爆弾発言、投下!(3)
「……ふーん。二人は両想いなんだ?」
春川さんが視界からいなくなった後、これまでずっと黙っていた優夜くんが初めて声を上げた。
首を動かして隣を見れば、興味深そうにこちらを見上げている優夜くんと視線がぶつかった。
「あ。うん。実は。そうなんだ。といっても、今朝、両想いだったって知ったばっかりなんだけど。ね、千聖くん」
なんだか気恥ずかしくて、私は千聖くんに会話のバトンをパスした。
「まあな」
千聖くんも照れているらしく、頭を掻いている。
「そう。良かったよ、やっと二人がくっついてくれて。ずーっとこのままお兄ちゃんが告白しないつもりなら、ぼくが愛理ちゃんに告白しちゃおうかなって思ってたもん」
「は?」
「え?」
私と千聖くんはぴたりと動きを止めて、爆弾発言をした優夜くんを見つめた。
「何、その顔。別に意外なことじゃないでしょ? 愛理ちゃんはいつもぼくのために一生懸命になってくれる。好きになるのは自然なことだと思うけど?」
優夜くんは照れもせず、平然とそう言った。
え? え?
優夜くんが私のことを好き?
いや、まさか、そんなわけ――グルグルと思考が回って、頭の中は真っ白。
「というわけで、お兄ちゃん、頑張ってね? ぼくに愛理ちゃんを取られないように」
私が驚いて固まっている間に、優夜くんは千聖くんを見た。
どこか、悪戯っぽい、小悪魔みたいな顔で。
「と、取られるって――上等だ! 実の弟だろうと、愛理は渡さないからな!!」
危機感を覚えたらしく、千聖くんは私を抱きしめた。
予想外の行動に心拍数が跳ね上がり、顔の温度が急上昇していく。
「その意気その意気。隙を見せたり、愛理ちゃんを泣かせたりしたらダメだよ? 本当にぼくが取っちゃうから」
優夜くんは笑っている。
どこまで本気かわからない笑顔だった。
「そうそう、一応言っとくけど。いくら両想いだからって、家でいちゃつくのは止めてね。せっかくお母さんたちが仲良く暮らしてるのに、お兄ちゃんたちのせいで二人が気まずくなって別れた、なんてことになったら恨むよ?」
「わかってるよ! それくらいわきまえてる!」
「どうかなあ? 白昼堂々、こんな人通りの多い通学路で愛理ちゃんを抱きしめてるようじゃ、言葉に説得力がないよ」
優夜くんに諭されて、千聖くんは私から手を離した。
解放されたものの、私の心臓はまだ大騒ぎしている。
「じゃあ行こうか、愛理ちゃん。遅刻しちゃうし」
優夜くんは指で眼鏡を押し上げて笑い、まるでエスコートするように私の左手を掴んで歩き出した。
「おい! なんで手を繋ぐんだよ!?」
「いいじゃない、甘えても。年下の特権だよ。ねえ愛理ちゃん、嫌じゃないよね? これまで何回もぼくの頭を撫でてくれたし、抱きしめてくれたことだってあるもんねー」
優夜くんは私の腕にぴったりと寄り添い、頭をくっつけた。
そして、千聖くんを見てふふんと笑う。得意げに、勝ち誇るかのように。
「なんだそれ!? たった一歳しか違わないくせにそんな特権あるか、愛理にくっつくな! 愛理が好きなのはおれなんだ!!」
千聖くんが怒声を上げ、左手で私の右手を掴む。
「なあ、愛理はおれのことが好きなんだよな!?」
「ぼくのことだって好きだよねえ、愛理ちゃん?」
左右から、誰もが羨む美形兄弟が言ってくる。
「ええと……」
大好きな二人から同時に見つめられて、私は困ってしまった。
どうしよう。
千聖くんは異性として好きだし、優夜くんは幼馴染として好き。
つまり、どっちも好き、って言ったら……千聖くんは怒るかな?
《END.》
キミと私と未来のユメ 星名柚花 @yuzuriha
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