第25話

―兄ちゃん達と別れた後―


 一階の奥にもトイレがあったんだけど清掃中だったから、「二階にもありますので、そちらに案内します。」ってことで、カフェの店員さんに案内されたんだけど。


「私は先に戻っていますので、お客様もお手洗いを済ませたら戻ってきて下さい。」


「は~い。分かりました。ありがとうございました。」


 そう言って、カフェの店員さんがトイレの場所を教えてくれて、トイレを済ませた後、早速社内がどうなってるのか少し探検しようとしたんだよね。


(いや、お前何してんの早く戻って来いって言ったよな。)


(だってこんな所めったに来れないじゃん。)


(そうだけど、社員が仕事してるんだから迷惑掛かるだろ。)


(まぁまぁ、拓磨君もう話が進まないからお説教は止めてあげて。)


(分かったよ。で、その後、何があったんだ?)


(やっぱり波瑠ちゃんは、優しいな。って、話を戻すよ。)


 それで、トイレの目の前に社内食堂があって、何気にどういうメニューがあるのか見ようとした時に顔がキリッとしていてスーツがとても似合う女の人に声を掛けられたんだ。


「あなたは須原陽葵さんですよね。」


「え、急になんですか?」


 流石に知らない人に急に声を掛けられたから、警戒してたんだけど、


(いや、入っちゃいけないとこのメニュー見てたから普通に声かけられるんだろ。)


(兄ちゃん、うるさい黙って。)


 …コホン、それで女の人はこう言ってきたんだよ。


「突然驚かせてすみません。私は社長秘書の山村千広です。先ほどお兄さんを見かけたのですが、高本波瑠さんもご一緒なのですか?」


「なんでそんな事を…、まさか、そんな事を話して、波瑠ちゃんをどうかするつもりですか。」


「いや、早くして下さい。じゃないと波瑠さんが危険な目に…。」


 物凄く警戒してたんだけど山村さんが焦り出したから、本当に危険なことになってるのかなと思って山村さんを一階のカフェに案内したんだ。


 だけど、二人とももういなくて私も焦ってたんだけど、山村さんは険し顔をしながら、


「遅かったか。」


 って、呟いたの。


「え、遅かったって、波瑠ちゃんがそんなに危ない目に合いそうなんですか?」


「…」


「答えて下さい!何がどう危ないのか!!」


 私は聞いてるのに山村さんは両手を組みながら黙っていたんだけど、急に私の方を見て話してきたんだ。


「話しますが、社長室に向かいながら話します。」


「なんで社長室に向かいながら何ですか!?」


「時間がもったいないのと社長なら何か知ってるかもなので…。それより早く行きますよ。」


 何が何だか分からなかったけど、山村さんについて行って、エレベーターに乗り込んだの。


 で、乗った後に、やっといろんな話を聞けたんだ。


「では、まず何から聞きたいですか?」


「えっ?う~ん、じゃあ、何で私の事を知っていたんですか?」


「それは陽葵さんのお母様から朝方、社長に三人の写真付きメールの連絡が来ていて私も先程確認したのですが、今日皆様がこちらに来ていると知らなく…。」


 今思えば、なんでお母さんが連絡してきたんだろってなったけど、それよりも言いたい事があって山村さんに言ったの。


「何でその写真を早く確認しなかったんですか。」


「本当にすみません。いつもの事なんですが社長が寝坊して、起こすのに時間が掛かってしまい車の中で見させられたのですが、急だったので私は運転中で見れませんでした。あと…」


 山村さんは悲しそうにしながら、


「これもいつものことですが、社長は車の中で片手で食べられる朝食をとるのですが、私は起こすのに時間が掛かってしまい、いつも社内食堂を借りて朝食を…。」


 って、言ってきたから可哀そうだし、それ以上は責められなかったんだよね。


「と、話が脱線しましたね。戻しますが、その時に時間がありましたので写真を見た所、一階で見かけた男の子のがまさかの拓磨さんと知って、慌てて食堂を出た時に目の前に偶然陽葵さんがいらしたので声を掛けました。」


