第30話 挑め、中間考査!! vol.3

「ッケケ! どういうことでケスか、この無ざんな試験結果は!」


 転生徒会室のホワイトボードに、採点の終わった中間考査の解答用紙がデデンと貼りだされている。


 かいユーシヤの数学の解答用紙。

 あん先輩の物理の解答用紙。

 俺、もうはじめの現国の解答用紙。


 何をどう間違ったのか、全員そろって、まあ見事に赤点である。


 ある意味で非常に壮観な眺めだが、ホワイトボードをたたくりん先生の顔色はすこぶる悪い。

 いや、鼻と耳と唇はもともと緑色だが。

 ああ、ゴブリン属性の転生徒、兼教師。


「3人とも、テスト対策の成果が1ミクロンも出ていないでケスよ! なんの冗談でケスか!」


「いやー、それがどういうわけか、いざ本番になると試験範囲の記憶がさっぱり思い出せなくてさ、アッハハ。さすがにボクの勇気をフルっても、どうにもならなかったというか……」


「うちもどういうわけか、お勉強したはずのことがさっぱり浮かんでこなかったんどす。お抹茶のことなら、だいじょうぶどしたけど……」


「俺もだ。何かこう、テスト対策期間中の新しい記憶がごっそり抜かれちまったみたいで……」


 かいユーシヤ、あん先輩、そして俺もうが一様にそう答えるのを聞いて、りん先生の丸眼鏡がいぶかしげにキラリと光った。


「……記憶が抜かれる? ッケケ、妙でケスね。実はかくいう私も、この期間中の記憶がまるで誰かに盗まれでもしたように微妙にあやふやというか……」


 そう。このテスト対策期間中の記憶を、俺たち転生徒会パーティーはなぜか全員が失っているらしかった。


 試験前日まで、りん先生の指導のもとでそれなりに勉強にはげんだというおぼろげな感覚だけは残っている。

 だが、詰め込んだはずの苦手科目に関する知識なんぞは、さっぱりだった。


 俺ひとりだけがそんな状態なら、単にド忘れってことで納得できなくもないだろう。

 しかしこの場にいる全員が同じように記憶を失っているとしたら――?

 何かわけのわからん事態が巻き起こっている可能性だってあるんじゃないか。

 つっても、じゃあ何が起こっているのかとなるとかいもく見当もつかんのだが……。



『きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』


 図書室のある第1校舎棟の方から一般生徒たちの大きな悲鳴が聞こえてきたのは、まさにそのときだった――。


「みんな、いっくよん! ボクについてきて!」


 迷いなく転生徒会室から駆け出していくかいユーシヤにひきいられ、俺たちは悲鳴のあがった図書室へと向かう。

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