第10話
「どうしよう…とりあえず追いかけよう!あ、失礼します」
ゾンビ役の人が呆然と立ち尽くしているので、一声だけかけて動き出した。
外に出てくれていたらいいんだけど、中にいる場合があるからな〜
とにかく、しらみつぶしで探すか。
『g……』
「玲……えっと、茶髪でボブヘアの女の子見ませんでした?」
歩いていると、お化けさんが出て来たので聞いてみることにした。
『……』
無言で、奥の方に指を指した。
いや、無言怖いって。
役としてやってるんだろうけど。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言い、奥の方に歩き出した。
それから、奥に行く途中に何人かのお化け役の人と出会った。
今さらだけど、お化け役の人って言うの雰囲気ぶち壊してるよな?
まぁ、いっか。
「ん〜……どこ行ったんだ?」
奥にいるということは、まだ中にいるということだ。
「—君」
「ん?」
「ゆー君」
声が聞こえたと思ったら、俺の名前を呼んでいる。
「玲か?」
呼びかけたのだが、返事がない。
「すみません」
「!?」
背後からいきなり声が聞こえて思わず飛び跳ねてしまった。
「あ、びっくりさせましたね」
「な、何のようですか…?」
恐る恐る尋ねると。
「彼女さんが外に出て来てますよ」
「え?そうなんですか」
何だ、外に出てたのか。
「すみません。わざわざ伝えに来て頂いて…」
「いえいえ、なんてことありませんよ」
さて、玲を迎えに行こう。
そして、謝ろうと決意した。
「…あれ?」
じゃあ、さっき聞いたゆー君って声は…?
それに、あのお化け役の人は奥に行ったって……
「どうしました?」
「…いえ、何でもありません」
何かの間違いか?
まぁ、考えても仕方がないか。
♦︎
「ゆー君!!!!」
「うぉ!?」
お化け屋敷から出て早々に玲が飛び込んできた。
「よがったよ〜!!死んじゃったかと……」
「大袈裟すぎだろ」
お化け屋敷で死ぬなんて前代未聞だろ。
「それにしても、悪かったな玲。無理に連れて行って」
「悪いのは僕だよ……せっかくゆー君が楽しみにしてたのに、台無しにしちゃって……」
いやと声を出そうと思ったがこのままじゃ、埒が明かない。
「なら、お互い様ってことで」
全面的に俺が悪いのは前提としてな。
「うん…わかった」
玲もこのままじゃ平行線をたどると分かったのか納得してくれたようだ。
「時間的にもう帰る時間かな」
もうそんな時間か。
なんやかんやでいろいろしたからな。
でも、このまま帰るのも違うよな。
「なぁ、玲」
「どうしたの?」
「最後に観覧車に乗らないか?」
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