「そうなんですね。何で食堂前で焦っていたのが分かりました。」


 って、山村さんに言った後すぐに兄ちゃんから連絡が来たんだ。


「えっ、兄ちゃん何で私がエレベーターに乗ってるって分かったんだろう?」


 そう言いながらキョロキョロして上見たら、やっと分かったよ。


「あ、兄ちゃん隣のエレベーターに乗ってる!」


「何ですって!?」


 スマホで必死に私に連絡とろうとしてる兄ちゃんを指を差して山村さんに教えて、山村さんも確認していたけど。


「確かにお兄さんですね。」


 山村さんはそう言った後に一旦安心したかのように一息ついたけど、すぐに私に言ってきたんだ。


「連絡が終わりそうになりましたら、何階で降りたのか聞いといて下さい。」


「はい?…えっと、なんで?」


「どこで降りたのか分かるなら、すぐに社長と一緒にかけつけられので。」


「あぁ~、なるほど。」


 で、連絡を何度かとって、兄ちゃんが連絡終わりそうになって聞いてたら、


「そろそろ、社長がいる階に着くので準備して下さい。」


 って、言われたからスマホを急いでバッグにしまって、十階に着いた後、社長室に案内されたんだ。


しおり社長入ります!」


 ノックした後にすぐドアを開けてすごく緊張したけど、部屋の中には誰もいなくて「社長さんは?」って思った時に後ろから、


「千広~、どうにか会議早く終わったよ~。…て、あれ?千広この子は?」


 声が聞こえて振り向くと、前にテレビで見た時に兄ちゃんは波瑠ちゃんにソックリって言ってて、その時はあんまりそんな感じに見えなかったけど、近くで見てびっくりしたよ。


 た、確かに顔が似てて、少し背が高い波瑠ちゃんだ!って。


「栞社長、その子は須原陽葵さんです。」


「あぁ~、優衣が今朝、写真付きのメールで送ってきた…えっ、何でここにいるの!?」


「そういえば聞き忘れていましたが、陽葵さん何でここに来たのですか?」


 私も聞かれてなかったから言わなかったけど、何でだっけ?って思いながらも。


「陽葵さん、もしかしてこの前の事で栞社長がここにいるって分かったから、波瑠さんが会いたいって言って来たんじゃないですか?」


「あ!そうでした。理由は分かりませんがお母さんに会いたいって言ってました!」


「えっ、波瑠も…」


 そう聞き返されたから答えたんだけど、栞さんは困った顔、というより複雑そうな顔?をしながら、


「ここには来てほしくなかったわ…。」


 って、言ったんだ。で、栞さんはその場で黙って立ってたら、山村さんが言ってきたの。


「栞社長、考えてないで陽葵さんに名前を名乗ったらどうなんですか?」


「えっ、あぁ、忘れてたわ。私は、高本ぉ…、コホン、広清栞よ。さっきから秘書が言ってる通り、このロスガの社長です。」


「あっ、私も改めまして。須原陽葵です。」


 入って来た時は、波瑠ちゃんに似てて、ポワッとした優しい人だと思ってたら、私と話した時はキリッとして山村さんと同じかっこいい大人の女性って感じになってたけど、


「栞も陽葵さんに自分の名前を言ったんでしょうねぇ?」


「私はとっくに名乗りました。それよりも、波瑠さんと須原拓磨さんをどうにかしないとじゃないですか。栞社長?」


「う、うん、名前は言ったのね。流石千広だけど、…まさか波瑠と陽葵ちゃんが来てるとおもってなかったよぉ。」


「あと、須原拓磨さんもです。」


「えぇ~!拓磨くんも!?ど、どうするの!二人はどこなの!?」


 やっぱり、波瑠ちゃんに似てるような気もしたなぁ。まぁ、話を戻すけど。


 栞さんが言った途端に山村さんはニヤリと笑って言ったんだ。


「栞社長、どうせどこにいるか分からないと思ったので、先程須原拓磨さんと連絡が取れてどこの階にいるのか分かったいます。ですよね、須原陽葵さん。」


「そうなの陽葵さん!」


「あっ、そうでしたね。」


 忘れてたけど、山村さんに声を掛けられてから、スマホで最後に兄ちゃんに何階にいるのか聞いていたのを思い出して、すぐにスマホをバッグから取り出して確認して「八階」にいるってわかったんだ。


「八階…ってことは、あそこか。」


「あそこかって、何か分かるのですか、栞社長?」


「まぁ、ちょっとね。それより、ナイスよ。二人とも!」


 まさか私も褒められるとは思わなくてニヤけたけど、山村さんも嬉しそうにしてたなぁ。で、


「早くしないと折り返しが付かなくなるかもしれないから、早く二人を助けに行こう。」


 そう言った後すぐにエレベーターに乗って栞さんについて行ったら、この会議室で。


 会議室前に男の人二人が待っていたから本当にあってるのか角で様子見てたんだけど、その男達がドアを開けた途端に兄ちゃんの声が聞こえたから、合ってると分かって入ったんだ。



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