第47話
47.
優は早速その夜、家族が寝静まった後に、居間で独りDVDを見ようとしていた。
九月に入ったものの依然蒸し暑く、優は白い半そでティシャツに黒い短パンをパジャマ代わりに来ていた。
真夜中に関わらず、優の頭は興奮で冴えまくっていた。
優がDVDプレーヤーをガチャガチャ操作していると、
「にゃ~ん」
とコーネがやってきた。
以前事故にあった時の後遺症で、わずかに右後ろ脚を引きずっている。
コーネはちらりと優を見ると、すぐに優が自分のために用意した牛乳のジョッキに向かった。
「あ、こら、ダメだって!」
慌ててコーネを抱き、優はDVDを見るべくセッティングした。
「なぁーん」
少し不服そうにコーネが鳴いた。
「ちょっと待ってろ」
そう言うと、コーネの皿を持ち、台所に向かった。
優はコーネを下ろすと、ほんの少しだけ牛乳を皿に入れ、コーネの前に出した。
「うにゃ~ん」
嬉しそうに一声鳴くと、コーネはペチャペチャ牛乳を飲み始めた。
優はそのすきに居間に戻ると、ソファに座り、リモコンでDVDを再生した。
(動画のメグちゃんも可愛い!)
オープニングのメンバー達が『わたしたち~、メンメンメンコイ、メンメンガールズです!』と決めポーズをしているところで、優はもう感動していた。
(動いてるメグちゃんを見たい時に見られるなんて、DVDってなんて素晴らしいんだ‼ ちょっと高かったけど、買って良かった~‼)
メニュー画面がでて、優はいきなり四番目の『君はナイト』のチャプターから見ることにした。音はギリギリ聞こえる位小さくした。
歌が始まると、牛乳を飲み終わったコーネがトトッとやって来て、優の膝の上に座った。
「コーネも見たいんか?」
優はコーネの背をなでながら言った。
メンバー達は、シークレットライブの『君はナイト』の時と同じ衣装、同じステージで写っていた。
歌が始まると、急にコーネがそわそわし始め、テレビ台に乗り、テレビの前を右に左に行ったり来たりした。
「な~おん、な~ん、な~おん、な~おん」
さびでメグミがアップで映されると、興奮しているのか急に大きな声で鳴きだした。
『きーみーはっナァ~ィトゥ わ~たしっのナァ~ィトゥ』
そうテレビの中で歌うメグミの顔に、コーネは頭をすりすりさせはじめた。
「なんだ、どうしんたんコーネ⁉」
優はコーネの意外な動きに戸惑った。
ドアがガチャリと開き、結衣が居間に入ってきた。
「コーネどうしたの~~?」
まだ半分寝ているのか、目はほとんど閉じられて、あくびをしている。
優に気付くと、
「お兄ちゃん‼ ……まさかエッチなテレビなんて見てないよね‼」
すでに怒り気味に言った。
「ち、違うって‼」
優は真っ赤になって言った。
「メンメンガールズのライブだよ‼」
「な~おん、な~おん、な~おん」
コーネは何かを訴えるように結衣に向かって鳴いた。
「どーちたのコーネ」
結衣はそう言うとコーネを抱き上げようとした。
しかしコーネはするりと結衣の腕を抜け、テレビのメグミにピッタリ寄り添い、
「な~おん、な~おん」
と結衣を見上げ、甘えるように鳴いた。
「ちょっと待って……」
結衣は顎に手を当て、コーネとメグミの顔を交互に見た。
「思い出した‼」
結衣はポンッと手を打った。
「このおねーさん、コーネ拾った時の人だよ‼
お兄ちゃんが私のこと、このおねーさんに頼んだんだよ! コーネ助ける時‼」
「え……」
優はその時のことを思い出そうとした。
(その時あった女の子……?)
「あ、そうか!」
優は一人の女の子の姿を、急にカメラのピントが合うようにはっきりと思い出した。
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