母さんには悪いが、父の愚痴を聞くよりも、ナケナシの支度金100ゴールドを俺は増やさなければいけない。なあに、俺の選んだ能力、運の良さMAXを用いれば、直ぐにでも倍々にできる筈・・・。フフフンッ、鼻歌歌いながら増やしてやるぜ!!)


意気揚々と俺が向かった先は、国で唯一の国営競馬場であった。


(お馬さんとは、前世でもよく遊んだ。世界が変われど、競馬があるとは、人間の欲、いやいやロマンは万国共通だよね・・・)と思いながら、俺は予想新聞を近くの売店で買い、競馬場の入り口の行列に並んだ。


(運の良さmaxと、鑑定眼を使えば、100戦戦って100戦危うからず。孫子の兵法も俺には要らないのだ・・・)と思って、めぼしい馬を物色していると、後ろから女性に声をかけられる。


『君、君、見た感じ若いけど幾つ?。』


振り向けば、其処には20代前半だろうか、可愛いお姉さんがいた。


(これは、恋の予感。2回目の人生は、恋愛に重きを置こう、必ず一度は結婚するべきだ。前世の様に寂しい人生はコリゴリだ。)と俺の頭が高速回転で稼働する。


俺は、ありったけの勇気とカッコつけて、彼女に答える。


『15才だけど、何か用?』


彼女は、少し困った顔をした様な気がした。


(あ、何だ、年下か、っておネエさん、今そんな気持ちの困った顔でしょ??)


恋を妄想する俺に、彼女は困った様な声で、『君、あれ読める??。』


彼女が指さした方向には、看板があり其処にはこう書かれていた。


【20歳以下の方は入場禁止。お金は賭けても、命と生活は懸けてはいけない。】


『あ、オレ未だ15・・・。)


彼女は、私服の警備隊であった。


『君、今日学校は??学校は何処??。中学生??』


『学校は、トーテムポール中学です。今年の3月に卒業しました。高校にはいかず、春から冒険者になる予定です。』


『あ、そう。一応、学校に確認取るけど良い??卒業前の担任の先生の名前は??。』


『地理学のロクサーヌ先生です。スミマセン、確認取るのは止めて欲しいんですけど・・・。』


『心配しないで、確認するだけだから。』


『スイマセン、本当、スイマセン。好奇心で・・未だ並んだだけで何もしてません、見逃して下さい。』


賭け事は成人してからという万国共通のルールを俺はすっかり忘れていたのである。


俺の前途は多難だと、自覚した日になった。


(だけど、オネエサン15のガキに魔王討伐依頼する王様も、ソッチの方が酷くねぇ??。)

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