第9話

 子供の頃は無理だったが、大人になると大丈夫になることがあるだろう。

 それは逆も然り、歳を重ねるごとに無理になることもある。


 そう、それがジェットコースターってわけ。


「あばばばばば」


 風が、風圧が…!


「ふぅ〜!!」


 隣にいる玲はすごく楽しんでる。

 それに比べ俺は…


 やばい、酔う……


 もうそろそろクライマックスに入ろうとしている。

 やっと、終わる…


「ゆー君、これで終わりだと思った…?」

「え…?」


 ど、どう言う意——


 !?!?


 レールが枝分かれしている…

 つまり……


「もう一周〜!?!?」


 ♦︎


「ゼェーハァー……」


 酷い目に遭った…

 何だ、あの引っ掛けは…


「楽しかったね!」

「今の俺が楽しそうに見えるか…?」

「え〜、でも大丈夫って言ったのゆー君じゃん」


 スー……


「お化け屋敷に行こうか!」

「あ、逃げた!てか、お化け屋敷は最後でいいんじゃ……」


 くくく、魂胆は見えてるぞ。


 お化け屋敷を最後にすれば「もう遅い時間だから早く帰らないと!」って言って逃げるのだろう?


 逃がさねぇよ!


「ゆ、ゆー君…早まったらだ、ダメだよ…?」

「早まってないさ。さぁ、行こう…?」


 きっと、玲から見た俺は魔王よりも魔王していることだろう。


 くくく…あっはっはっは!

 楽しみになって来たな!


「ゆー君、待って〜!!!」


 玲の悲鳴がパーク内に響いたのであった。


 ♦︎


 お化け屋敷の前に着いた。


 ふむ、外見は皆が想像するようなお化け屋敷まんまである。

 だが、中から悲鳴が聞こえる。


「期待できるな!」

「何で僕は行こうって言ったんだろう……」


 さっきまでのテンションがまるで嘘のようになってしまった玲。


 可哀想になって来た。

 しかし、ここまで来たからには行くしかない!


「ゆ、ゆー君…まだ引き返せるよ…?」


 上目遣いで訴えかけてくる玲。


 思わず甘やかしてしまいそうになったが、仕方がない。

 俺の足はもう止まることを知らないのだ!


「玲、世の中何でも上手くは行かないんだ。だから、頑張れ⭐︎」

「鬼だ〜!ゆー君が鬼に見えるよ〜!」


 失礼な。

 この完璧で究極な遠坂悠斗様が鬼な訳ないだろう。


 あ、順番が来たようだ。

 スタッフさんに軽く説明をもらっていざ参る!!


「う、うぅ……」


 まるで借りてきた猫のようになってしまった玲。


 なるほど。

 古からある可哀想は可愛いと言う言葉、今理解した気がした。


 もしかしたら俺はSなのかも知れない。


『グギャアアアッ!!』

「ぉ………」


 いきなり、ゾンビっぽい化け物が飛び出して来た。


「◎△$♪×¥●&%#?!」

「あ、玲!?」


 玲が声にならない悲鳴を出して、走って行ってしまった。


『「……え?」』


 思わずゾンビ役の人と声がかぶった。



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