第15話
そんなこんなで、帰りは家の近場に着くバスに乗って、ショッピングタウンを出て、窓の外を見ると大分日も落ちてきたのでスマホの時計を確認すると五時五十分を回っていた。
「早く帰らないと暗くなるな。」
「兄ちゃんがプレゼントを決めるのが遅かったからでしょ。」
「悪かったって。」
そんな話をしていたら早くも家の近くのバス停が見え、降りるボタンを押し、俺達はバスから降りた。
ここから、信号とかあるが、あとは歩いて十五分位だな。
そう思いつつ、また陽葵と雑談しながら歩こうとした時、
「あれ、拓磨君と陽葵ちゃん、二人ともバスから出てきたけど、どこ行ってたの?」
「「波瑠(ちゃん)!?」」
まさかの波瑠が、バス停近くを偶然通りかかった。
「あ、あぁ、今日は陽葵がどうしても欲しいのがショッピングタウンにあるって前々から言ってて、それの付き添いしてきたんだ。」
「へぇ~、そうなんだ、何買ったの。」
「兄ちゃん!」
波瑠の奴、興味津々に聞いて来るけど、陽葵のために言ったわけでもないし、そんなの買っても無いから、言える訳ねぇ。しょうがない、一旦ごまか…
「波瑠ちゃん、これ、これを買ってもらったの!」
そう言って、陽葵が波瑠に見せたのは、なんか陽葵が好きって言ってた(名前は忘れたが)、クマのキーホルダーだった。
「あぁ、陽葵ちゃんが好きなやつ買ってきたんだ。」
「そうそう。」
陽葵は、縦に首を振っていたが、いつ買っていた知らんが、ナイスだ。
でも、これ以上は、深堀されても困るから話題を換えよう。
「そ、それより、波瑠の方こそ何でこんな所にいるんだ?」
「うん?私?私は、さっきまで友達と遊んでた所だよ。」
「何して遊んでたの、波瑠ちゃん?」
「え~と、洋服を見に行ったり、アイスを食べながらおしゃべりしてたよ。」
「そうなんだ。」
よし、このまま流れに乗って、
「そんなことしてたのか。じゃあ、今日ずっと歩いてただろうし、疲れたんじゃないのか?」
「ん?そんな事は無いけど。」
「いやいや、心ではそう思ってても疲れてるって。」
「そうかなぁ。」
「波瑠ちゃん、兄ちゃんの言う通り疲れてると思うから、早く帰ろう。」
「う~ん、二人がそう言うならそうかな?」
よし、これ以上は何も聞かれず、終われそ、う…、
「あっ、」
「どうしたの、拓磨君?」
思わず口に出してしまったが、そういえば、俺と波瑠の中で決めたルールがあることを思い出した。
「ちょっと待て、俺と一緒に俺の家に帰ってもいいのか?」
「あっ、そういえば、そうだったね。」
「何それ?」
陽葵は、何の事なのか分からなそうに首を傾げていたので、俺達は、クラスメイトにバレることを防ぐためのことを軽く陽葵に説明した。
「だから、今まで一緒に帰ってきてなかったのかぁ。」
「でも、ここからだと近いし、どうしようね。」
「おいおい、どうしようね。って言ってもな…」
トントン。
「うん?」
まだ波瑠と話をしているのに、陽葵が肩を叩いてきた。
「何だよ、陽葵。」
「兄ちゃん、あそこの人がこっち見てるよ。」
陽葵が言った方向を見ると、スーツと(こんな時間に)サングラスをかけてヒョロっとした男がいつの間にかいて、こっちを見ている。
しかもよく見たら、俺らがいる所の後ろが細道になっている。
もしかして、この道を通りたいのに俺が道を塞いでいるから、こっちを見てるのか?
そうだったら、悪いから、
「二人とも他の人の迷惑になってるから、移動するぞ。」
そう言って、波瑠たち二人と一緒にここを離れることにした。
でも、なんかおかしいぞ。
今いた所だって、少し俺が細道に出て塞いでいたかもしれないが、それでも横を通れるようにはなっていた。
それに、今も後ろからこっちの方について来るが、一体何なんだ?
