第21話
―駅前、七時頃―
走りたい気持ちを抑え、切符を買い、二人を待つこと数分、バスで二人は来た。
「やっと来たな。はいよ、切符。」
「拓磨君、電車の時刻表ってみた?」
「あぁ、見たがあと十分ぐらいで電車来るらしいぞ。」
波瑠たちに切符を渡した後、改札を通って、電車が来るまで立って待った。
電車が来て、乗車し、休日の朝だからなのか駅のロータリーや電車の中はあんまり人が乗っていなく、座席がまばらで三人が座れそうな所を探したらすぐに見つかった。
座って、波瑠にさっきの二人分の切符のお金を渡された後、陽葵が聞いて来た。
「兄ちゃん、波瑠ちゃん、どこの駅で降りるの?」
「ここから一時間四十分ぐらいかかる所だよ。陽葵ちゃん。」
「ふ~ん、てことは、…八時五十二分に着くかぁ。じゃあ、いっぱいおしゃべり出来るね。」
いっぱい、おしゃべり出来るねって。
「朝早いんだし、電車の中で寝てもいいんだぞ。近くなったら起こすし。」
「大丈夫だよ。おしゃべりしてれば、眠くならないよ。」
「そうか?でも、無理だけはするなよ。」
陽葵に注意して、俺はスマホで動画でも見ようと思い、ポケットから取り出し、電源を入れ様とした時、
「兄ちゃん何でスマホ使おうとしてんの?兄ちゃんも話に参加してよ。」
「拓磨君、スマホの電源も無くなるし、お話ししよう。」
いや、どう見たって二人で話す雰囲気になってたじゃん。
「確かにそうかもしれないが、今丁度読みたいマンガがあるから、見ちゃ駄目か?」
「今でもゲーム中毒なのに、スマホ中毒になったらどうするの兄ちゃん。」
「拓磨君、ほらスマホはしまって。」
二人に話ししようと言われ、しょうがなく俺はスマホをしまった。
「それで何の話をするんだ。」
「ぷぷ、今から話そうとしてるんだから、話す内容考えてる訳ないじゃん。兄ちゃん。」
口で手を抑えながら陽葵は笑っているが、俺も確かにと思いつつも、最初に話そう話そうって言ってきた奴に言われるのはちょっと納得いかん。
「じゃあ、私からちょっと拓磨君に聞きたいことがあるんだけど。」
最初に波瑠が聞きたいって言い始めながらも、人差し指を頬に当てていた。
「何だ。聞きたいことって。」
「波瑠ちゃん、それって私に関係ある事だったりする?」
「うん、そうなんだけど。この前のショッピングモールの時、陽葵ちゃんと服を買いに一緒に行ったでしょ。」
「あ~、今上下に着てる服を私と選んで買った時の話ね。でっ、兄ちゃん、どうよ。」
急に陽葵に振られたが、
「どうよって、よくは分からんが上は白黒のTシャツ?に緑色の何かを羽織って、白くて長いスカートで今の季節にぴったり…な、服だな。」
「あの~二人とも。」
「兄ちゃん兄ちゃん、そう言う事聞いてるんじゃなくて。もっと、他に言う事あるでしょ。」
もっと他って、何があるか分からんが、今わかる事って言ったら。
「波瑠に似合ってる服で、かわいい。」
って、これぐらいしか言えんが。
すると、陽葵は誇らしげにしていて、波瑠は顔を赤くしつつ戸惑っていた。
「まぁまぁ、兄ちゃんにしては上出来ってとこかな。」
「何が上出来だよ。」
「もう陽葵ちゃん、話の腰を折らないで。」
「えっ、私と一緒に選んだ服の話じゃないの?」
「違うよ、服を選んでる時、店員さんに話しかけられて目を離してたら、急に陽葵ちゃんがいなくなるから焦って探したって、話をしようとしたんだよ。」
その話をした途端、陽葵は困った顔をした。
「ははは、あぁ~、それね。」
「もう、あの時は近くにいたからいいけど、今から行くところは三人ともわからないところなんだから注意してね。陽葵ちゃん。」
「分かった。今日は一段と注意するよ。」
今日はっていつもしてくれると助かるんだが。
そんな陽葵に呆れつつ、でもその話と聞きたいことって何が共通…って思っていた矢先に波瑠がまた質問に戻った。
「で、このことで思ったんだけど、遊園地でもはぐれたって言ったでしょ。だから、実は昔から陽葵ちゃんって落ち着きがない感じだったのかなって。」
「そうだな。」
俺は、本当の事だし、即答した。
陽葵は視線で余計なことをって感じに送ってくるが、さっきの納得いかない事やいつも俺の言って欲しくないのばらされてるし、このぐらいの仕返しはしてもいいだろう。
そうして、俺は今まで陽葵がやらかしたことを思い出しながら、波瑠に言った。
「あぁ、陽葵は落ち着きが無いから、なるべく俺も目を離さないようにしてるし、遊園地の他に、公園で遊んでもいなくなったり、新しいとこ行っても興奮すしたりと昔っから変わらず陽葵は落ち着きが無い奴だよ。」
そんな話をすると、陽葵は少し怒った様子で言ってきた。
「兄ちゃん、遊園地の話したんだ。だったら、その後の事も話さないとね。」
「その後の事?」
その後って、陽葵の奴、あのことを話すつもりじゃ。
「おい待て、ひま…」
「私は遊園地内で迷子になったけど、兄ちゃんは電車内でトイレに行くって言った後、戻ってこなくて、家族みんなで待ってたら、最寄り駅で降りれなくなったんだよ。」
まさか仕返しをするはずが、逆に仕返しされるとは思ってもみなかった。
また、それを聞いていた波瑠は、かなり呆れている感じだった。
「波瑠ちゃんより、もっとひどいじゃない。」
「待て、これには訳があって、電車のトイレ内で揺られたら、遊び疲れたせいなのか段々と眠くなって、少しの間トイレで寝ちゃったんだ。」
「『寝ちゃった』じゃないでしょ。」
「で、その後、父ちゃんが必死にトイレのドアを叩いて、兄ちゃん起きたんだよね。」
「さて、この話はもう終わりにして…」
「その後、一駅先でみんなで降りたら、父ちゃんが兄ちゃんに物凄く怒ってたよね。」
陽葵、俺はそんなに仕返しされるほどのことを言ってないぞ。
もう止めてほしいと必死に思ってる俺の横で、波瑠は引いていた。
「怒られて当然だよ。でも、そんな話を聞いてると二人とも似てるね。」
「「どこが!」」
すかさず言ったせいか、陽葵とハモってしまった。
「二人ともわからないの?どっちも落ち着きがないこと。」
「「うぐ」」
またまたハモってしまったが、それだけは分かる。
俺は面目ない気持ちになったが陽葵もそうらしい。だって、何とも言えない表情してるし。
そんな表情をしているからなのか、波瑠は笑っていた。
「ふふ、でも、今の話を聞いてると私がしっかりしないと目的地にたどり着けないのかな?」
「「そこまで言う。波瑠(ちゃん)!!」」
とうとうハモるのも三回目で恥ずかしいが、それよりも、やっぱり他の人から見ると似てるところは似てるってわかるもんなのか。
そう思いつつ、波瑠は
「冗談だよ。冗談。」
って、言って来て、この話は終わった。
その後も、好きな食べ物の話や外に見える建物が何なのかの話などで盛り上がっているとあっという間に目的の駅に到着した。
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