第25話 亡者の天体観測
『では、続いて気象情報です。皆さんはこのゴールデンウイークをいかがお過ごしでしょうか? 大型連休最終日の明日未明には、日本でもみずがめ座
……ゴールデンウイーク最終日の夜明け前。
お天気キャスターの提案をすなおに採用したわが妹いやしに誘われ、俺はいま賃貸マンションの狭いベランダから未明の空を見上げている。
流れ星の到来を、寝ぼけまなこで待ちわびながら。
「まだかな~♪ まだかな~! まだかな~☆」
ツインテールをフリフリさせて、
すこぶるピュアな中1女子である。
「ずいぶん楽しそうだが、こんな時間から早起きして、いったい流れ星に何をお願いするんだい、いやしさんや」
「フフ~ン、それはね~。な・い・しょ! だぞよ、はじめさんや」
さいですか。
俺は何度目かのあくびをかみ殺し、ぽりぽりと腹をかく。
まあ何かは知らんが、兄として妹の願いの
……はて、願い、か。
「ん? どうしたぞよ、はじめさんや?」
「……いや、たいしたことではござらんがな。たしかこの前、
「ふうん……。お兄ちゃんも何か願ったわけ? 転生徒になったとき」
「まあそうだな。つっても、俺の場合はトラックに
「そのさえないエピソードによって、
「
「あ! わあ、流れ星!」
キラリと空を横切る流星に、いやしがいそいで願いをかける。
目をギュッと閉じ、その小さな両手を胸の前に組みあわせて。
かすかに動く唇が何をつぶやいたのか、俺には聞きとれなかった。
すっかり満足したようにまぶたをあけると、いやしはニコニコと室内へもどり、鼻歌まじりに朝食の
俺はボケっとベランダへたたずみ、残りの流れ星の来し方行く末をしばし見送る。
たぶん人の願いってのは、星の数と同じくらい、数かぎりなく存在するんだろうな。
なんとなくそんな考えが浮かんで、あくびとともにまたすぐに消えた――。
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