第27話 いざ出発です。
現在、武器と防具の店でクーの装備一式の試着中。
俺は悩んでいた。
装備のことじゃない。今後のことで。
魔王が狙っているキィンニィ王国を救いにいくのはもちろんなんだが、その前に大魔法使いシュワルツさんを仲間にするべきかどうか。
だって、魔王が狙っているということは、魔王と戦う可能性があるかもしれないってことだ。魔王がどのくらいの強さなのかはわからないけど、女神様が仲間を作れっていうくらいだから、相当強いに違いない。
だから、魔王と戦う前にシュワルツさんを仲間にしてからキィンニィ王国に行った方がいいんじゃないか、と思ったんだ。
「どうですか?」
でも、できるだけ急がないと、手遅れになってしまう可能性も大きい。
「ニーナ様?」
それに、シュワルツさんはヴァルク山地のどこかに住んでいるとしか情報がない。探し回るのに時間を取られるのも避けたいところだ。
どうするのが最善なのかなぁ。
「ねえっ、ニーナ様ってば!」
突然視界の中にクーが飛び込んできた。
「ほわぁっ! びっくりした、すまんクー。どうかしたか?」
「どうかしたか? じゃありません! どうですか、この装備?」
ああ、そうだった。
考え事をしていて、現在クーの装備の試着中だということを忘れていた。
ええっと、素肌を完全に隠す布の服に、皮の胸当て、皮のブーツ。そして耳を隠すための大きめの帽子。うん、動きやすそうだし、デザイン的にも問題ないかな。っていうか、いざとなればリスの姿に変身して木陰に隠れていればいいし。
クーが快適に行動できるのならそれでいい。
「うん、いいんじゃないかな。じゃあこれにしようか」
「ありがとうございます」
店の主人に代金を支払い、俺とクーは店を出る。
「すみません、お金まで全部支払ってもらって……王国に着いたら必ずお返ししますから」
「いいって。お金は一応持ってるし、使い道もそんなにないからさ」
「ニーナ様も何か防具を買えばよかったのに……」
クーが申し訳なさそうに俺を見る。
「ははは、俺は防具を装備しないことで、逆に防御力を高めているからね」
自分でも何を言っているかわかんなくなりそうだったけど、このマッチョ・フォーマル――白のタンクトップにデニムのショートパンツ――が最良であり、最高の防具なんだ。見た目はただのマッチョだけど。
◇◆◇
「キィンニィ王国はローインの北、ヴァルク山地を超えた向こうにあるんです。ヴァルク山地が相当険しいので、普通の人はまず訪れることはないんです」
道すがらクーがそう説明する。
ヴァルク山地は年中雪に覆われた場所だという。であれば、それなりの装備をしていかないと凍えてしまうかもしれない。さすがのマッチョでも、雪山をタンクトップ一枚で登るわけにはいかない。
俺たちは旅に必要な衣類や食料品等を一通り買い揃えて、ローインの町の北門へと向かった。
ヴァルク山地の向こう。
ということは、道中で大魔法使いシュワルツさんを仲間に迎えることも可能かもしれない。悩んでいた気持ちが、少し軽くなった。
あとは、シュワルツさんの家が簡単に見つかり、彼女が快く仲間になってくれればいいのだけれど……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます