第42話 弔い~フーカとフゾ
「ニャハー、食べた食べた。あー、もう入んない」
「
さえない陰キャ属性の少年を見送った後も、
たらふくの
女には2つの名があり、2つの人生があった。エルフのフーカ、あるいは
男もまたしかり。ドワーフのフゾ、あるいは
あまり相性の良い組み合わせとも思えないこのコンビには、しかし共にしてきた過去と現在があり、こうして肩を並べて見すえる未来さえありそうなのだった。
そしてそのすべての中心には、命尽きたひとりの男がいる。
勇者ヒデオ、――あるいは
別にいまさら呼び名など、どっちだってかまわない。そんなのはただの名前だ。
どう呼ぼうと、どんな姿になろうと、彼が自分たちにとって尊き冒険の仲間であったことに変わりはないのだから。
そう、冒険。
そして、かけがえのない仲間。
思えばずいぶん遠くまで来たものである。
魔王討伐の旅路のはずが、よもや世界をまたぐ
吟遊詩人ならここらで華麗にうたいあげでもするところだろうが、あいにくフーカもフゾも昔からそのような
それは、学生食堂調理師主任の
「なんかさー、あんま実感わかないんよねー、フゾッチ」
「んん?」
カウンターの上でとっくりをコロコロと転がしながら、
「ヒデオのやつさー、霊魂になってまだその辺うろついてんじゃないかなー、なんてさ。フゾッチはそう思わない?」
「フン、さあどうだかな。ワシの記憶では、霊魂だの霊力だの、そういう話はむしろお前さんらエルフの専売特許だったはずだが」
「ニャ、ニャハハー。いやー、私ってば
「エルフが聞いてあきれるわい」
苦り切った渋面でおちょこをしゃくると、
「それより、さっき
「あー、誰がヒデオを、――つまり元勇者を殺したかってことね。ごめん、すっきりさっぱり手がかりなし。収穫ゼロ。いやどういうわけだか、何ひとつ
「妨害工作? 結界とかそういう
「やー、だからあくまでもまだ推測だよ。私も実戦を離れ過ぎましたかねー。わからん、お手上げだー」
おチャラけて降参のポーズをとる
気付いてはいるが、まあそれもいいだろう。いまにはじまったことでもない。
「この時点でお前さんにもワシにも
「おお、
「驚いたな、古女房じゃなかったのか」
「なっ(ボッ)⁉ えっ、不意打ち⁉ あーもう」
酔いを覚まそうとしてか、
そしてつぶやく。
「
「…………」
「かーっ、私らにもあったのかねえー、あんな頃が。ねえ、フゾッチさんよ」
「…………」
「ねえ、フゾッチ。ヒデオは死んじゃったんだねえ。本当に本当に、死んじゃったんだねえ」
「…………」
「あいつったら、急に殺されちゃうんだもん。参るよ、ホント」
たがいに背を向けたままで、
「だけどさー、――いなくなって、わかるんだよ」
「…………」
冷たい夜風が、河川敷を渡る。
「ねえ、あいつはさー、勇者だったんだよ。私たちの、勇者だったんだよ――」
「そうだな」と答えるかわりに、
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