やりたいことを箇条書きに

子どもの頃、上手に嘘をつく方法をママが教えてくれた、本当の話に嘘を混ぜ物語にすること、嘘の物語は他の友達にも話すこと、繰り返し物語を語ること、時間が過ぎ去っても時々物語を語ること、何年あとでも、いつかまた話す時に同じ嘘の物語を語ること、これが嘘をつく方法


イブキは遅番だが、17時ぐらいになるみたい、心も体もリフレッシュしたのだから、今日こそ白黒はっきりさせてやる、約束は守ってもらいたいけど、イブキの言い分もわかる、けど、このお店を辞めさせて、一緒になるんだ


ありがとうございましたーをお見送りをしているところにイブキを見つけた、どうやら前のお客さんを見送っているみたいだが、その子は他のメンズを無視してイブキだけを見て、イブキだけに話しかけている


今日遅番じゃなかったの?5時ぐらいって言ってたじゃん

あー、急遽、オーナーに呼ばれてちょっと早めに出勤したんだよ、そんなことよりお店に入ろ、アイリは覚えてる?今日はなんの日か?

今日?何かあったっけ?

アイリと知り合ったのがちょうど3ヶ月前、だから2人の6ヶ月記念なんだよ、ぼくほんと嬉しくて


微笑むイブキの顔をみていると、2人でいつも笑顔で生活してることが想像できる、これからはイブキと2人で生きていく、イブキを助けてあげないと、なのにさっきの女は何?あとからイブキと仲良くしようなんて、もうイブキはわたしというパートナーがいるのだから


はい、おしぼり、最初はスパークリングではじめない?

いいよ

ポンパドール、プリーズ!


大声でオーダーされる派手な演出だ

わたしがイブキを支えてきた、月間Vも取らせたし、売り上げが足りない時は、わたしが助けた、この6ヶ月でイブキは変わった、最初の出会いはミツキと一緒に入ったメンコンに写真指名を待つ間、着いたのがイブキだ、誰よりも必死な感じでわたしたちを褒め、しつこく連絡先を聞いてくるからインスタの裏アカを教えた、すぐにメッセージがきて、会いに来てくれた、駅まで送ってくれてハグをした、会いたいなというメッセージが届き、一度ならとお店に行き指名した、とても喜んでくれた笑顔をまた見たいと思いイブキのお願いを聞いてきた


6か月のセレブレーションに乾杯ィーー!こうして乾杯できることが本当に嬉しいよ

わたしも嬉しいよ

この日を2人だけの思い出にしたいな、だから今夜は忘れられない日にしない?ドンペリも良いでしょ?


前からイブキはドンペリを開けたいと言っていた、今日は記念日だし、イブキが望むなら、人生はお金じゃない、どれだけわたしが満たされるか、どれだけわたしが生きてて良かったと思うかだ、今のわたしは幸せだ、イブキが喜び、わたしと出会ったからイブキが輝き、わたしを喜ばせてくれる、無償の愛情をイブキに捧げ幸せになる、これで良いんだ


今夜、イブキはわたしの部屋にくる、他の女ではなく、わたしを選んでくれた、わたしたちの部屋でイブキと結ばれる、深く愛し合い、求めあい、ずっと一緒に、イブキはわたしが変えた、わたしが育てた、わたしのイブキ、優しくしてくれて、求めてくれて、楽しませてくれて、輝くイブキの横顔を見ながら、今夜のことを考えた、イブキに抱かれる


どうしたの?飲まないの?

え、飲んでいるよ、イブキ、今日はペース早くない?

そう?いつもこのぐらいだけど、今夜は2人で酔っちゃおうよ

うん、そうだね、今夜は酔っちゃお


鏡に映った顔は赤くほてり、紅が薄くなっている、また落ちてしまうと分かっていても、少しでもキレイなわたしを見て欲しいとリップを塗る、今夜はあまり飲まないようにしないと夜のこともあるし、ハタチそこそこの女の子が入ってきた、似合わないブランドバックをドンと流しにおき、おもむろにリップを出す、顔面を鏡に突き出し、淡い紅色を重ねる、イブキはあなたの男じゃないよと、目を合わさずにつぶやいた、何こいつ、あなたの男でもないけどねと言い返し、その場を出た


イブキ、あの白いパーカーのだれ?さっき話かけられたんだけど

え、だれ?

あのテーブルの白いパーカーの子!

あー、あの子ね、この前新規できて2、3回きた子だよ、あの子は前のお店でも問題起こしてて、うちもどうするか様子をみてるんだよ

へーそうなんだ

何心配な顔してるんだよ、そうだ!前入金してたあれを使ってタワーしようよ、2人の最高の思い出をタワーで飾ろうよ

そうだね


目の前に作られたグラスのタワー、これで一緒にいられる、ずっとイブキと一緒だ


イブキ、今夜はずっと一緒だね

あー、一緒だよ

うちに来る?

行くよ

ありがと、朝起きたらご飯作るね

朝まではいられないよ

え?どういうこと?

2時間ぐらいかな?

ちょっと待って、シャンパン入れて、タワーやって、今夜は2時間しかいられないの?

