第308話 彼方vsラズイム2
◇◇◇
【呪文カード:クロノスの祝福】
【レア度:★★★★★★★★★(9) 属性:無 三分間、使用者のスピードを大幅に上げる。再使用時間:25日】
◇◇◇
カチ……カチ……カチ…………。
時計が動くような音とともに、彼方の体が淡い青色の光に包まれた。
「すぐに終わらせます」
ラズイムは素早く呪文を唱えた。
彼方を囲むように数十本の尖った氷の柱が出現した。その柱が一斉に彼方に迫る。
――攻撃は呪文メインのようだな。それなら…………。
◇◇◇
【アイテムカード:深淵の剣】
【レア度:★★★★★(5) 闇属性の剣。装備した者の攻撃力を上げ、呪文の効果を打ち消す効果がある。具現化時間:3時間。再使用時間:7日】
◇◇◇
具現化された漆黒の剣を掴み、彼方は氷の柱を斬った。呪文で作られた氷の柱が一瞬で消える。
「まだまだいきますよぉ!」
新たな氷の柱が彼方の胸元に刺さる瞬間――。
彼方の体が消えるように移動した。
一瞬でラズイムに接近し、漆黒の剣を斜めに振り下ろした。
ラズイムの体が斜めにずれる。
「ぐっ…………」
ラズイムは顔を歪ませながらも右手を前に突き出す。
青白い半透明の壁が現れる。
「無駄だよ!」
彼方は深淵の剣で半透明の壁を斬り、ラズイムに突っ込む。
◇◇◇
【呪文カード:グラビティ10】
【レア度:★★★★(4) 属性:地 通常の10倍の重力で対象の動きを止める。再使用時間:5日】
◇◇◇
ラズイムの体が周囲の空気に押されるかのように小さくなる。
「ぐぬっ…………」
ラズイムは地面を滑るように下がるが、その動きは鈍かった。
クロノスの祝福で強化した彼方はラズイムの背後に回り込み、深淵の剣を突き出す。
漆黒の刃がラズイムの背中から胸元を貫いた。
「が…………っ…………」
ラズイムは苦悶の表情を浮かべて、彼方から距離を取る。
氷の柱で彼方を攻撃しながら、ふわりと宙に浮き上がる。
――空に逃げるつもりか。
彼方は新たなカードを選択する。
◇◇◇
【呪文カード:魔水晶のジャベリン】
【レア度:★★★★★(5) 属性:地 対象に強力な物理ダメージを与える。再使用時間:7日】
◇◇◇
青白く輝く半透明の槍がラズイムの腹部に突き刺さった。
「があっ…………」
ラズイムはバランスを崩して、地面に横倒しになる。
慌てて上半身を起こした瞬間、彼方の持つ深淵の剣がラズイムの首を飛ばした。
それでもラズイムは動きを止めなかった。
頭部のなくなった体で立ち上がり、氷の柱の攻撃で彼方の動きを牽制した。
その間にラズイムの頭部が溶け、どろどろとした青い液体がラズイムの足にくっついた。
ボコボコと音がして、ラズイムの頭部が再生される。
「…………おのれっ! 人間ごときがっ!」
ラズイムは声を荒げて、両手の指先を彼方に向ける。青黒い十本の糸がヘビのような動きで彼方に迫る。
その攻撃を彼方は全て避け、深淵の剣でラズイムを攻撃する。振り下ろされた漆黒の刃が何度も軌道を変え、ラズイムの体を斬り刻む。
「ぐうっ…………ぐっ!」
ラズイムは素早く口を動かし、呪文を唱える。
黒い霧がラズイムの体から染み出し、彼方の視界を奪う。
――距離を取って逃げたいみたいだけど、そうはさせない。
深淵の剣を真横に振ると、黒い霧が一瞬で消える。
驚きの顔をしたラズイムに向かって、深淵の剣を真っ直ぐに振り下ろす。
ラズイムの顔が中心から左右に分かれた。
「ごぅ…………ごぶっ…………」
ラズイムは両手で顔を押さえつけ、後ずさりした。
「…………霧の呪文まで消せるとは」
「その情報は伝わってなかったみたいだね」
彼方は喋りながら、呼吸を整えた。
「とりあえず、五回ぐらいは殺せたかな。残りは四回…………いや、五回かな」
「あなた…………無詠唱の呪文をいくつ使えるんですか?」
「教えても構いませんが、無駄な知識ですよ。あなたはここで死ぬんだし」
「…………まっ、待て」
ラズイムは両手を胸元まであげた。
「あなたに有益な情報を教えます」
「有益な情報?」
「…………はい。デスアリス様の弱点を教えます」
「へーっ。それは気になるけど…………」
彼方は深淵の剣の刃をラズイムに向けたまま、ラズイムの顔をじっと見つめる。
「…………あぁ。時間を稼ぐのが目的か。何か大技を使う気なのかな?」
「いっ、いえ。そんなつもりはありません。あなたの強さは私の想像以上でしたから」
ラズイムは強張った顔で笑う。
「もうあなたに逆らうつもりはありませんし、デスアリス様だけではなく、ゲルガの情報も教えます。それに魔神ゼルズの…………」
ラズイムが喋り終える前に彼方が動いた。一瞬で右に移動し、ラズイムの左手を深淵の剣で斬る。
ぽとりと落ちたラズイムの左手の甲には尖った歯が並ぶ口があった。
「この口で高位呪文を詠唱してたみたいですね。いい手ですが、左手の指が僅かに動いてましたよ。視線も一度、そっちに向いたし、声は早口で何でもいいから喋ろうとしてるし」
喋りながら、彼方は攻撃を続ける。
「あなたを逃がす選択肢はありません。あなたの攻撃力はたいしたことないけど、だいぶ僕の情報を知られちゃったから」
深淵の剣がラズイムの頭部と胴体を斬り離した。
「これで残り四回…………かな」
彼方は観察するような目で転がったラズイムの頭部を見つめた。
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