第3話 クラフトテーブル。
警戒する。辺りを見回し、禁獣が居ないか確認。
一面に広がる、枯れ草1本すら生えていない荒野。枯れ木と岩と、あとは砂くらいしかないな……。
敵は居ない……か? 多分俺が見える範囲では禁獣は居ないはずだ。
しかし、記憶にある知識によれば、地面を泳ぐヴァグと呼ばれる鮫のような禁獣がここら一帯に生息しているらしい。
俺が幼い頃……と言っても1年前くらいだが、集落にはぐれのヴァグがやってきたことがある。その時はズビが死にかけながらも殺してくれたが……禁獣のあの動きは恐ろしかった。
地面を泳ぐのだ、奴らは。俺が居た集落の民家はまともに地面に支柱を建てていない。だからヴァグが泳ぐだけで民家は崩れ落ちる。
俺が荒野に家を建てるとすれば、きちんと地面に支柱を立てなくてはいけなさそうだ。まぁそれもシステムを上手く使えて、尚且つ生き残ることができればの話だが。
「メニュー」
★ステータス
★インベントリ
★クラフトテーブル
ほう。手に持ったままの傷薬をインベントリに収入することを意識してみる。
シュンッ。
うわ、消えた。手に持った傷薬は瞬時に掻き消えた。多分インベントリに入ったはず。
ウィンドウからインベントリを開く。
★インベントリ
[傷薬-6]×1
おおー。ちゃんと入ってる……! 即座に取り出し、使ってみる。
とりあえず顔と足に塗って、余れば手先だな。塗り塗り、塗り塗り。
スーッと、ミントのような不思議な爽快感と共に薄く痛みが和らぐ。凄いぞこれ。いやまぁ痛いけど! 痛いけど凄い。
ゲームのような即効性はないが、現実の薬にしては破格の即効性だ。塗った瞬間から効き始めてる感じがする。品質がマイナス6でこれなら、もっといいのを作れば凄そうだな。
はっ、そうだった、楽しんでいる暇なんてないんだった。
「チュートリアル更新」
『チュートリアルの目標を更新します!』
お、できるじゃん。
黄色い矢印が新たに現れ、近場の枯れ木を指し示す。
そこに近寄って採取しようとするが……え? これどうやって木を取れっていうんですか。まさか、素手?
『木を取りましょう! 採取ポイントに到着! 採取しますか?』
木の周りに蒼い光のサークルが現れた。そういう感じね? オンラインゲームじゃん。
★YES/NO
YESに決まってんだろ。ウィンドウに浮かんだYESをタップする。
『採取のコツ+2、労働のコツ+2、自然感応+1、大地の恵み+2、開拓の才が発動します!』
なんかシナジーえぐくね? 採取でそんなPERK発動するんだ。
脳内に草を踏み潰すような音や、木を折るような音が流れる。時間にして5秒ほど経つと、
『採取完了!』
★採取リザルト
[木材]×23
[木の実]×3
[樹液]×8
[木の葉]×67
『貧者の瞳+2が発動します!』
★追加リザルト
[木材]×3
[木の実]×1
リザルト画面をタップすると、インベントリに格納されるようだ。
枯れ葉すら生えていない木から採取して何で木の葉が取れるんですかねぇ。あと木の実も付いてないしカラカラに乾いてて樹液もないんですよねぇこの木。
システムって最高だな。というか採取しても枯れ木が消えないぞ? どこから取ってんだこれ。
ピコン!
『チュートリアル! 石をとりましょう!』
黄色い矢印が馬鹿みたいに現れる。そこら中に石あるからな……。
小石を取ろうと近づくと、瞬時に掻き消えた。え? あー、小さいものなら自動採取的な? 採取スポットじゃなければ物は消えるんだな。
★インベントリ
[木材]×26
[木の実]×4
[樹液]×8
[木の葉]×67
[石材]×1
おおー、増えてる……至れり尽くせりじゃん。
そのまま小石に近付いて採取しまくり、大岩に近付くと採取画面が出てきた。
『大岩を採取しますか?』
★YES/NO
イエス、イエスイエスイエスイエス、イエスッ!!!