おれだって一緒にいたいよ、けど仕事があるから戻らないといけないし、まだまだ働かないと

今夜じゃなくても良いじゃん


何を言っているの?わたしがイブキをここまで育て、有名にしたのに、2時間?という限られた時間を言葉にされたことが悔しかった、パッとしないイブキを輝かせるため、喜ばせるため、無理を承知でお願いを聞いて、笑顔にさせ、一緒に暮らす約束もした、一緒に暮らすための準備もした、お店だって辞めるって言ってくれたし、朝まで愛し合ったことも


あ、ごめん、指名が入ったからちょっと行ってくるね、こんな簡単な言葉で白いパーカーの女のテーブルに座り笑顔で話し始める、ちらっとこちらを見た白いパーカーの女は一瞬笑みを浮かべた


いつになったらイブキは帰ってくるの?こっちはシャンパンを入れて、タワーも入れてるんだけど、ヘルプが半笑いながら答える、もう少しだと思うので、頭の中で何かが途切れた、そぅ、もういい、イブキは切るから、ドンペリ持ち上げ、逆さまにして空にした、鞄を持ち、タワーの中央を強く叩き、全てを終わらせた、崩れ落ちるタワー、激しいガラスの割れる音と主に、集まる視線、イブキと白いパーカーの女もこっちを凝視する、一直線に白いパーカーの女の目の前に立ち、イブキはあげる、もういらない、外に出ると、いつもと変わらない歌舞伎町の夜が始まっていた


わたしが何をしたのか、よく覚えていない、お店から飛び出した後とにかく歩いた、行きたい所があるわけではない、少しでも遠くに行きたかった、わたし何をしているのだろう、どうすれば良いのだろう、イブキは怒っているのか?もう会えないのかな?


神社の階段に座り込み膝におでこをあて、涙をこぼした。涙の雫が冷たいコンクリートにあたり、ピシャリとなる、聴覚が研ぎ澄まされ、涙の音を敏感に聞き取ることができる


気持ちが落ち着いてきたころ、ガラスが割れる音がした、わたしタワーを壊したんだ、もう出禁だろうな、けどイブキには謝りたい、でもどうすれば良いか、ぜんぜんわからない、今日は考えるのをやめよう、悲しむこともやめよう、イブキのことも、これからのことも、なにもかも考えるのはやめよう


自宅に帰りシャワー浴び、メイクをおとし、疲れ果てた鏡の鏡に映った顔はすでに深みに沈んだ悪役を思わせる闇を演じている、クローゼットから眠り薬を取り出し、水と共に飲み込んだ


ベッドに潜り込み、体を丸め、眠りについた、もう考えることもない、何もかも終わらせて、忘れること、深呼吸をして、心を落ち着かせ、抱き枕を強く抱えた、また涙が溢れ出し、めちゃくちゃにして、めちゃくちゃにされたい


あそこを枕に強くおしつける、上下に少し、反応する、じわぁっとするのが分かる、もう少し上下に、熱くなるあそこに手忘れると、これまでにないぐらい慣れている、たらーっと雫が流れ落ちるのが分かる、前にイブキにされたように、大きく足を開き、右手であそこを触れてみる、すごく慣れているのが分かる、イブキはクリを気持ちよくしてくれながら、胸を愛撫してくれた、徐々に下半身に頭を近づけ、一緒にお酒を飲んだその口で、わたしのあそこを


イブキにはいろいろさせられた、四つん這いになり、あそこをぐちゅぐちゅにされ、イッてもイッても止めてくれない、わたしのベッドをキラキラで湿らせた、バイブも止めてくれない、なんども体をビクンッとさせてもずっとバイブを押し付ける、タバコを買ってこいとバイブを入れたままコンビニに行った、手を引っ張られテラスにも行った、ウィーンという吸引音で強引にイカされた、ロープで縛られ手が使えないのみ咥え喉の奥まで入れてきた


イブキの置いていったバイブを手にしてスイッチを入れた、ブーーーンという音を聞いただけで高まる、熱くなる、欲しくなる、お腹から少しずつ当て、肌を伝わる振動が下にも伝わる、当てた瞬間、ンクッ、声が出る、腹筋が硬直し、下もきゅっと閉まる、バイブを当てる、上に下に、全身をめぐる血液はドクンドクンと流れ、息を荒らだてる、ハァハァ、ウッ、ビクンッビクンッと全身でイく、イブキならやめない、もっともっとバイブを押し付け、全身で受け止める、ジュジュジュュュー、シーツが濡れるのが分かる、止まらない、もう止まらない、永遠に流れでる液体を足をつたって流れ落ちる、そのまま眠りについた


イブキのシャツ、パンツ、歯ブラシ、タオル全てをゴミ袋に詰め込み強く結んだ、バイブは燃えるゴミでよいか悩んだが紙に丸めて捨てた、何もかも捨てた、スマホのメッセージも読み返すことなくブラックし、削除した、当分、新宿にはいけないだろう、引っ越しもした方が良いかもしれない


スポーツブラをして、ショーツを履き、ランニング用のキャップを深くかぶり、外に出た、嫌味なほど晴れた朝に、犬を散歩している隣の老夫婦と目が合い挨拶をした


ランニングは何かと考える、昨夜の焦りはなんだったんだろう?なぜそこまでイブキにのめり込んだのだろう?冷静になったわたしはいま前を向いて走っている、走る先は目標だが走った後は過去に過ぎない、動く体があるのだから前に進もう









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