第29話 蘇生しました?
「おおマッチョよ、死んでしまうとは情けない!」
ん? どっかで聞いたことあるセリフだ……。
「生き返りなさい、ムキムキマッチョ〜ルルルルル〜」
って、俺は死んでしまったのか? 武器と防具、それに魔力を犠牲にして、攻撃力と防御力に全振りしたこのイケメンマッチョのニーナ・リタ様が……死んでしまった?
んなはずない! それになんだ、ムキムキマッチョルルルルルって!
復活の呪文にしても、適当すぎるだろ!
「なんじゃそりゃ!」
俺は目を開けて、勢いよくツッコミを入れながら、体を起こした。
「ああっ! ニーナ様、ニーナ様が生き返った!」
目の前にはクーが涙を浮かべて座っていて、俺が目を覚ますと笑顔を浮かべて、俺の手を握ってきた。え、もしかして俺は本当に死んでいたのか?
……っていう冗談はさておき。
多分だけど、もし本当に死ぬとしたら、その前に女神様のところに飛ばされるはずだ。巨大なイカの怪物を倒しただけで呼び出されるんだから。それに魔法を受けたような感触もない。……実際に回復系の魔法を使われたら、それを実感できるのかどうかわからないけど、とにかく俺は死んでいないし、蘇生魔法を使われたわけではない、はず。
ちょっと冷静になって、俺はクーの手を引き剥がし(手に触れている間、少しだけドキドキしていたのは内緒だ)、辺りを見渡してみる。どうやらここはどこかの家の一室。部屋の奥には暖炉が設置されていて、薪がパチパチと音を立てている。
そして、クーの隣には、なんかセクシーなお姉さんがいた。
薄布一枚を身にまとい、ちょっと動くといろいろいけないところが見えそうな気がするので、俺はすぐに直視できなくなった。
「ほら、生き返ったでしょう? 私の魔法はすごいんだから!」
「はぁぁぁ〜っ! すごいです、すごいですシュワルツ様!」
「でしょう? だからなんでも言うことをひとつ聞いてね」
ん?
今、クーの口から聞き捨てならない台詞が聞こえた気がする。
「クー?」
「なんでしょうニーナ様?」
「その女性はいったい……誰だ? そして、ここはどこなんだ?」
まだ状況が飲み込めていない俺に、クーが教えてくれた。
「ここは、シュワルツ様のご自宅です。ニーナ様が雪山で倒れたところを見つけて、ここまで連れて来てくださったのです!」
俺は、セクシーな衣装のお姉さんの方を向いた。お姉さんはニコニコしながら俺に向かって手を振っている。
「やあ、マッチョな青年。私に感謝しろよ! 蘇生魔法なんて、滅多に使うものじゃないんだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……あな、あなたが……シュワルツさん?」
「そうだよ。私が超天才魔法使いのシュワルツ様だ! って、マッチョな青年。君は私を知っているのか?」
こ、こ、こ、この見えそうで見えないギリギリの衣装で、胡散臭い蘇生魔法を使う――っていうか、そもそもそんな魔法を使ってもいないはずのお姉さまが、大魔法使いシュワルツさん?
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