第33話 挑め、中間考査!! vol.5

 図書室での騒動の後――。


 正気にもどったその男子生徒から、俺たち転生徒会パーティーはことのあらましを聞いた。


 名をもんというそいつは3年生で、ついこの前、デーモン属性の転生徒になったばかりだという。


 スキルの《悪魔ひょう》で忘れ妖魔インプとやらを我が身にひょうさせていたところ、どうやらその悪魔が暴走しちまった、とまあそんなところらしい。

 本当は、その記憶を喰らう悪魔の力を使って、ある人の余分な記憶を喰ってテスト勉強をはかどらせてあげたかったんだと。


 で、そのある人というのがなんと、かいユーシヤだったわけだ。

 それもこれも、もとはといえばあのミスさかい・水着美少女コンテスト「いせコン」でユーシヤのファンになったのがきっかけだってんだから、いやはや……。


 もん自身も件の悪魔も、まさかそのかいユーシヤが振りかざす《聖剣》の聖属性エネルギーでおはらいならぬ悪魔祓いされることになろうとは、思いもよらなかったんだろうがな……。


 まあなんにせよ、これで俺たちの忘れたテスト勉強の記憶も、その悪魔に喰われちまったのだということが判明した。

 事情が事情なので、追試はぜひ免除してもらいたい!



        ♢



 ところでさらに数日後、もんは彼の固有アイテムだという《魔導書グリーモザ》なる分厚い書物を片手に、転生徒会室にやってきた。

 そして事件についてあらためて深くわび、最後にこう言ってすぐに姿を消したのである。


「こ、今回のことは、すべてぼ、僕の未熟さが招いたこと……。こ、この力をちゃんと使えるように、し、しばらく修行の旅に出るよ」


 かくして、もんは魔導書をたずさえ、見聞を広げ自分を見つめ直す放浪の旅に出たのである。

 え、あの人たしか3年生だよな? 旅とか出ちゃって、受験勉強とかそういうの大丈夫なんだろうか。


 ……はて、旅といえば。

 テスト対策期間からこっち、武者修行の旅に逃げ込んだままの武芸脳キン娘も1人いた気がするな。

 俺はいつぞやから長机に置かれたままになっているその書き置きに白い目を通した。


『前略


 真のいくさ乙女になるために、

 しばらく武者修行の旅に出ます。  草々』

 

 …………。

 あのアマゾネス属性のあますみれにも、第1学期中間考査が無事終了したことをそろそろ伝えてやらねばなるまい。

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