第13話 母子(おやこ)水入らず

――――――通話中。


かける、最近ママと飯食った?』

『しばらく食べてないかも。』

『近々3人で飯行かね?…てか俺が知らないうちに喧嘩してたりしねーだろーな。』

『してない。』

『お前もママ好きだもんな。』

『うん。好き。』


翔は僕の二つ下。

自分にとっても可愛い弟だったりする。


『やっぱ近々飯行こう。』

『うん。いいよ。』




―――――――――数日後の夜。

「おつかれー」

「おつかれー。」


先に来ていたのはかける


「ママ、もう少ししたら来るよ」と翔。

「俺の方が会ってるかもな」

「そうなの?」

「うん。羨ましいだろ。」

「うん。ちょっと。」

「俺からしたらお前の方が羨ましいよ。」

「なんで?」

「だってさ…物理的にも真里亜の子じゃん。」

「まぁね。真里亜から生まれたのは確か。」


「……耳、どう?」


僕は翔の耳を見て気になって聞いた。


「うーん。日によるかな。でも前よりかは聞こえづらくなってる。左はもうだめかも。右はちゃんと聞こえてるよ。」

「そか…。」


「なんで笑ってんの?」


僕は翔を見てにまにましていた。


「いや、翔の耳かわいいなって。」

「それ、昔から言ってるよね。」

「補聴器フェチだから。」

「相変わらず意味わかんない。」

「俺、変態だから。」

「本当ね。」


翔は僕を覚めた目で見る。


「てかさ。」

「なに。」

「お前なんでそんな歳食っても可愛いの。」

「俺、男興味無いよ。」

「大丈夫。翔ならいける。」

「他の人いけても稜太は無理。」

「何それ。なんか傷付くわー。」


翔は可愛い笑顔で笑う。


「それ。その顔。本当に可愛い。」

「言いたいこと言い過ぎ。」

「良いじゃん。減るもんじゃない。」

「減るの。」

「減らね。」



「……」

「……」


僕らは手の感触で上を見ると、

真里亜が僕らの頭の上に手を置いていた。



『何の話してたの?』

「翔が可愛いって話。」

「俺ならとか言うんだよ。気持ち悪い。」

「翔なんて、俺の事、ほかのやつならいいけど俺は嫌だって言うんだよ!ねぇ!真里亜!」


僕らが高速で手話で話すと


「相変わらず仲がいいこと。」

と真里亜が微笑む。


「仲いいの?」

「よくなかったら『可愛い』だ『可愛くない』だで喧嘩しないでしょ。」

「だって翔、可愛いんだもん。」

「そうだよ。翔は可愛いんだよ。あんたもね。」


「真里亜、俺の横座って。」

「真里亜は俺の横。」


「はいはい。相変わらずあんた達揃うとモテて困るわ。」


「翔、ジャンケンしよ!」

「しない!だって俺の母さんなんだぞ!」

「俺の真里亜だもん。」


「分かったから。…ていうか最近、稜太と居る事多いでしょ?だから今日は翔のママやるから。いい?平等でしょ?私は一人しかいないの。」


翔は勝ち誇った顔をしている。


「…いいよ。」


「ほら、選ぶよ。お腹減った。」



――――――――――――。


「翔、これ。」

「要らないよ!ダメダメ。俺がママに怒られる。」

「じゃあお前が持っとけ。」

「いいって!ダメだって。」


「俺、最近お前の盗ってたから。…ごめんな。」

「別にいいよ。俺も忙しくて行けてなかったし。」

「とりあえずいいからおさめといて。」

「わかった。ありがとね。」

「真里亜帰ってくる前に行くわ。」

「え?帰るの?」

「親子水入らず。楽しんで。」

「…ありがとう。」


「じゃあな。真里亜の事頼んだ。しっかり息子やれよ。無理しなくていいから。ちゃんと甘えてやれ。俺の分まで。」


「え…?」





―――――――――――――――。


2人と会うのはこれを最後にした。

スマホからも消した。

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