第21話 いせコン!! vol.1

「と! いうわけで、ボクら転生徒会は、あの『いせコン!』に出場することになりました! さあ、はりきってガンガンいっくよん!」


 転生徒会室に響きわたるかいユーシヤのゆうかんぼうな宣言に、俺は我が耳を疑ってあ然とした。

 おい頼むからわかるように説明してくれ……。


「知らないのかい、もう? よし、ボクが教えてあげよう。いせコンといえば、ミスさかい・水着美少女コンテストのことさ!」

「いやそれは知っとるけども!」

「……えっ⁉ 知っているだと⁉ それはそれでキモい。さすがは陰キャ属性」

「誰が陰キャだ! 亡者だ、モウジャ! ええい、話が進まん!」


 不毛なやりとりをくり広げるユーシヤと俺のあいだに、顧問のりん先生が割って入った。

「まあ落ち着くでケス、2人とも。……今回はちょっと事情があるでケスよ、もう


 がねのブリッジを押しあげる、りん先生いわく。


 地域おこしの一大イベントでもあるいせコンには、地元校たるかいがくえんからも毎年数名の女子生徒が出場者として参加するのが通例であるらしい。

 今年も年明けからすでに、学園代表の出場予定者が何人か選ばれていたのだが……。


「ッケケ。コンテストで行われる一芸審査に備えて、出場予定の女子生徒たちが新学期前にやまとなでしこらしい礼儀作法でも身につけておこうと考えたようなのでケス。それで、手はじめにお茶のけいでもということになり……」


 いせコン出場予定だったその女子生徒たちは、日本伝統の奥ゆかしいしょを身につけるべく、当時まだ存続していた茶道部へ体験入部し、そして――。


 たったひとりのレギュラー部員である魔王属性の転生徒・あんから、お抹茶という名の暗黒物質ダークマターをごそうされてみんな仲良く帰らぬ人となった。

 いや、かろうじて命は無事だったようだが、いろんな意味で再起不能らしい。

 あの魔界のすべてをちゃわんにぶち込んで泡立てたかのような謎のしろものを口にしたのであれば、たしかにそれも無理からぬことだろう。


 この件の責任を取って、無念の女子生徒たちのかわりに「いせコン」出場者枠の穴埋めをするべきはいったい誰か。


 むろん、それは転生徒がらみで起こるトラブルへのすみやかな対応を責務とされている我われ転生徒会にほかならぬのであった。

 あのこわもてのふうぞう学園長からも、この度いせコンへの代理出場命令が正式に転生徒会へ通達されたものらしい。


「……わかった、引きうけよう……」


 俺は転生徒会の一員として、じくたる思いでその命令を聞き入れた。


 ……いやな予感しかしねえ。

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