俺はそいつを気にしているが、横にいる二人は違う話をしていた。
一応、気にもなるし、二人に言っておくか。
「おい、何であいつまだ付いて来るんだ?」
「「うん?」」
そう言った後、二人は男を見たが。
「たまたま、こっちに用事があったんだよ。多分。」
「もしくは、こっちに家があるんじゃないかな。多分。」
二人とも、憶測で言ってるが、今もこっち見てるし、少しは気にしろよ。
「それなら、何でさっきのところで止まって俺たちのことを見てたんだよ。」
「私達がうるさかったから、見てたんじゃん?」
そんなに騒がしくは、していなかったと思うが。
そう思っていると陽葵は俺の頭を見ながら、言ってきた。
「それより兄ちゃん、前から思うけど、なんでも気にし過ぎると将来ハゲるよ?」
「はぁい?父さんハゲてないから、俺もハゲねぇよ。多分。」
俺も憶測で言ってしまったが、ぜってぇ有り得ねぇ。
「まぁまぁ、拓磨君。落ち着いて。それより二人とも、そこの公園で話そう。」
俺達が不毛な争いをしている中、木々に囲まれている小さな公園が見えてきた。
よく朝通る道沿いにあるが、地味過ぎてあるのをすっかり忘れていたが、確かにここならほとんど見えづらいし、話すならここか。
「ここなら話しやすそうだな。」
「じゃあ、早くどうするか決めて、とっとと帰ろう。疲れたし。」
陽葵の疲れた事情は知らんが、家に帰る時間も遅くなってるし、早く決めないとな。
だが、さっきの男はどうしたんだ?
そう思って、振り返るとそいつはいなかった。
「あれ?いなくなってる。」
「だから、兄ちゃん。私達が言ったどれかだったんだよ。それより早く。」
そう言われて、陽葵に腕を引っ張られながら、公園に入り早速本題を話し始めた。
「で、どうやって俺と陽葵は帰った方がいいんだ?」
「さっき、波瑠ちゃんが言ってたんだけど、遠回りは私は嫌だよ。」
「それなら、俺だけでも遠回りしても良いが。波瑠はどう思う?」
「う~ん…。」
波瑠は、少しは考えているそぶりをしていたが、
「でも、今の時間帯とここら辺で同じ学校の人なんて見かけたことなんて一度もないはずだから、一緒に帰っても良いんじゃないかなぁ。」
と波瑠は言ってきた。
「えー、でも、もし見つかったらどうするの?波瑠ちゃん。」
「そうだぞ。」
「でも、拓磨君に悪いし…」
波瑠がためらうのも分かるが、ここら辺に居ないって決めつけては駄目だ。
「そうだよ。兄ちゃんだけ…うん?」
陽葵が言おうとした時、公園の入り口からさっきの男が入ってきて波瑠の前で止まった。
「高本波瑠さん。」
突然男が波瑠の名前を呼んできたが、何なんだ?
「おい、波瑠の名前呼んでるが、知ってる奴か?」
「知ってるなら、さっきとっくに名前呼んでるよ。」
「じゃあ、なんで波瑠ちゃんの名前フルネームで呼んでるの?」
「それには訳があります。」
男はぶっきらぼうながらも話してくれる感じ、だと思っていたが、
「ですが、お二人には無関係ですし、私は高本波瑠さんにだけ用があるので。」
そう言って、何故か波瑠の腕を掴もうとしていたが、すぐに俺と陽葵が波瑠の前に出てどうにか回避した。
「お前、何なんだよ。」
「そうです。あと、なんで波瑠ちゃんに用があるんですか。」
「だから、あなた達には関係がない事ですから、首を突っ込まないで下さい。須原拓磨と妹の須原陽葵。」
「っ!」
「えっ!?」
なんでこいつは波瑠だけじゃなくて、俺と陽葵の名前も知ってるんだ!
「それより、さぁ早く行きますよ、高本波瑠さん。」
俺達の事をどかし、波瑠の右手首を掴んでどこかに連れて行こうとした。
「急に行くって言われても何が何だか、分からないです。というか、離して下さい。」
波瑠は男の腕を叩いていた。
「いて!こら、抵抗しないで、いててて…」
波瑠は物凄く嫌がっていて、陽葵もどうしていいのか分からず慌てていた。
「兄ちゃん、一体どうすればいいの?」
どうすればって、今から警察に連絡してもここから近くないから間に合わん、何か良い案を…駄目だ、状況が飲み込めなくて何も思いつかねぇ。
こうなったら、あれだ、タイミングを見て走って逃げよう。
だが、それだけじゃ…そうだ、丁度聞きたいこともあるし、とあることを強調して聞くか。
っと、その前に陽葵に耳打ちで、この後の事を指示するか。
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