暗雲漂う

タケヒコとカヤが出会ってから数日後、奴国の王宮では、クニノミコトが側近たちを前に不敵な笑みを浮かべていた。


「海人族の巫女・カヤ... 彼女の持つ予知能力は、我が国の未来を左右する鍵となるだろう」


クニノミコトは、冷酷な光を宿した瞳で語った。その瞳は、権力への渇望と狂気を孕んでいた。


「カヤ様を我がものにするために、奴国一の勇士・タケヒコを利用するのですか?」


側近の1人、イクサが慎重な口調で尋ねた。


「ああ、タケヒコは海人族の血を引いている。カヤに惹かれているはずだ。奴国の未来のために、2人を利用するのはやむを得まい」


クニノミコトは、自らの欲望を正当化するように言った。


「しかし、タケヒコは、海虎のメンバーでもあります。警戒心を緩めることはないでしょう」


別の側近・カゲユキが慎重な意見を述べた。


「ふっ、奴国の王であるこの私を誰だと思っている? 海虎ごとき、一網打尽にしてくれるわ!」


クニノミコトは傲慢な笑みを浮かべた。その表情には、他者を見下し、支配しようとする欲望が露わになっていた。


「タケヒコとカヤを呼び寄せよ。そして、私の野望の妨げとなる者は、誰であろうと排除する...」


クニノミコトの言葉は、王宮の奥深くで静かに、しかし確かに反響した。暗雲が漂い始める予感を孕みながら...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る