【幕間】
【澪さん、今日のオムライスはどうでした?】
配信の最中、このコメントに私は釘付けになった。
ずっと配信の最初にスタンプを送ってくれていた子が
でも、私の正体を明かすことができない。なぜなら、私は今誹謗中傷と闘っている。これまでSNSの見えないところで誹謗中傷をするために作られたとみられるアカウントからの攻撃が続いていた。それは配信を妨害する旨のもの、身の危険を伺わせる旨のもの多岐に及ぶ。よく「大手配信者なら普通でしょ」と言われることがある。
でも、配信者も人間だから心無い言葉を浴びせられると精神的に苦痛を感じてしまう。「それくらいスルーしろよ」と言われたりもする。
でも、見えてしまったものを記憶から消すことはできない。
それくらい我慢するのが普通?それは誰が決めた定義なのか?
そして、その影響はついに配信中にも起きてしまっていた。
突然ゲーム配信を始めた私が悪いのだろうか?もちろん、今始めたばかりだから上手いわけではない。では、強くなってからプレイしたら今度は「初めてではないだろう」と言われるのだろう。
そう感じてしまうくらいに精神的にダメージを受け始めていた。
でも、そんな苦痛を忘れるほどにこの一言は私の心を救ってくれた。
『えへへ、美味しかった!』
とても、とても美味しかった。
私は配信を終え、冷蔵庫に冷たい飲み物を取りにいく。
冷蔵庫を開けると、今日の記憶が蘇る。
『澪さんはリビングで待っててください。』
冷蔵庫に残されているケチャップを見る。
陽菜乃ちゃんが綺麗に洗ってくれた調理器具、お皿へと視線を向ける。
涙が自然と溢れていた。
私、陽菜乃ちゃんに心を救われていたんだ。そう気付くと同時に決心が芽生える。
陽菜乃ちゃんにだけは、被害が及ばないようにしないといけない。
陽菜乃ちゃんは私が守る。
きっと陽菜乃ちゃんも澪の正体に勘づいていることだろう。配信ではボイスチェンジャーでちょっと音質を変えている。それでも、きっと陽菜乃ちゃんなら。
冷蔵庫の扉を閉めリビングへと戻る。
とりあえず陽菜乃ちゃんからの
SNSを開くと、誹謗中傷と逆に普段から応援してくれる視聴者さんからの励ましのメッセージが入り混じる。
どうして文字は、中和という効果を生んでくれないのだろう。
私はすぐにスマホの画面を消し、間接照明だけの薄暗い部屋からベランダへと視線を向ける。
「陽菜乃ちゃんに会いたいな。」
ふとそんな独り言をつぶやいていた。
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