第14話

―二十日(水曜日)の午後―


 陽葵が良いって言っていた日の放課後になり、いつもは進と途中まで帰るが、「今日は急用がある。」と言って、学校を早めに出て、バスを待ち、ショッピングタウンに向かった。


 遅くなって、プレゼントを選ぶ時間も無くなっても困るしな。


 そう思って急いだのだが、急ぎ過ぎて、集合時間より三十分前についてしまった。


 集合場所は、本屋の入り口の横って言ってたが、やっぱり陽葵は来てないか。


 ショッピングタウン内の飲食店や雑貨店などの店はつながっているのだが、本屋は別で少し離れているし、バス停から近くて分かりやすいから陽葵はここにしたのだろう。


 陽葵もいつ来るか分からないし、ここから移動してすれ違うのも嫌だったから、スマホで女の子がどういう物をもらったら喜ぶのか調べたり、プレゼントはどのくらいの値段の方がいいのか壁に寄りかかりながら調べた。


 調べ物をして十五分、次のバスが来ていたので何気に陽葵が出てこないか扉を見ていると、やはり乗っていたらしく、陽葵が降りてこっちに向かってきた。


「兄ちゃん、早いね。集合時間まで十五分あるけど、って私も言えたことじゃないか。」


「あぁ、予定より早い方が、プレゼント選びに時間が掛かってもいいからな。」


「そうだよね。因みになんだけど、プレゼントは何にするか決まった?」


「それなんだが、調べてもあんまりこれかっていうのが分からなかったんだが…。」


「う~ん、調べたのは良いことだけど、実際に見ないと波瑠ちゃんにどういうのが似合うとか分からないからしょうがないと思うよ。」


 陽葵は頷きながら言ってるが、そうか、何でプレゼントが決まらないのか分かったぞ。


「じゃあ、時間も無くなるし、プレゼントどこで探した方がいいのか教えて下さい。」


「えぇ、う~ん…、」


 陽葵は少し困っていたが、両手を組みながら何か考えていた。


「よし、分かった。まずは、アクセサリーショップに行こう!」


「まずは?ってことは、他にもいくのか?」


「そうだよ。ここだったら色々とお店があるんだから、選ぶのも色々見た方がいいでしょ。」


「そっか。そうだよなぁ。よろしくお願いしま~す…。」


 若干「色々と見る」って言って不安なんだが、俺と陽葵はアクセサリーショップ、コスメショップ、服屋と諸々な店でプレゼント候補を決めて行った。


―二時間後―


 俺達は、店の前にあるベンチに座って、撃沈していた。


「あ~、プレゼント候補あり過ぎてどれにすればいいのか、分かんねぇ。」


「色々見たけど、まだ決められないのー、兄ちゃん。」


 そう言われても、どれがいいのか。


 一応は陽葵におすすめされたものにしようとは思うんだが、小波とかの女友達にプレゼント送ったことが無いから喜んでくれるかも分からん。


「兄ちゃん、四時半だしもう決めないと暗くなっちゃうよ。」


「分かってるけど、中々決められないんだよ。」


 でも、確かにもう決めないとなぁ。


「だったら、他の日にして今日はもう帰ろうよ。」


「いや、今決めないとだらだら引きずって忘れるかもしれないから決めるぞ、絶対に。」


「兄ちゃん、今の発言は堂々といえる事じゃないよ。」


 ツッコミを入れられたけど、どうしたらいいのか俺自身分からなくなってきた。


 でも、ここでこんな話をしてても、しょうがねぇから、もう一度見に行くか。


 そう思い、立ち上がって、歩き出し、雑貨屋の前に来た。


「兄ちゃん、ここって最後に入った所じゃん。」


「あぁ、陽葵がおすすめしたプレゼントの中でここが一番物が多かったからな。」


 そして店に入って、陽葵がおすすめした物を再度見たが、どうもピンとくるものが無い。


「兄ちゃん、そんなにどれもこれも見てるけど、決まらないなら、やっぱり今日は帰って、他の日にした方が良いんじゃないの?」


 陽葵が言うように、今日は帰った方が…、おっ!!


 悩んでいたところに陽葵がおすすめしてないが何となく良さそうな物を見つけた。


「おい、これなんか良いんじゃないのか?波瑠に似合いそうだぞ。」


「ん、兄ちゃんそれにするの?」


「あぁ、これにするが、駄目か?」


「いや、良いと思うよ。全然変じゃないし、波瑠ちゃんも喜ぶと思うよ。」


 陽葵にも良いって言われたし、俺もそれを購入して、子袋で渡されたからすぐさまカバンにしまい店を出たが、やっと、やっとプレゼント選びが終わったぞ。

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