第42話 スタンピード
「発射っ!」
発射の号令を合図に火球は引き絞られた矢のように変形し撃ちだされる。
光り輝くその姿は正に一条の流星だった。
ズドンともチュドンとも聞こえる。砲撃御音を立てて着弾した魔術は爆発し、今まさに襲い掛かろうとするモンスターを吹き飛ばしす。
ズドーン。ズドーン。ズドーン。ズドーン。ズドーン。
まるで獣のような耳を
例え直撃はしなくとも爆発音に慣れていないモンスターは音にビビり足が鈍る。
足が鈍れば第二射、第三射はより多くの敵に直撃しやすくなる。
しかも大砲による砲撃とことなり、砲身が熱くなりすぎて撃てなくなるなんてリスクはない。
装填できるだけの魔力さえあれば撃ち続けられるのだ。
第一射の発射後、間髪入れずに射撃したことで残数一発に減った『
【ファイアーボール】の砲撃により巻き上げられた砂塵が、目視による射撃タイミングの確認を難しくする。
しかし魔術師や優れた剣士であれば、目で見る以外にもモンスターを感知する方法はある。
【魔力感知】や気配を感じると言う訳だ。
「く」の字の陣形になって突撃してくるモンスターは
今横を奔っている仲間に【ファイアーボール】が着弾してザクロのように弾けようとも、前に進まなければ後ろから走ってくるモンスター
だからこの
進んでも殺され進まなくても殺される。
まさにこの世の地獄のような光景だ。
「発射」
昨日から続く魔力消費が祟ってかもう魔力がなく次弾を装填する余力はない。
しかし今『
賭けにはなるが今この場で今まで習ったことを組み合わせ事態を乗り切るしかない。
靴底越しに霊脈を感じるため瞳を瞑り深層へ意識を向ける。
天の川のような眩いいろとりどりの光の粒子がまるで、大河のように流れているのを感じる。
霊脈の支流の上に立っているのを感じる。
魔力を汲み上げるが、本来自分の魔力ではないので物凄く扱いにくい。
確かにこのままだと術に変換するのは難しそうだ。
しかしアイナリーゼのように、自分の魔力を混ぜることで遥かに扱いやすくなる。
燃やす。
燃やす。
腹で変換・生成した魔力を
ボウっと音を立てて燃え盛る炎のようなモノが心臓で揺らめくのを感じる。
「成功だ……」
俺は拳を握りしめると「装填、発射」と唱えた。
ズドォーン。ズドォーン。ズドォーン。ズドォーン。
悲鳴を上げモンスターは吹き飛ぶ。
中には四肢が吹き飛ぶモンスターもいるが素材として使う分は問題ない。
そんなセンチメンタルな感傷は前世でやりつくした。
まるで世界大戦を戦争映画の
敵の塹壕に向かって走ってくる歩兵を、
無論、
自身が起こした惨状にたいして、まるで映像作品を見ている気にさえなっていた。
それは精神の自己防衛とでも表現するべき機能なのだが、戦場の空気に当てられた俺にはその考えに至る事は出来ずにいた。
「第一ステージ突破と言ったところだ。多分数は十分に減ったし、これだけ攻撃魔術を放ったんだ。生きてるモンスターも数十程度だろう」
【ファイアーボール】が巻き上げた砂と煙で視界は不良。
このまま闇雲に魔術を放ったところで効果は薄い。
それならば【身体強化】の魔術を使って自分で仕留めたほうが手っ取り早い。
【アイテムボックス】から愛刀『朧月夜』を取り出すとまずはすれ違いざまに抜きで一太刀、次の敵は袈裟斬りと攻撃を浴びせていく……
近距離は斬撃で、遠距離は魔術で対応し着実に数を減らす。
小一時間剣を振るうとそこは血の海だった。
魔術で刀身に付着した血糊を軽く落とすと【ヒール】をかける。
面倒なメンテナンスは今の俺には必要ない。
「この死体の山どうする?」
そのまま放っておけば病原菌の温床になりかねない。
加えてハエや大型の腐肉漁りが増え生態系が崩れかねないものの、コッロス公爵騎士団には危機感を募らせる必要がある。
先日のサラマンダー騒動で十分だと言われればそれまでだが、事実サラマンダー騒動の原因は『
「……さてどうしたものか……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます