第15話 新たな旅立ちです。
俺とルーベは巨大なイカの
避難していた高台からもその姿が確認できるほど、巨大なイカの
黒い霧となって消滅するところまでみんなで見てくれていたらしく、俺が目覚めたときにはもう、ギルド内だけでなく、町中でお祭り騒ぎが始まっていた。
目覚めた後、ここ港町ヴェンチ・プレイスのギルドマスターであるスピナ・スージーがそう教えてくれた。
「いやぁ、強い! 強すぎるって! よかった、王都へ救援依頼を申請していて。もしあなたが来なかったら、この街は崩壊していたわよ! あんなデカい魔物が現れて、被害ゼロとかすごすぎるんだから!」
スピナが笑いながら、起きたばかりの俺の背中をバンバンと叩く。けらけらと笑うたびに、またしても大きなお胸が目の前でプルンプルンと揺れる。もちろん俺はそれを直視できずに、顔を赤くして反対側を向いてしまう。すると、そこにはまだ目を覚さないルーベの姿があったのだった。
「……スピナさん、ルーベは……」
俺が尋ねると、スピナは少し声のトーンを落とした。
「大丈夫、一時的な魔力切れで眠っているだけ。数日休めば回復するはずよ。だってあれだけの氷の道を作ったんですもの、持っている以上の魔力を使ったに違いないわ」
でも――、とスピナが話を続けようとしたとき、
「ああ。だが、そのおかげで魔力の底上げができそうだ」
なんとルーベが目を覚ましたのだ。彼はゆっくりと上半身だけを起き上がらせた。うーん、相変わらず袖から覗く上腕三頭筋がすばらしい。
「ニーナ・リタ。俺も女神様とやらに会って話をしたぜ」
「え!?」
今この瞬間にってこと? もしかして巨大なイカの
「お前とパーティを組んで、魔王を倒す旅に出て欲しいってさ」
あら、女神様。
もしかして俺がルーベを誘わないだろうって見抜いていやがったか。そう、俺はルーベをパーティに誘うつもりはなかった。
スピナがここのギルドマスターを務めているとはいえ、実質的にメンバーをまとめ上げているのは間違い無く彼だ。彼がいるからこそ、みんなマッチョであり続けているはずだ。あ、一致団結しているっていう意味だぞ。
そんなギルドの中心人物を引き抜いてみろ。徐々に秩序が崩れていくに決まっている。あ、スピナが頼りないとか言ってるわけじゃない。スピナもルーベがいることでギルマスを務めることができているんだ。
精神的な大黒柱を失うと、どれだけ堅固な瞬断でも次第と崩れていくものなんだ。
「ルーベ、だが俺は――」
「わかってる。俺も現状、ここのギルドを離れるわけにはいかないと思っている。正直、今回巨大なイカの
確かに。
港町ヴェンチ・プレイスの周辺は魔物が少ないと言っていた。
だからここのギルドのメンバーは魔物を倒すという経験が絶対的に少ない。漁業で鍛え上げられた肉体は素晴らしいものがあるが、いざ魔物と戦うとなると、経験がないとどうしても萎縮してしまうもんな。
転生したばっかりの俺がまさにそれだったから、気持ちは痛いほどわかる。つまり、するべきことはギルドメンバーの力の底上げ、実戦経験を積むこと。彼はそう言いたいのだろう。
「それに、この体が完全に回復するまでに結構な時間がかかりそうだからな……すまないが俺はニーナと一緒に行くことはできない。だから紹介状を書く」
ルーベがスピナに目配せすると、彼女はそれだけで何かを悟ったようだった。慌てて部屋を出ていくと、しばらくして白い封筒を持ってきた。
「はい、ニーナさん。これを」
受け取った封筒の中央には、金色に輝く冒険者ギルドの印が押されている。これがギルドからの正式なものであることの証だ。俺は魔法は使えないが、これがギルマスであるスピナの魔力の込められている封印であることはわかる。
「俺の魔法の師匠である、大魔法使いシュワルツ先生への紹介状だ。きっと力になってくれる。俺なんかよりも数段レベルの高い魔法を使う方だ」
おお、大魔法使いシュワルツ。なんか名前からして筋肉マッチョな感じがするな。この紹介状を持って、そのシュワルツって人を訪ねればいいんだな。そう思っていると、ルーベがニヤリと笑った。
「シュワルツ先生は……すっごく美人な
女性なのかい! 緊張して話せないじゃん!
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