第20話 亡者の食卓~その4
昔から、日本人の朝食に納豆はかかせない。
シンプルに納豆がけご飯というのもむろんいいが、この現代を生きる我ら
玄関先で早朝出勤の母親を見送ったところで、狭いダイニングからオーブントースターが「チーン!」と小気味よい音をたてた。
「お兄ちゃん、焼けたぞよ」
「いまいくぞよ、いやし」
爽やかな朝の食卓に、妹の
こんがり焼けたトーストの上には、ほかほかトローリな納豆とスライスチーズ。
これぞ定番、納豆トースト。
「「いただきますぞよ」」
兄妹ふたり水入らずの小さなテーブルで、熱々の美味しさにかぶりつく。
ザクザクのトーストと、とろとろな納豆&スライスチーズのえもいわれぬハーモニー。
鼻に抜けていくこうばしいかおり。
モグモグと至福をかみしめていると、リビングでは母親が消し忘れたままのテレビが朝の地方ニュースを報じはじめた。
女子アナウンサーの声に、夏を待ちきれない感じのそこはかとなくトロピカルなBGMがあわさる。
『さて続いては、イベントのお知らせです。
「こふぉひふぉひゃふんはへひひぇふぉん?」
「いやし、ちゃんと口の中のものを飲み込んでから話しなさい」
「今年もやるんだね、いせコン。わあ、グランプリ副賞は賞金30万円だって。いやしも出ようかな」
テレビを見ながら、短いツインテールをピョンピョン揺らしていやしがはしゃぐ。
好奇心
「断じて許さんぞ、いやしさんや。もしもお前がグランプリに選ばれてアイドルにでもまつりあげられようもんなら、お兄ちゃんは専属マネージャーとして一瞬たりともそのそばを離れないからな。近付いてくる男はすべて冥界へ送ってやる」
「あはは……、兄の愛が激重いぞよ、はじめさんや。でも、たのしそうなイベントだね~♪」
フン、何がミス
何が、いせコンだ。
可愛いわが妹の教育に、多大なる悪影響をおよぼしかねん。
不適切なコンテンツとして、今度しかるべき機関へ投書しておこう。
いや、投書とかしたことないけど。
俺はリモコンを手に取ると、最大限の抵抗の意思を表明すべく、断固たる思いでテレビの画面を消してやった。
そう、この時、俺はまだ知らなかったのだ。
人生にはフラグというものがあることを……。
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