(お金のかかる宣伝)無料配布物を作って配布する その2

 宣伝は、その商品を利用してくれそうな層がたくさんいると想定される場所にいる、なるべく多くの人の目に触れてなんぼです。

 電車のつり革広告、ビルの看板、TVCM、いろいろありますが、事前に広告を出す場所を事前にリサーチし、自分の商品を求めてくれそうな世代の好きそうなデザインの広告を打ち出し、お金をかけて広告します。


孫子の兵法であるじゃないですか

「彼を知りおのれを知れば百戦あやうからず」

っていうの。

 買ってくれそうな相手のことを知って、自分の商品の特性を知って、なるべく宣伝が無駄金にならないように努力しているわけです。

 でも鳴かず飛ばずの広告なんか山ほどある。


 我々の作る無料配布も同じです。

 私は吸血鬼小説(あまりホラー味のない)を書いたり、吸血鬼映画の紹介本を書いているのですが、世の中、ファンタジー小説には微塵も興味のない人もいらっしゃるわけです。

 私は割合にいろんなジャンルの本を読みますが、あまり自分から率先しては読まないジャンルとして恋愛小説があります。

 もうこの歳になるとね、ホルモンに導かれて「どんな困難でも乗り越えます!」と頑張る人々の姿は眩しすぎてつらいのじゃよ……(よぼよぼ)


 人間、興味の方向性といいますか、向き不向きは確実にあります。


 でもね、文学フリマの会場は、そのあたりのマッチングは、わりと済んでいる場所なんですよ!

 ・文章を読む人が集っている。

 ・だいたいジャンルわけしてあるので、通路を横切る人は自分の書く作品に興味を持ってくれる可能性が高め。

 ・そもそも同人誌なんていう海の物とも山の物ともつかないものに興味を持って、気に入れば身銭を切って買おうという有徳の士が集合している。

 つまり、ある程度「需要層リサーチ済み」の場所なのです。どこで広告打つより、文学フリマで宣伝した方が見込みがある。

 実際、ブースで配ったA4の無料配布の紙(自分の本の紹介レビュー)を、休憩用の椅子で読まれて、その日のうちに購入にいらっしゃった方もいらっしゃいます。


 と、いうことで文学フリマで無料配布を配るわけですが、見込みがあると言っても、もともとの成功率が高くない。言うなれば、駅前でチラシ配ったら、1万枚播いて1人、興味を持ってくれるかどうかなんだとしたら、文学フリマで100枚チラシ配ったら1人興味を持つ、程度にはUPしている状態でしょうか。効果は百倍ですが、それでも百発百中にはほど遠い。

 やはりなるべくたくさんの無料配布を配る必要があります。


【有償頒布本を買って貰うまでの導線を思い描く】


 まず成すべきはこれです。

 私の作品の特徴は、とにもかくにも『吸血鬼もの』です。

 ただし、ジャンルはいろいろ。恋愛物もありますし、歴史物っぽく仕立てたものもあります。異世界ものもあります。

 なので『吸血鬼物ならなんでも読む』層に訴えねばならない。

 でも、「吸血鬼小説が好き」ったって、実際は恋愛物が好き、ホラーが好き、異世界転生がいい……そういうくくりはありがちです。

 デザインが苦手なのもあってか、A4で自薦レビューチラシを作っても、どうも手応えが感じられない。

 私の作風は冒頭の何千字かで、読者をがっちり釘付けするタイプではないので、抜き書きも効果が薄い。

 何年か試行錯誤し、結果をさまざまに検討した結果、私は『読み切り連作長編小説のコピー冊子』を作ることにしました。

 まずは自分の作風を知ってもらいつつ、イベントごとに「バイロン本社」に立ち寄って貰う動機をつくろう。

 何度も来訪するうちに、有償本にも興味が湧くのではないか?


 それで書いたのが、

『吸血鬼氏の家政婦さん』

というやつです。

 マンションの大規模修繕の一時金が払えなくて近所の家政婦バイト(夜間)に応募した「私」。実はそのお宅のご当主は不動産賃貸業を営む吸血鬼氏だった!

 大金持ちで美形だけど新聞読むだけでやる気がない。バツイチでふたりの子持ちのお宅に家政婦として通うことになった「私」の運命やいかに。

 という話です。キャッチコピーとして「恋愛要素0%保証」を打ち出します。

 なるべくたくさんの方に訴求する選択として、ゆるふわギャグ・現代物にしました。スキマ時間に「軽く読める」話です。

 知識だけはやたらとある吸血鬼の蘊蓄ネタと、労働基準法ネタをちりばめた話で、5話完結、半年に1話くらいのペースで書き、最終的に1話目で800部くらい作りました。手製本コピー冊子でですよ? それが5話分(後半は配布期間が短かったのですこし少なめでしたが)。

 疲れました……(次からは無配はオフセット印刷にしようと決意しました)


 ・長編とはいえ、連作で読み切りなので読者の満足度は高い。

 ・「バイロン本社」が変な吸血鬼小説を書いているという認知度が上がる。

 ・次の巻を希望して毎回、取りに来てくれる方がたくさんいらした。


 それで有償頒布本が爆発的に売れたわけではありませんが、たしかに有償頒布本の動きは伸びてきました。しかし、ここで新型コロナウィルスによるイベントの中止続出という事態に見舞われます。


 ということで、その3に続きます。

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