第315話 扉の前の戦い2

◇◇◇

【アイテムカード:シルフの銃】

【レア度:★★★(3) 風属性の銃。風の精霊の力で遮蔽物を避ける弾丸を撃つことができる。弾は六発。具現化時間:5分。再使用時間:10日】

◇◇◇


 目の前に銀色の銃身を持つ銃が具現化された。グリップは緑色で風の精霊シルフの姿が刻み込まれている。


 彼方はシルフの銃を左手で掴み、アルマに向けて引き金を引いた。

 銃声が響くと同時に、アルマの持つ黄金の槍が弾丸を弾いた。


 ――銃口の位置から、弾道を読んだのか。槍を動かすスピードも速かったし、なかなか危険な相手だな。


 アルマの銀色の眉が吊り上がった。


「デスアリス様の命を狙って潜り込んできたか」

「文句はないだろ。君たちがやろうとしてたことだし」


 そう言って、彼方はアルマに突っ込んだ。


 シルフの銃の引き金を引きながら、一気に距離を詰める。


「させるかっ! 貴様はここで私が殺す!」


 アルマは槍で弾丸を弾き、素早く呪文を唱えた。人の形をした炎が現れ、彼方に襲い掛かる。


 彼方は聖水の短剣で炎を斬った。しかし、炎はダメージを受けた様子がない。


 ――物理攻撃は効かないか。


 人の形をした炎が彼方に殴りかかった。

 彼方の前髪の一部が炎で焼ける。


 彼方は転がりながら炎を避けて、アルマの背後に回り込む。

 連続で銃声が響き、一発の弾丸がアルマの肩を貫いた。


「それがどうしたっ!」


 アルマは自身の傷を無視して、槍を突き出す。


 ――届かない範囲からの攻撃ってことは…………。


 先端の刃が飛び出し、彼方の顔面に迫る。


「だろうねっ!」


 彼方は聖水の短剣で刃を叩き落とし、新たなカードを選択した。


◇◇◇

【呪文カード:魔水晶のジャベリン】

【レア度:★★★★★(5) 属性:地 対象に強力な物理ダメージを与える。再使用時間:7日】

◇◇◇


 青白く輝く半透明の槍が具現化され、アルマに迫る。


「当たるかっ!」


 アルマは余裕を持って、ジャベリンを避けた。


「バカがっ! この程度の呪文を避けられぬと思ったか」

「いや、君を狙った呪文じゃないから」


 彼方の言葉にアルマは視線を後ろに向ける。彼女の瞳にジャベリンが背中に突き刺さったダルグの姿が映った。


 ダルグが顔を歪ませながらも、伊緒里と戦いを続けている。


「あ…………くっ!」


 アルマの動揺は一瞬だった。


 すぐに彼方に向き直り、槍を構える。


「やってくれたな。氷室彼方」

「急いだほうがいいよ。君のお仲間は粘ってるけど、もうすぐ伊緒里にやられるから」


 彼方は弾丸の切れたシルフの銃をカードに戻し、聖水の短剣を強く握る。


「そうなったら、こっちは二人で君を攻めるよ」

「その程度のことで、私が動揺すると思ったかっ!」


 アルマはにやりと笑った。


「貴様さえ殺せれば、私の命などいらぬ!」

「…………なるほどね」


 彼方は後ずさりしながら、アルマと人の形をした炎の位置を確認する。


 ――忠誠心の高いタイプか。こういうタイプは危険だけど、動きは読みやすい。


「死ねっ! 氷室彼方!」


 アルマが動くと同時に人の形をした炎も動く。


 彼方は素早くカードを選択した。


◇◇◇

【呪文カード:オーロラの壁】

【レア度:★★(2) 指定の空間に物理、呪文、特殊攻撃を防御する壁を五秒間作る。再使用時間:2日】

◇◇◇


 白、赤、緑に変化する半透明の壁が現れ、人の形をした炎の動きを止める。


 ――五秒で勝負をつける!


 彼方の持つ聖水の短剣の刃が一メートル近く伸びた。

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