『採取のコツ+2、労働のコツ+2、自然感応+1、大地の恵み+2、開拓の才が発動します!』
今度はツルハシで金属を掘っている音が流れ始めた。10秒。ちょっと長いな。
あ、微妙に疲れた気がする。労働のコツ+2が起動するのは採取にスタミナを消費するからか。なるほど。
『採取完了!』
★採取リザルト
[石材]×12
[鉄鉱石]×4
[穢れの結晶]×5
『貧者の瞳+2が発動します!』
★追加リザルト
[石材]×3
[鉄鉱石]×1
[穢れの結晶]×1
なんかすごい物々しい名前のやつが居るな。インベントリを開いて穢れの結晶とやらを確認する。
『貧者の瞳+2が発動します!』
★穢れの結晶+18
今や、世に蔓延る穢れの結晶体。遍く命の毒となる。あまり、持ち歩かない方がいいだろう。
……矢を作って、矢先にこいつを括り付けてあのじじい共を撃てば……
『穢れの矢のレシピを思いつきました!』
『弓のレシピを思いつきました!』
『クラフトテーブルを開きます』
★穢れの矢
★必要な材料
矢?? 穢れの結晶×1
★弓
★必要な材料
木材×10 糸??
ほうほう。頑張れば作れなくもなさそうだ。
太陽の位置を確認する。まだ12時にもなっていない。まだ活動できるが……武器が欲しいな。禁獣相手にまともに戦えるかは正直微妙だが、対抗手段があるかないかで心理的ハードルはかなり変わる。
『石の槍のレシピを思いつきました!』
『石の剣のレシピを思いつきました!』
『石の斧のレシピを思いつきました!』
『石の槌のレシピを思いつきました!』
『石の戦斧のレシピを思いつきました!』
『石のツルハシのレシピを思いつきました!』
お、おお! なんか凄いぞ!
『クラフトテーブルを開きます』
★石の槍
★必要な材料
石材×10
『工作のコツ+2、自然感応+1、大地の恵み+2、浄化の才が発動します!』
★石の槍
★必要な材料
石材×5
他の石系のレシピを見ても石槍の材料と変わらないみたいだ。作っちゃうか。
『石の槍を作成します!』
とりあえず欲しいのは石斧とピッケルと槍だな。多分この手のシステムなら、採取する時に石斧とかツルハシ持ってたら補正が働くはず。
槍は……まぁ正直気休め。
『石の斧を作成します!』
『石のツルハシを作成します!』
物を作る時のギコギコとした音が聞こえたと思えば、続々と出来上がっていく。作り終わるの早いなぁ。
工作のコツとか地味に働いてそうだ。
インベントリから作った石斧を取り出す。
シュンッ。
虚空から突如現れる石斧。すげぇ! 流石にこれはファンタジーだな。
これを持って、とりあえず木材を集めまくろう。夜の荒野で何も備えがなかったらマジで死ぬしかないしな。
▽
というわけで集まった結果をどどん。
「インベントリ」
★インベントリ
[木材]×102
[木の実]×31
[樹液]×16
[木の葉]×351
[石材]×687
[鉄鉱石]×34
[穢れの結晶]×61
[???の抜け殻]×1
そこら中を走り回るだけで、石材が集まっていくこの快感、素晴らしい。効率厨の気が少しある俺にとってこの自動回収の機能はマジで神だった。
ちなみに最後に書いてある???の抜け殻は走り回ってたら入ってた。取り出して見てみたところ40cmくらいのデカさの薄皮だった。おそらく形状的にヴァグの抜け殻だろう。
荒野が少しだけ綺麗になった気がする。
『チュートリアル! 夜が近付いてきました! 簡易的な拠点を作りましょう!』
現在、大体昼の3時くらい。少し太陽が沈みかけてきた時間だ。
そう、この世界なんと、4時には既に闇夜になるのである。だから急ぐ必要があったんですね。ちなみに滅亡する前は普通に明るかったらしい。
ピコン!
