第28話 挑め、中間考査!! vol.2

 テスト本番まで、土日をはさみ平日5日間。


 りん先生の指導のもと、俺たち転生徒会は放課後の活動をテスト対策にあてることにした。

 来たる中間考査で好成績をおさめ、転生徒に対する評判を改善するためである。


 アホな書き置きを残してしっそう中の武芸脳キン娘1名をのぞき、メンバー全員が苦手科目克服に懸命に取り組んで汗を流している。


 学業とはこれ、学生の本分。

 意欲に燃える転生徒たちから、挙手とともにりん先生へ次々と質問の声があがる。

 

 かいユーシヤからは、苦手な数学について。


「先生! この『場合の数』というのは、勇気がある場合ですか、それともない場合ですか! 場合によっては、ボクの解答が変わってきます! あと、聖剣の仕上がりも変わってきます!」


「勇気は1ミリも関係ないでケス! ッケケ、やり直し!」


 あん先輩からは、苦手な物理について。


「先生! うちのてたお抹茶の中に、あらたな『運動の法則』を発見しました! ノーベル物理学賞にはどこへ応募すればええのんどすか! 場合によっては、受賞の可能性も!」


「いったんお抹茶から離れるでケス! あと、100パーセント受賞はないでケス! ッケケ、やり直し!」 


 俺、もうからはこれまた苦手な現国について。


「先生! 『登場人物の心情』がさっぱり読みとれません! どうしたらいいですか!」


「さすが陰キャ属性、かける言葉もないでケス! ッケケ、やり直し!」


 と、まあ初日こそこんな感じだったものの……。

 水を得た魚のごときりん先生の熱血指導のかいあって、徐々にではあるがそれぞれが苦手科目の克服に近付いていった。


 とりわけかいユーシヤの成長ぶりは目覚ましいものがあり、2、3日もするとりん先生の用意した小テストで数Ⅰ・数Aともに高得点をたたき出しはじめた。

 いわゆる、まるでスポンジが水分を吸収するような勢いで、試験範囲の知識をスイスイとその脳みそに取り入れていったのである。

 おでこにはあいかわらず、ほの青い《勇》の紋章が浮かんでいるのだが。


 さすがは勇者属性というべきか、かいユーシヤには不思議とその場にいるみんなを引っぱっていく力のようなものがある。


 あん先輩と俺も、そんなユーシヤに後れを取らないよう必死。

 頑張りすぎて睡魔に襲われる場面も無きにしもあらずだったが、俺たち転生徒会はある種の手ごたえをもって、いよいよ第1学期中間考査へのぞむのだった。


 ――そう、この時点では誰ひとり、よもやあんな結果が待っていようとは知るよしもなかったのである!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る