第26話 さらけ出します。
「それに、直感的に思ったんです。あ、この人は大丈夫って。そうしたら、本当に伝説の戦士、マッチョ・ニーナ・リタ・E様だったんです」
「そ、そっか……」
獣人族についての情報が全くない状態だったのが逆によかったのかもしれない。
一番重要なことがある。
「あと一つ。本当に獣人族の血を飲むと、魔力がアップするのか?」
今の今まで明るかったクーの顔が一気に暗くなる。まずい、してはいけない質問だったか? 彼女はぐっと拳を握って、話し始める。
「正直、わかりません。獣人族の血は魔力を増幅させるという話をあちこちで聞きますが、実際に生き血を飲んだ人を見たことがありません。先日、国が襲撃に遭ったときも、住人はほとんどが生け捕りにされました。……やっぱり、ニーナ様も血を欲するのですか?」
彼女にとって、辛い光景を思い出させてしまったようだ。
「いや、俺に血は必要ない」
「え?」
クーが少し安心したような、驚いたような顔をする。だってさ。
「俺は魔力を持っていない。その分、筋肉に全振りしているんだ」
俺はムキッとちからこぶを作ってクーに見せる。
「あー、あれは魔法ではなく、磨き上げられた物理攻撃だったんですか……」
彼女は、一つ目の巨人に変身して俺と戦ったときのことを思い出したようだ。俺の遠距離からのパンチで吹き飛ばされたやつ。
「そうなんだよ――」
俺は転生するときに、女神様と契約をした話をクーに聞かせた。
そして、武器や防具を装備せず、魔力ももたない代わりに、物理攻撃力と防御力はべらぼうに高いこと。
マッチョの代償として、名前が「マッチョ・ニーナ・リタ・E」になってしまったこととや、イケメンになってしまったせいで、女の子とうまく会話ができなくなってしまったことまで、全部話した。
クーに辛い過去を思い出させてしまったお詫びというわけではないんだけど、少しでも気を紛らわしてくれればいいなと思ってのことだった。当の本人がどう感じたのかはわからないけど。
「ということは、もともとニーナ様はこの世界の方ではなく、他の世界からやってこられたということですか」
「まあ、そういうことになるな」
「なるほど、だから他の人とは違うと感じたのかもしれませんね」
クーはベッドから立ち上がると、俺に向かって深々と頭を下げた。
「ニーナ様。改めてお願いいたします。どうか、私の国を……キィンニィ王国を救ってください」
そんな姿を見て、俺も椅子から立ち上がり、優しくクーの頭を撫でた。
「ああ、俺に任せておけ。必ず救ってやる」
かぁ! イケメンが言うと様になるなぁ!
よし、明日はこの街でクーの装備一式を揃えて、それからキィンニィ王国へ出発だ。ヴァルク山地で大魔法使いシュワルツさんを見つけるのは、その後……かな。
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