『簡易拠点のレシピを思いつきました!』
『クラフトテーブルを開きます』
★簡易拠点
★必要な材料
木材×100 木の葉×200 石材×75
『工作のコツ+2、労働のコツ+2、自然感応+1 大地の恵み+2、浄化の才が発動します!』
★簡易拠点
★必要な材料
木材×75 木の葉×150 石材×55
作成!
『簡易拠点を作成します!』
20秒ほど掛かるらしい。作る内容が高度になっていくにつれ、時間が増えていくのかな。
できあがった簡易拠点をインベントリから選択すると、視界に青色の設置範囲が現れた。大体縦横5m、高さ3mくらいの範囲だ。
とりあえず設置してみよう。
設置すると強く念じると、設置範囲に突如、高く盛り上がった枯れ草が出現した。
おお? 草の山……? いや、これは……
枯れ草の山をぐるりと一周すると、微妙に中に入れそうな隙間が空いていた。お邪魔します。
おっと、急に地面が凹んでいるようだ。
中に広がっていたのは……何も見えません! バカ暗いぞこの中。何か灯りが必要だな。サンドボックス系ならたいまつとかか?
ピコン!
『松明のレシピを思いつきました!』
『クラフトテーブルを開きます』
★松明
★必要材料
木材×1 石炭×1
『工作のコツ+2、労働のコツ+2、自然感応+1 大地の恵み+2、浄化の才が発動します!』
★松明×5
★必要材料
木材×1
薄々思ってたけどPERKめっちゃ重要だなこれ。本来足りない素材すら無視して作れるのか。石炭なんてねぇしな。
とりま作成!
『松明×5を作成します!』
3秒程度で作り終えた。早速インベントリから松明を1つ取り出す。
ぼっ。
暗闇に包まれた枯れ草の中に、ゆらりと揺れる火が現れた。暖色系の光が簡易拠点の中を照らす。
九つの木が倒れ込むように中央で結ばれている。その下に石のキャンプファイヤーが置いてあった。この木に覆い被さるように枯れ葉があるってわけか。
地面が凹んでいる分、俺の想像していたよりもだいぶスペースがある。ジャンプもできるくらいには高さも充分。俺が小さいということもある。
とりあえずひと息つくために、俺は残りの松明4つを取り出し、家の中の四方に設置した。
文明の光だ。もうこの時点であの集落の文明レベルを越えているかのようにすら思えてきた。なんなら夜中に蹴り出されて、夜風に晒されながら寝ることもあったしな。
あぁ、思い返すとイライラしてきた、やめよ。
ゆっくりと土の地面に腰を下ろす。
「ふぅ……」
ひと息つく。地面は少し冷たくて座り心地は良くない。異世界イツキとしてはこんなの当然だが、現代世界のイツキとしてはしかめっ面にならざるを得ない。
生活環境の向上もしなくちゃなぁ。土の地面に
心做しか喉も痛くなってきたし、身体もだるい。
『警告! 瘴気による体調悪化が始まります!』
あー、マジ? どうすりゃいいんだ、これ。
とりあえずステータスでも見るか。
★名前 [イツキ]
★種族 [人霊]
★職業 [開拓者]
★レベル 0
★才能 [開拓の才][浄化の才][逃走の才]
★PERK
『コツ系』
[採取のコツ+2][労働のコツ+2][工作のコツ+1]
『行動系』
[開墾+2]
『体質系』
[腹持ち向上+1][秘められた才能+2][自然感応+1][大地の恵み+2][殺害適正+1][鉄の胃袋+2][苦痛耐性+3][貧者の瞳+2]
★BAD PERK [瘴気耐性-1][自然補正-1][人間恐怖症][不信]
★起動中システム [ドゥームダウン]
★待機中システム [耕作ファームランド]
BAD PERK欄に居ますね……[瘴気耐性-1]とかいう、あからさまに俺の今の体調の原因っぽいやつが。
でもどうしようもないよな。あの集落では禁獣をちょくちょく撃退してたから、あまり瘴気や穢れが溜まっていなかったけど……ここはあいにく禁獣の生息地。
たった数時間居るだけで俺は体調を崩すらしい。どないしよか、これ。
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